見出し画像

8月6日 作業中にホラー映像を見ていると気分が変なゾーンに入る……とかいう話。

 最近、作業中に見ているビデオがAmazon Prime Videoで配信されている『本当にあった! 呪いのビデオ』。
 作品はこちら。

 このシリーズは1999年頃から始まり、現在も続くシリーズで、通算なんと97本! 「……おわかりいただけたであろうか」「……とでも言うのだろうか」といった名文句はこのビデオシリーズから生まれたとかなんとか……。ということは「おわかりいただけたであろうか」は1999年生まれなんだ。もっと前からあるものだと思っていた。
 まあ長いシリーズなのでどうやら一定数の好事家がいて、シリーズにも変遷はあるようで……。書く前に、一応Wikipediaを見てみたのだけど、まあびっちり書き込まれていることにビックリ。これだけ続くシリーズだから、見ている人も相応にいるんだ。

 構成はいたってシンプル。視聴者から送られてきたビデオをそのまま紹介し、「おわかりいただけだろうか」と問題の部分を繰り返しリピートする。昔、テレビでやっていた心霊番組のノリで、CMもなければMCもいないし、芸能人が出ているだけの再現Vもないので、展開良く進む。やっぱりテレビで取りあげるものって劣化するんだな……。という以前に、最近はこの手の心霊番組自体、ほとんどテレビでやらなくなっちゃった。なんでだろう?
 ただ、絵を描く作業をしながら見るものじゃないな……。「それでは問題の映像をご覧いただきたい」と言うたびに手を止めて見てしまう。なれてくると、肝心の映像だけをちらっと見て、あとは作業を続けるのだけど。
 ラジオ番組のようにずっと流せるようなものじゃないし、これ単体だけ見て楽しいか……というと微妙だし……。観るタイミングもちょっと難しいかも。

 こうした怖いビデオ集は、だいたいフェイクが9割、本物1割くらいだと思って観るといい。見ていると、結構無理矢理合成したな、と思えるものもあるし、パターンもわかってくる。画面が不自然にクローズアップしたり、やたらPANしたりすると、こちらも「何かあるな」と察するようになってくる。ちょっと『ウォーリーを探せ』の幽霊版を楽しんでいるような気分にもなる。
 よくあるパターンが、窓に顔が映り込んで……というもの。見ているとなんとなく解像度が違うし、「顔が映り込んでいる」と言われても「そうか?」みたいな感じになる。合成が作りやすいし、どうとでも言えるので、汎用性が高いことが見ていてわかる。
 昼の公園に、首を吊った男の姿が映り込む……という映像もあったが、どう見ても「地上に立っている男」の姿だった。本当に首を吊った姿だったら、首から下がだらーんとさがってなければならない。でも映像に出てきた「首吊り男」の体勢は、どう見ても地上に立っている姿。こういうところで詰めが甘い。
 心霊映像の多くは画面がPANした瞬間に映っていた……ということになっているが、カメラを横に振った瞬間というのは像がブレるもの。そのなかにやたらとくっきりと幽霊の姿が映っている……というのも逆に不自然。
 でも、そういうも含めて『ウォーリーを探せ』感覚で見ていると結構楽しかったりする。「おわかりいただけたであろうか」の前に発見できると、嬉しかったりする。映像がフェイクか本物か、というよりエンタメとして成立していたら、どっちでも良い。それに、通俗的なホラーの雰囲気が好きなんだろうね、私は。「胡散臭いなぁ」とか思いながらも、結構楽しんで見ちゃうんだ。

 こうした映像集はフェイクが9割、本物が1割……と書いたけれど、見ていると「これは本物かな」と思える映像も少しあった。
 駅のプラットフォームの監視カメラ映像で、そのプラットフォームに明らかに挙動不審な男が映し出されている。男はプラットフォームの端っこにやってきて線路を覗き込み、プラットフォームの奥に引っ込み、また端っこにやってくる……を繰り返していた。その後、電車がやってきたタイミングで、男はスタスタと歩き、プラットフォームからぴょんと飛び降りてしまった。しかしその瞬間は駅員も(電車の運転手も)電車に乗ろうとしていた乗客達も、ちょうど背を向けていたタイミングで、誰も線路に飛び込んだ男に気がつかないのだった……。
 この映像の後、監視カメラを見ていた駅員が、「飛び込んだ男がいる!」と駆けつけて、ようやく気付いたのだとか……。停止しかけの電車にちょっとぶつかった程度だったから、男は死なずに済んだようだが……。これは「心霊映像」じゃなくて、ガチな「人身事故映像」じゃないか。広義の意味での「恐怖映像」には違いないけど。男が飛び降りた瞬間の映像は、結構ギョッとする。
 もう一つ、本物かな、と思ったのはビデオ屋の監視カメラ映像だけど、通路を歩き回る子供の「足」だけが映り込んでいる……という映像。誰もいないはずの通路に、足部分だけがぼやーっと浮かび上がって、歩き回る……という映像だ。
 これも本当っぽいな、と思ったが、しかし心霊映像ではなく、アナログ時代のテープは何度も重ね録りをしていると、前の映像が変な感じに像だけ残ったりすることがあるので、たぶんそういうものじゃないかな。偶然たまたま、子供の足部分だけが残っちゃった。そして監視カメラ映像だからずっと同じ場所を録っているので、ちょうどいいところに足だけが映った……ということでしょう。本物映像だけど、心霊映像ではない。理由もわからずに見ていると、結構不気味な映像だけど。

 『ほんとうにあった! 呪いのビデオ』には毎回、ドキュメンタリー部分というものが存在する。制作スタッフが実際の当事者に会って話を聞いて、その後問題映像を流す……というパターンだ。
 そこで印象的だったのは、神社を映しだした映像。管理人がいなくなって、廃墟となった神社に、老婆の姿が映っている……というものだけど、映像は明らかな合成。そうではなく、「関係者のお話」のほうが印象深かった。
 関係者と名乗る男性の話(たぶん劇団員じゃないかな)によれば、「管理人のいなくなった神社には近付くもんじゃない。神社というのはもともと祟りや荒ぶる神を鎮めるために建てられたもの。管理人がいなくなった神社は、祟りや呪いを鎮めるものがなくなった状態。そういう状態の神社に近付くのは危険だ」……という。
 この話を聞いて、ピンと思い出したことがあった。
 何年か前、私は山に登ったのだけど、登山中、ふと「脇道」があることに気付いた。私は面白がって脇道に入っていったのだけど、山の脇道なんてものはほとんど獣道のようなもの。それでも確かに道っぽいものがずーっと続いている感じがあったので、私はどんどん奥に進んでいった。
 すると、ふと開けたところに出た。その場所というのが夏だというのに虫の鳴き声がまったくせず、妙に寒かったし、背の高い草むらの中に崩れかけたお稲荷さんのお社がひとつ建っているだけの場所だった。
 ただそれだけの空間だったのだけど……妙に嫌な感じがした。なぜか「ここにいるべきじゃない」と直感がして、写真も撮らずに逃げ帰った記憶がある(写真資料の撮影のために山に登っていた)。
 たぶん逃げて正解。ちょっとヤバいところだったんだろうね。

 作業中、ぽつぽつと『呪いのビデオ』を見ているけれど、Amazon prime会員無料で開放されている作品はかなり古いものばかり。撮影がまだアナログで、解像度が低い。画面が暗い。投稿映像もギリギリ携帯電話に録画機能が出てきた頃なので、その映像も解像度が低くて見づらい。あの映像だったら、ちょっとした影でも「幽霊映像です」と言い張れる。というか、明らかに照明がブレブレ状態で映っただけのものを「人魂だ」と言い張っている映像もあった。解像度が低いと、なんでも心霊映像ということにできてしまう。
 ああ、最近のシリーズを見てみたいなぁ……。最近の心霊映像ってどんなふうになっているのだろう。デジタル時代でも心霊映像ってわりと撮影されている……という話を聞くけれど、実際どういうものか見たことがない。いつかこのシリーズの新しいものも見てみたい。


とらつぐみのnoteはすべて無料で公開しています。 しかし活動を続けていくためには皆様の支援が必要です。どうか支援をお願いします。