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読書感想 世界で最初に飢えるのは日本 鈴木宣弘

 「飽食」という虚構世界に生きる日本人へ。

 いま、世界中でかつてない規模の食糧危機が迫っている。
 WEP(国連世界食糧計画)とFAO(国連食糧農業機関)は2022年6月に「ハンガーホットスポット~急性食料不安に対する早期警告」という報告書を発表した。新型コロナウイルスの蔓延とウクライナ戦争の影響により、世界20カ国で深刻な飢餓が発生すると警告したのだ。
 その中でも日本は深刻な脅威に直面している。
 日本のカロリーベースの食糧自給率は2020年時点で約37パーセントという数字になっている。しかし37パーセントという数字は実は楽観的な数字に過ぎない。農産物の中でも種やヒナなどもほぼ輸入に頼っている。それらを計算に入れた「真の食糧自給率」を割り出すともっと低くなる。筆者である鈴木氏が農林水産省が公開しているデータに基づいて計算したところ、2035年の「実質的な食糧自給率」は米11パーセント、野菜4パーセント程度まで落ち込むとみている。

2017年食糧自給率
食糧自給率の推移 1965~2018年

 2020年に始まったコロナショックは世界中の物流に影響を与えた。食料の輸出入自体への影響も大きかったが、食料を生産するための生産資本も日本に入ってこなくなった。生産資材とは農機具、肥料、種、ヒナ、そして人手だ。
 日本では野菜の種を9割輸入に頼っている。野菜自体の自給率は80パーセントだが、種が輸入したものに過ぎないから、真の自給率は8パーセントということになってしまう。しかもコロナショックにより、この種すら輸入がストップしてしまった。
 コロナショックの問題は他にもある。日本の畜産はエサも海外に依存している。例えば鶏の卵は96パーセント自給できているが、鶏のエサであるトウモロコシの自給率はほぼゼロ。さらに鶏のヒナは100パーセント輸入。
 さらに最近は中国の爆買いもあり、世界中で価格が上昇。日本が買い負けするケースが起きている。

 と、こんな感じに日本の食料の多くは海外に依存してどうにか維持している……というのが実体だ。日本国内で生産できているものもたくさんあるのだが、農産物の種、鶏のヒナがほとんど輸入。さらに肥料や飼料も輸入という状態になっている。
 もしもさらなる異常気象や戦争の勃発によって世界の物流が混乱したり、停止したらどうなるか? それが現実に起きている。日本の食を維持するために、日本人はより高い金を出して食料品を海外から買っているわけだが、そうすると食料品の値段が上がる。食料品の値段が上がると消費者が買わなくなり、利益率が悪くなる……ということになる。
 世の中的にはインフレで賃金が上がり、それを根拠に景気がよくなった……と言われているが、実は見えていないところでダメージが蓄積されている。見えていないところで貧しさが深くなっていき、危機が深刻になっている。

 2022年のウクライナーロシア戦争は食料を巡る危機を深刻化させた。
 ウクライナとロシアといえば小麦の一大生産地域で、世界の小麦輸出の約3割はこの地域から出ている。欧米がロシアに対し制裁を強めるが、一方でロシアは「小麦の輸出規制」を武器に抵抗している。
 ウクライナは戦争の影響で四月の種まきができず、港も封鎖されてる。小麦を育てることができず、育てられたところで輸送も困難な状態に陥っている。
 さらにウクライナには「シードバンク」もあった。シードバンクとは植物などの種子の遺伝子情報を保存する施設である。ウクライナのシードバンクは世界最大のもので、16万種の種が保存されていた。これがロシアによって爆撃されてしまった。
 もしも環境が変わってしまったときに、本来の遺伝子を持つ種は非常に重要となる。それが永久に喪われてしまった。これからの未来、なにかしらの食糧危機を迎えたとき、私たちは対応できない……私たちはそんな危機にも直面している。

 中国による爆買いの影響も出ている。
 最近の中国は自国内の人口増加に対応するために、食料品の買い占めを始めている。現在の中国は経済成長を遂げ、牛肉食などの多様な食文化を享受するようになった。そのために食料輸入が爆発的に増加。ここでも中国の爆買いが起きている。
 中国は大豆を約1億トン輸入しているが、日本の大豆輸入量は300万トン。それでも日本人が消費する94パーセントだ。中国の輸入量が圧倒的だとわかる。輸出する側としては中国が上客だから、そのうち日本に売ってくれなくなるかも知れない。日本は円安の影響もあり、買う力がどんどん乏しくなっていく。日本が下客扱いされていくのは、世界の潮流になっていくだろう。
 ついでに「コンテナ問題」も絡んでくる。日本の港は現代の大型コンテナ船が入ってこられるようにできていない。その一方、中国の港は時代に合わせて改良しており、大型コンテナ船が入れるようになっている。日本に輸出しよう……というとき、いったん中国まで大型船で運び、それから小型船に移して……という手間が発生してしまう。この手間のせいでよけいにお金がかかる。輸出する側が日本を敬遠する理由になっていく。

 現代はまだ日本に食料品が入ってきている。物流が完全にストップしたわけではない。
 しかしもしも物流が本当にストップしたらどうなるか。それをシミュレーションしてみよう。
 まず主食が米ではなくイモに変わる。朝食はジャガイモ、昼食は蒸かしイモ、夕食は薩摩芋。米は副食の扱いになる。味噌汁はメニューから消える。
 うどんは2日1回。納豆は3日に1回。牛乳は6日に1回。卵は7日に1回しか食べられない……という状態になる。
 もしもの話ではない。それぞれの国で食糧危機が起きた場合、どの国も当たり前だが自国優先となり、食料を輸出しなくなる。その上に、疫病の拡大やどこかで戦争が起きたら、ますます物流が停滞し、輸入できたとしても高額になっていく。そうすると食料を海外に頼っている日本は飢えることになる。どれも「あり得ない話」ではない。可能性としてあり得る話だ。
 米国ラトガース大学の研究者が局地的な核戦争が勃発してしまった場合、世界の餓死者は日本に集中する……という見解を発表した。もしも核戦争が起きて物流が完全に停まった場合、世界全体で2.55億人の餓死者が出るが、そのうちの7200万人が日本人であると推定した。核攻撃の直接の被害に遭わなくても、日本人は食糧問題で死んでいくのだ。

 日本には「食料安全保障」の概念が存在しない。2022年1月岸田文雄総理大臣の施政方針演説の中で、「経済安全保障」という言葉が語られた。しかし「食料安全保障」や「食糧自給」といった言及はなかった。政府は危機を認識していないのだ。
 それどころか、政府は「食糧問題」を根本から理解できていない可能性もある。その1例を見てみよう。

2022年。牛乳を廃棄する報道映像より。

 2015年。酪農家に対し、「畜産クラスター事業」と呼ばれる機械設備を導入すると補助金が出る……という仕組みが作られた。機械設備を増強し、収益性向上の取り組みをしたら補助金が出る、というわけである。
 ところが2022年、コロナウィルスの蔓延により牛乳あまりが起きてしまい、今度は「牛乳を搾るな」というお達しが出た。政府は同時に「廃棄しなくて済むようにもっと牛乳を飲もう」というキャンペーンを打ち出した。が、だからといって牛乳を廃棄する酪農家に対し、補償金は支払わない。それどころか、相変わらず畜産クラスター事業への補助金は続けている。
 政府は牛乳を増産させたいのか減産させたいのか、どっちなのかわからない。
 それどころか日本政府はこういう状況なのに、アメリカから前年と同じ量の脱脂粉乳を購入していた。日本で牛乳あまりが起きているから、アメリカから牛乳は買わない……という柔軟な対処はしないのだ。
 アメリカではコロナショックによる農家の所得減に対し、総額3.3兆円もの直接給付を行った。さらに3300億円を支出し、農家から余剰在庫を買い上げて、それを困窮世帯に配布した。
 そもそもこういった仕組みはコロナウィルス蔓延以前からあった。アメリカだけではなく、カナダ、EU諸国ではあらかじめ設定された最低価格で政府が農家から穀物・乳製品を買い上げ、国内外の人道支援に回す仕組みがあった。
 日本だけが何もしていないのだ。日本は世界で最も「自己責任」の国だからだ。

 いま世界では、国境を越えて活動する多国籍企業の存在が大きくなっている。多国籍企業が標的にするのが日本だ。
 日本の全農(全国農業協同組合連合会)はアメリカから遺伝子組み換えではない穀物を分別して日本に輸入している。それは多国籍企業、とくに遺伝子組み換え作物を手掛けるいわゆる「穀物メジャー」からすると目障りだった。
 全農はアメリカのニューオリンズに全農グレインという子会社を所有していた。穀物メジャーは全農を乗っ取ってやろう、と買収を計画。しかし全農は株式会社ではなく協同組合だったために買収はできなかった。それならば、と穀物メジャーはアメリカ政府に圧力を掛けた。
 アメリカ政府は日米合同委員会という、本来は軍事関係の命令を通達する場で、日本政府に対し「全農を株式会社化しろ」と要求してきた。さらにメディアを動員して、全農批判を展開させた。これで「全農は既得権益だから、解体して株式会社にすべき」という世論が形成されていった。
 実はアメリカは同じ手口をオーストラリアでもやっていた。オーストラリアへの小麦の輸出はもともと「ボード」という協同組合的な組織が担っていた。多国籍企業はさまざまなウソ情報を流し、このボードを悪者にでっち上げた。この情報操作にはCIAも一枚噛んでいたとされている。
 そしてボードはとうとう株式会社化し、アメリカの穀物メジャーであるカーギルが買収。オーストラリアのボードはアメリカに乗っ取られたわけである。

 日本の農政がダメにしている、もう一つの犯人が財務省だ。
 財務省はずっと「亡国の財政政策」を掲げ、いかに予算を削るか……ということしか考えていない。もしも日本の農家が危機に陥ったときに、補助金を出す……ということも考えない。考えたとしてもその案を却下しているのが財務省だ。
 なぜ日本の政界では経産省と財務省の主張ばかり通り、農業政策が後回しにされるのか?
 かつては自民党のなかにも「農水族」と大手町の「全中」(全国農業協同組合中央会)そして農林水産省の3省で農業政策を決めていた。かつては自民党の農水族が一大勢力を形成しており、党全体としても農業を重視していた。そのおかげで財務省が農水予算を削ろうとしても一定の歯止めがかかっていた。
 しかし中選挙区から小選挙区への移行を切っ掛けに、自民党の農水族が縮小、農地を持たない選挙区、農業割合の低い選挙区が増え、政治家にとって農業が重要問題ではなくなってしまった。その結果、農政全体に歪みが生じていくことになる。

 次に「食の安全性」という問題を見ていこう。
 農産物に使える農薬の種類や量については、国際的な基準が設けられている。これを「コーデックス基準」という。このコーデックス基準はWHOとFAOが合同食品規格委員会(コーデックス委員会)が作成し、各国に勧告している。外国の農産物は原則として、この基準を守っていれば日本に輸出できるようになっている。
 しかしこのコーデックス基準が信頼に足るものかどうかが怪しい。「ラクトパミン」という牛や豚のエサに混ぜる成長促進剤の安全基準を決める際、コーデックス委員会が紛糾したことがある。結局、投票に持ち込まれたが、そこでアメリカの企業がロビー活動を展開し、ラクトパミンは「安全である」ということになった。が、これにEUは猛反発し、EUではラクトパミンの使用が禁止になった。
 ラクトパミンは日本でも禁止であるが、サンプル検査をして安全基準を下回っていれば輸入可能ということになっている。ただし、この検査がずさんで、サンプルを取り、安全が確認されるまで待機……ではなく、その間に通関させて市場に出回るという仕組みになっている。
 例えばアメリカから輸入している赤身牛肉の中から通常の600倍濃度のエストロゲンが検出されたということがあった。牛を早く成長させるために成長ホルモンが使われたのだ。エストロゲンは乳がんの増殖因子になるために、日本でも諸外国でも禁止されている。しかしそのエストロゲンをたっぷり含んだ牛肉が、日本国内では普通に流通していた。
 EUは食品の製造・流通に厳しい安全基準を設けている。アメリカは企業が政府に対し頻繁にロビー活動をするから、危険な食品も安全ということになって平気で市場に出回ることがある(中にはまったくオーガニックではないのに、オーガニックということにして店に出ているものもある)。しかしアメリカでは市民がそういう危険な食品が出回っていることを察知して、抗議運動をしたり不買運動をしたり、ということが起きている。
 ならばその売れ残りを売りつける格好の市場が日本だ、ということになる。まず日本は政府がアメリカの言いなりなので、危険な食品でも政府を通して一声かければ簡単に市場に出回る。マスコミなどのメディアもいいなりなので、そういう「危険な食品」について一切報道しない。日本人の大半は世界で起きている食糧問題を知らないし、そういう食品が日本に売りつけられていることも知らない。世界にとって「いいカモ」なのだ。
 例えばアメリカの農家では収穫後の防カビ剤散布は禁止にされている。しかし実際のアメリカの農家へ行くと、禁止されている防カビ剤がたっぷり農産物に噴霧されている。どういうことかと聞くと「これは日本へ輸出するぶんだからいいのだ」という答えだった。そういう状況なのである。

 日本の食糧自給率は37パーセントしかない。なぜなら日本は“小さな”島国で、農地にできる面積が限られている。これは仕方ないのだ。
 ……という考えが多くの日本人に行き渡っていることだろう。これはウソだ。
 そもそも食糧自給率が下がった最大の要因は貿易自由化と食生活改変政策である。自動車などの関税撤廃を勝ち取るために、農産物の関税引き下げと、輸入枠の設定を日本政府は強要されてきた。アメリカやヨーロッパは輸出のために補助金をジャブジャブ出して、ダンピングも仕掛けてきたから、これで日本の農業は壊滅的な打撃を受けてきた。
 食生活改変政策とは第2時世界大戦後の話だ。米国は日本人の食生活を変えさせた。それは米国の農産物の一大消費地にするためだった。そのために、様々な宣伝工作もやった。1958年に出版された林髞の『頭脳ー才能を引き出す処方箋』というものがあった。いわゆる「米を食うとバカになる」という主張が最初に載った本だ。もちろん科学的根拠の一切ないデタラメ本である。
 『頭脳ー才能を引き出す処方箋』は3年で50刷りを超える大ベストセラーとなった。この流れにマスコミも乗り、朝日新聞をはじめとする新聞のコラムに「米食否定論」が何度も掲載されるようになった。「米食をやめてパン食に切り替えると頭脳明晰な人間が育つ」……そういう主張が繰り返された。だがこれは単に米国が小麦の生産が過剰になっていて、それを解消させるための買い手市場を開拓するためにやっていた政策に過ぎなかった。日本人はそんなことを知らず(もしかすると今も知らず)、食文化を破壊され、現在も回復不能状態に陥っている。

 シカゴ大学で教鞭を執り、「社会的共通資本」を提唱した宇沢弘文は、アメリカの友人からこんな話を聞いたと述懐する。
 米国の日本占領政策の2本柱は、
①米国車を買わせる
②日本農業を米国農業と競争不能にして、余剰農産物を買わせる

 というものだったそうだ。
 1973年、当時の農務長官アール・ラウアー・バッツはこう語る。
「日本を脅迫するのなら、食料輸出を止めればいい」
 またこうも語っていた。
「食料は武器であり、標的は日本だ。直接食べる食料だけでなく、日本の畜産のエサ穀物を、アメリカが全部供給するように仕向ければ、アメリカは日本を完全にコントロールできる。これがうまくいけば、同じことを世界中に広げるのがアメリカの食料戦略となる」

 そう、今も日本は、アメリカの「植民地」なのである。

本の感想


 本書の紹介はここまで。ちょっと前に『ルポ・食が壊れる』という本を紹介して、そこで日本の食料安全保障、ヤバいよ……という話をしたけど、もう少し突っ込んでみよう……ということで鈴木宣弘さんの著書を紹介。
 鈴木宣弘さんはもともと農林水産省所属の官僚だった。その後、学会入りして現在は東京大学大学院農学生命科学研究科教授。「食料安全保障推進財団」理事長を務める。
 農林水産省に勤めていた頃、というのはもうかなり前の話になるが、現在でも日本の食糧問題をもっとも深く知る人である。その鈴木宣弘は日本の食料問題はかなり深刻だ……と語る。しかし日本人のほとんどが自国の食糧危機について知らないし、関心すらない。それが問題だという。

 最近の話になるが、テレビやネットニュースで「3Dプリンタで作れる人工肉」というものが紹介されていた。3Dプリンタで自由自在な形に肉を生成できて、しかもそれは大豆由来だから栄養面でも安心だ……という。
 私はそのニュースを見かけて、「うわぁ……」とドン引きだった。その人工肉を生成するために使っている「大豆」が問題なのだ。
 人工肉を生成するためには大量の大豆が必要で、その大豆は遺伝子組み換え作物で作られる。どのように遺伝子操作されているかというと、グリホサートのような強力な農薬を撒いた中でも育つ……ように作られている。グリホサートといったら最近はビッグモーターが街路樹を枯らすために使われた……ということで知られるようになった。私はこのニュースを見て、グリホサートが樹木すらも枯らせる……ということを知ってビックリした。そんなものを作物の周囲にまき、しかも収穫後の食品の中にもたっぷり残っている。

グリホサートで街路樹を枯らすビッグモーター社員

 海外の医師は人工肉は絶対食べるべきではない、と明言している。人工肉にはサプリなどが入っていて、大豆由来だからコレステロールの心配もない……と語られるが、問題はそこではなく、農薬が残留していること。しかもそれは、ラットに与えると死亡するか、子供に異常行動が出る、というくらいに残っている。
 しかし「3Dプリンタで人工肉が作れる」というニュースの中にはそんな問題は一切語られない。マスコミはここでも「報道しない自由」を発動させている(マスコミも知らないだけ、という可能性もあるが)。おそらくは上から与えられた情報だけで、脳天気にニュースを作っているのだろう。

 どうして私たちは自国の食糧問題について、詳しく知らないのだろうか。どうして深く関心を持とうとしないのだろうか。私はその理由を、第1に「政治問題」、第2に「虚構問題」と考えた。

 第1の政治問題
 日本はやはり、今でもアメリカの「植民地」である。ただし昔の植民地のように、「支配国のために食料を生産する」のではなく、「支配国の余剰食糧を買う」という形式の植民地となっている。
 普段は「前例重視・慣例重視」で「何も変わらないこと」を是とする官僚達であるが、アメリカ政府に「こうしろ」と言われたら、「承知しました!」と凄まじい勢いで仕事をする。政治家たちに「ご説明」をしに行き、煩雑な書類もあっという間に用意する(その有能さを有意義なタイミングで使ってほしいものだ)。それだけではない。マスコミ各社にも「ご説明」に行き、制度変更しても問題ない、問題にする奴の方がおかしい……という世論形成までやってくれる。普段は「何もしない理由・したくない理由」を100も1000も語る官僚達だが、アメリカ政府に言われたときだけ張り切ってその豪腕を振るう。官僚達こそ、アメリカ政府にとって都合の良い“ポチ”なのである。
 そんなこんなで、ヨーロッパで禁止にされ、アメリカではロビー活動の成果で認可はされているものの問題が明るみに出てしまったことによって売れなくなった食品の多くは日本に回される仕組みができあがった。大量の禁止農薬やホルモン剤を投入した食品。遺伝子操作作物や食肉。そういうものが日本に入ってきている。
 1970年、アメリカから輸入されている柑橘類にオルトフェニルフェノールやチアベンダゾールといった防カビ剤が検出された。これらは膀胱ガンや腎障ガンを引き起こす可能性のある物質である。日本はこの問題が出てきたとき、アメリカ産柑橘類を投棄した。
 するとアメリカ政府は激怒し、日本に自動車輸入の制限をすると脅した。日本政府は慌てて「防カビ剤は食品添加物である」という見解を示し、輸入OKとしてしまった。
 遺伝子操作された食品にしても、「ゲノム編集食品は品種改良と同じ」という見解で日本に入ってきている。欧米ではあまりにも危険すぎて食べるべきではない……とされた食品であっても、日本は制度を変更してでも輸入しているのだ。
 最近は急に「昆虫食」のブームがマスコミを中心に起きたが、おそらくこちらも同じである。欧米ではあまりにも危険だから認可が下りない、誰も手を出さない、そうやって市場形成に失敗した食品が日本にやってきている。なにしろ日本は世界で起きている食糧問題を知らず、あの悪名高い「モンサン社」すらほとんど誰も知らない。国民のほとんどが食糧問題に関し、無知と無関心であるから、売りつけるのに格好のカモなのだ。
 ついでにいうと日本は「実験場」にすらされている。遺伝子操作された食品を長年にわたって食べ続けるとどんな問題が生じるか。子供にどんな影響が出るか……これらを日本を使って実験している。
 例えばグリホサートをラットに投与した実験では2世代目、3世代目になると異常行動を示すようになっていく。落ち着きがないし、意味もなく暴力的になったりするという。人間でも同じ症状は出るか……これを日本人を使って実験されている最中である。というか、最近の日本人が短絡的で自分の情緒に振り回されて行動するようになったのは、ひょっとすると長年おかしなものを食べ続けたせいではないか……と勘ぐってしまう。

 最初の話に戻るが、日本は今もアメリカの植民地だ。昔の植民地は支配国のために食料を生産する国のことであるが、現代の植民地は、支配国の余剰食糧を買う国のことである。そのために、植民地である日本は食習慣をアメリカ風に変えてしまった。
 この形態の植民地の怖さは、「気がつかないこと」である。自分たちが植民地的対応をされていることに気付かない。一見すると、食べ物が豊富にあるから、「食料危機」に気付かない。「食糧危機」状態にあるのに、目の前には「飽食」という状況があるから、その状態が危機であることが認識できない。それが怖い。

 どうして私たちが自国の食糧問題に気付かないのか、その2「虚構問題」である。“食糧問題に気付かない”ことが私たちが抱えている問題である。なぜ気付かないのか、それは「飽食」という「虚構」があるから。
 日本には豊富な食料がある。毎日食べきれない食品を大量に捨てている。こんなに食料が一杯あるのに、「食糧危機」なんて言われてもピンと来ない。なにかの間違いではないか……とすら思ってしまう。
 それどころか毎日新しい食べ物がいろんなところで開発されている。毎日のようにどこの食品がうまいか、とか、どこの食品がオシャレだとか、どこの店がバズったかとか、最近の日本人はそういう話題しかしなくなってしまった。
 こんな情勢下で食糧危機? 食糧自給率が37%しかない? 何か間違っているような気すらしてしまう。それどころか、「現状、食べられているのだから別にいいじゃん」という気すらしてしまう。

そう思わされているのが、私たちが抱えている「虚構問題」。目の前に「飽食」という「虚構」があるから、自分たちが直面している危機に気付かない。わからない。考えることすらできない。
 考えようとしても、官僚達が作った「目くらまし」に騙されてしまう現状が起きている。
 例えば元2ちゃんねるの管理人で知られる西村博之はこう語った。
「「日本の食糧自給率を上げたい」と言っている人は頭の弱い人か利権絡みしか見たことがないので、理由を聞くようにしています。世の中には、おいらより頭のいい人が大勢いるはずなので、食糧自給率を上げたほうがいいというのを論理的に説明できる人が居たら教えてください」
 ならば言おう。ひろゆきよ、お前はバカだ。あんたは騙されているんだよ。
 私たちはすでに様々な宣伝工作を受けている。かつての「米を食うとバカになる」と洋食文化が広がったのもそれだし、そういう工作はその後も何度も仕掛けてきている。
 例えばすでに話したように、全農(全国農業協同組合連合会)に対するバッシングもアメリカが自国の遺伝子操作作物を売りつけたいがために全農を解体させてやろう、日本人自身に「全農解体やむなし」の世論を形成するために仕掛けられたものである。
(というか、急にテレビ・新聞メディアを中心に「○○は既得権益! 解体させるべきだ!」という論調が出てきたら、裏に何かあると怪しんだ方がいい)
 アメリカはすでにオーストラリアに対し同じ手法を使っており、これでオーストラリアには「ボード」という協同組合のようなものがあったが、株式会社化し、その後アメリカに買収され、以降はアメリカの農産物が入り放題という状態になった。

 農業関連で世間的に言われがちな話の多くはウソである。
 例えば、「日本の農業は世界的に過保護である」「日本の農業は高関税で守られた閉鎖市場だ」「日本は世界から遅れた農業保護国であり、政府が農産物価格を決めて買い取っている」
 ……ぜ~んぶウソアメリカが自国の農産物を売りつけやすいようにするために作ったウソである。
 こうやってウソを広め、日本人同士でバッシングさせ、「農政は変わるべきだ」「欧米に合わせて変わるべきだ!」という世論形成させる。それで、気付けば欧米の多国籍企業に乗っ取られる。気付いた時にはすでに遅し……というやつだ。
(2022年の牛乳あまりの件を見てもわかるだろう。海外では牛乳あまりが起きたら政府が買い上げて、貧困層に配布するという仕組みが作られている。日本では廃棄させ、補償金も出てない。どこが「過保護」か? 実は「自己責任」の国だ)
 こういう話をすると、「利権絡みだ」という批判が来るだろう。そう、こういう話に対する非難で「利権だ」という思考ルーチンそのものがすでに洗脳。
 ひろゆきよ、お前も騙されているんだ。ひろゆきのような人間が欧米に都合のいい考えを広げて世論形成することで、欧米にとって都合のいい制度が作られていく(こういう話をすると、伝家の宝刀「それ、あなたの感想ですね」が出るんだろうけど)。

 「食べ物はお金を出せばいくらでも買える」と日本人の多くは思っている。お金さえあればなんでもできる……という感覚が大多数の人にある。しかし世界的なインフレで価格が高くなり、買えなくなってしまう……という現象がいま起きている。いつまでも貴族感覚で、「お金さえあれば」と言っていられなくなってきている。というか私たちはそもそも貴族ではない……ということに気付かねばならない。
 それに、世界的に食糧危機が起きたら、お金を出しても売ってもらえなくなる。そういう懸念も頭のどこかに置いておいたほうがいい。だから食料だけではなく、なんでも自前で生産できる余力は持っておいたほうがいい。
 そういう感覚もなく、「お金さえ出せばいくらでも買える」という考え方は虚構のなかにいる状態だ。夢を見ているならそろそろ醒めた方がいい。

 欧米はしたたかだし冷酷だ。いま日本では肥料も飼料も海外から買う……という状態になっている。それが当たり前だと誰もが思っている。しかしそれは欧米がそういう社会を作ったからだ。
 例えばトウモロコシ。牛や豚や鶏の飼料としてトウモロコシが使われているが、これらは100%アメリカ産。こういう状態を作るために、アメリカでは大量のトウモロコシを生産している。農家を犠牲にして、トウモロコシをタダ同然の値段で手に入る仕組みを作っている。どうしてそうなったのかは、過去のブログ記事にも書いたので、そちらを参照してほしい。なぜアメリカはあそこまで無理してトウモロコシを作るのだろうか……こうやって海外に売りつけるためだった……ということが見えてくる。すべて戦略だった。
 欧米は常に自分たちが有利になるルールでしかゲームをしない。もしも自分たち以外に強い国が出てきたら、ルール変更を迫ってくる。欧米はそういう人達だということを理解した方がいい。食糧問題に関してもそうで、自分たちが優位になるルールを作った上でしか交易しない。

アール・ラウアー・バッツ 1971年から76年まで米国農務長官を務めた。

 目の前に「飽食」という幻惑があるから「食糧問題」に気付かない。私たちは虚構の中に生きている。
 どうしてこうなったのか、というとアメリカの陰謀というやつだ。アール・ラウアー・バッツは「食料は武器だ」と語っていたが、これが全てだ。私たちは食糧問題を抱えているから、アメリカから要求してくる無理に答えなくてはならない。すると食糧問題はどんどん深刻になっていく。するとどんどんアメリカの指示に抵抗できない……という状況が生まれてくる(もちろん食料についてだけではなく、様々なものがアメリカの一声で制度まで変えるという状況になっている)。なにしろ日本人全員の食の問題を握られているわけだから。
 食糧自給率を上げれば、アメリカからの支配から脱却できることは間違いないが、しかしそうするとひろゆきのような“扇動家”が「頭の弱い人か利権絡みしか見たことがない」と発言し、そういう考えを封じようとする。利権云々の話ではなく、国家としての自立のために、食糧自給率が大事……という考えに至らないし、至らせないようにしている。
 アメリカに逆らえば食の輸入がストップされる。するとただちに日本人全体が飢える。しかし日本人の多くは日本政府の上にアメリカがいるなんて知らないから、問題が起きたら叩くのは日本……ということになっている。
 例えば2022年、牛乳あまりの状態になり、牛乳が廃棄される……という状況下でありながら、アメリカから牛乳を例年通り買っていた。普通の政府だったら、アメリカから買うのをやめて、自国の牛乳の処理に回すことだろう。それができないのが我が国日本だ。

 だがまったく抵抗してこなかった……というわけではない。
 2017年。アメリカのシンプロット社が新しく遺伝子組み換えジャガイモを開発し、これが承認された。このジャガイモは米国マクドナルドに卸されたが、しかし米国で遺伝子組み換えジャガイモに対する問題が起き、マクドナルド社は急遽この遺伝子組み換えジャガイモを使わない、と発表した。
 すると卸先は日本だ。アメリカで「NO」を突き付けられた遺伝子組み換えジャガイモは日本に渡り、日本のマクドナルドのフライドポテトやポテトチップスになる予定だった。2021年4月、日米貿易協定に基づき、遺伝子組み換えジャガイモは堂々と日本の市場へ入ってきた。
 だが意外なことが起きた。このジャガイモに対し、日本人も「NO」と宣言したのだ。
 とある農水省OBは「歴代の植物貿易課長がジャガイモ問題で頑張ったせいで左遷されてきたのを見てきた」と語る。官僚の世界では、アメリカに逆らうと飛ばされるのだ。それを承知の上でNOを突き付け、こういった一件では珍しい勝利を獲得した。そういう事例もあるわけだ。
 独立国というのはこれが当たり前のようにできることである。

 こんな話をしたけれども、じゃあ個人でできることが何かあるだろうか? 国家は何もやってくれない。店に置かれている商品も安全かどうかわからない。個人でできる自己防衛があるとしたら「畑」を持つことだろうか。
 とはいっても、一人で畑を持ったところで意味がない。一人で畑を所有したところで、毎日の畑仕事に追われるし、収穫があっても一人では食べきれないし、一人きりの畑仕事で作れるモノなんてたかが知れているから、栄養が偏る。
 だいぶ前だが、私は「10人くらいで集まって一つの家に住む」という考えを発表した。なぜ10人くらいなのか、というと個人でバラバラで住むより、ある程度固まって、なにか問題が起きたときに対処できるようにしておいたほうがいい。ただし10人以上になるとまとまりが持てなくなる。「なぜ10人くらいなのか」というところに根拠はないが、10人くらいが限度じゃないか……という勘のようなものである。
 この10人くらいのメンバーは、趣味や仕事で仲良くなった人とのみ集まった方がいい。よくあるシェアハウスのように不特定多数の他人から募集するというやり方は、うまく行く場合とうまく行かない場合が起きてしまう。もともと仲良しメンバーで集まった方がいい。
 そういう10人くらいで住む家を5棟くらい固まって建てることができたら、住人50人くらいの村になる。これくらいの人数感だったら、この50人で畑を所有し、作物を育てることに意味が出てくる。
 個人だったら持っていてしょうがないものでも、多人数になると意義が出てくるものがある。例えば私個人的にはサウナには興味はないが、50人くらいで住んで、そのうちの10人くらいがサウナに興味があるなら、屋敷の中に作ることに意義が出てくる。一人だったら飽きたらそれでおしまいだが、50人もいれば誰かしらが常に使い続けるだろう。
 畑を所有するということも、50人くらいになれば意味が出てくる。畑を世話をする手間、そこから得られる収穫物のバリエーション、収穫量……そういうものがちょうど良くなるのは50人以上からだろう。
 といっても、この話も根拠があるわけでもなく、「たぶん50人くらいいれば大丈夫だろう」という話だが。
 なんにしても、友人知人0人の私には、どうにもならない話だが。
 もしも「私は友人が多い」「一緒に暮らしていてもストレスにならない友人がいる」という人は試してみたらどうだろうか。
 その次にくる問題は、畑仕事のノウハウをどうやって手に入れるか、ということと、「種」をどうやって手に入れるか。いま、お店に行って農作物の種を買おうとしたら、遺伝子操作された「F1」の種しか手に入らないという。F1の種は、種を付けることがなく、1代で終了する種である。F1の種を買ってしまうと、毎年春になると種を買いに行かなければならない。種販売会社を儲からせるだけになる。
 昔から伝統的に農家をやっている人に種をもらわなくてはいけないが、それにはそういう農家から信頼を得る……というところから始めないといけない。もはや遺伝子操作されていない種が希少なものになってしまったから。
 できるならやってみる価値はあるだろう。できるなら……だが。


 今回の話はこれでお終いなのだが、ちょっと蛇足。
 たまたまYouTubeで動画で見かけたのだが、どうやら最近、「有機農法」のことを「スピリチュアルだ」と思い込んでいる人がいるらしい。こういう認識がどれくらい世間的に広まっているか知らないが、そういう話になっているようだ。
 まずどうしてこういう話になっているかというと、スピリチュアルをやっている人が有機農法を熱烈にアピールしだして、それを見ている人が批判として「有機農法はスピリチュアルだ!」とか言い始めたらしい。ちなみに、そのスピリチュアルをやっている人……というのは「参政党」という新興の政治団体だ。余計なことをしやがって。
 有機農法はスピリチュアルでもなんでもない。普通の農法だ。もっというと、「昔の人がやっていた農法」であって、特別なものでもなんでもない。「昔の人がやっていた方法に戻ろうぜ」というだけの話だ。
 有機農法に対する批判に、「有機農法にはエビデンスがない」というものもあった。あります。少し前に『アルバート・ハワードと『農業聖典』のお話し。有機農法はいかにして生まれたか?』という記事を公開したが、その中に経緯を書いた。1840年にユストゥス・フォン・リービッヒという科学者が「NPK」すなわち窒素、リン、カリウムからなる化学農法の手法を発表し、以降はこのリービッヒの手法が200年にわたり主流になってしまった(この手法を「慣行農法」という)。リービッヒ以降の農科学者は畑に出ず、研究室だけで理論を作り上げるようになった。そういう伝統が現代の遺伝子操作作物に繋がってくる。

 これに対し、1940年にアルバート・ハワードが発表したのが『農業聖典』。これが有機農法の最初の実践的手引き書となる。
 ただし、その頃にはすでに世界的にNPK、すなわち窒素、リン、カリウムを畑に撒いて作物を育てる慣行農法の手法が世界的主流になっていき、昔から伝統的に農業をやってきた……という人ですら、NPK法で農業をやるようになっていた。そういう背景だから、むしろ逆に伝統的農家ですら、アルバート・ハワードが提唱した有機農法に手を出さなかった。アメリカではハワードの有機農法を実践しようとしたのは、農業経験なんて何もなく、理想だけを胸に農業に挑んだヒッピー達だった。日本でも伝統的農家でも逆にやらない……というくらいになっていた。
 そして現代に至る……という話で、こういう経緯だから『農業聖典』に書かれていることが科学的に正しいかどうか……という実証がだいぶ遅れた、という事情がある。だが最近では栄養価の高い作物、雑草の抑草などが科学的に正しいというエビデンスが出るようになってきた。そういうのは探せば普通に出てきます。「有機農法はエビデンスがないからスピリチュアルだ」と言う前に、確認くらいしてほしいものだ。
(きちんと情報をさらえば、慣行農法の有害性もわかってくるはずだ。慣行農法は作物に栄養があまり載らないし、特に窒素は土壌を破壊していく。さらに将来的にリン、カリウムが枯渇する可能性も出ている。だから今のうちに昔ながらの有機農法を再現しよう……という話になっている。それに、NPKも海外から輸入しているわけだが、世界的インフレの影響で高くなっている、というのもあるし。現実的な話を考えても、有機農法について考えた方がいいぜ……という現状もある)
 ちょっと話は違うが、有機農法に対する批判に、実際に農家をやっているという人からの意見として「もしも有機農法で食糧自給率100%を目指そうとしたら、日本中の山をはげ山にしても足りません」というのも見かけた。これもどうやら事実ではない。「有機農法にすると慣行農法に対し収量が下がる」という事実はない。そう思い込まされているだけだ。
 が、別資料で有機農法の失敗例が結構ある……という話を見た。有機農法を実践してみたけれども思うように収量が上がらず、結局慣行農法に戻してしまった……という体験話が載っていた。ヒッピーが『農業聖典』片手に有機農法を始めた……というエピソードも実際にはほとんどが挫折したというのが本当らしい。
 たぶん、そう簡単にうまくいくものではない……というのが事実なのだろう。日本では慣行農家が99.4%、有機農家は0.6%だ。この数字がすべてを物語っている。有機農法というと特別な感じがするが、実は昔の人がやっていた農法を再現しよう……というだけの話だが、それがどういったものだったのか、「再現が難しい」というのが現代の人々が行き当たっているところだ。
 例えば抑草の方法だが、批判する人は「虫を使って抑草……意味不明だ」というが、「益虫を使う」ということである。『天穂のサクナヒメ』で畑に蜘蛛やタニシを撒いていたあれのことだ。
 しかし益虫をどれくらい放てばいいのか、地域によって益虫が違うということもあるだろう。益虫だ、といっても下手に撒けば作物が食い荒らされる可能性だってある。そういうノウハウがまったくわからない。昔の人の知恵が現代に伝わっていないのが問題だ。
 とにかくも、有機農法はスピリチュアル的なものとは一切関係ない。体系だったノウハウもしっかり存在する。科学的な正しさは検証もされている。ただし失敗例が多いということから、「夢の農法」でもない。うまくいければ栄養価の高い作物を、慣行農法よりも収量多く獲得することができる。だがそれは考えているよりも難しい。
 終わりとして言いたいのは、参政党は余計なことをするな! 中途半端にスピリチュアル的なものとごちゃごちゃにして語るから、逆に偏見が広まってしまっている。有機農法について語るなら、きちんと知識を得てから話してほしいものだ。


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