堂本トランボ

映画と旅、ビールをこよなく愛する。アマチュア小説家としての私の企て。社会課題をエンター…

堂本トランボ

映画と旅、ビールをこよなく愛する。アマチュア小説家としての私の企て。社会課題をエンターテイメントに。

最近の記事

一人称多視点への挑戦

物語を一人称で書くか、三人称で書くか、トランボはこれが小説の成否を決める重要な決断だと思っています。トランボがこれまで書いたのは長編4本、短編2本。いずれも一人称で書きました。どうしても三人称には手が出ないのです。 三人称は神の視点です。主人公が知りえない事実などを書くことができます。したがって、物語を広がりのあるものにできます。一人称にはその逆のデメリットがあります。つまり、主人公が知りえないことは書くことができないし、そのキャラ設定によっては書けることに制約が生じます。

    • ゴジラの存在は善か悪か?

      「ゴジラ-1.0」が米国アカデミー賞で視覚効果賞を受賞しました。ハリウッドの大作と比較して圧倒的に少ない予算で、迫力のある映像を生み出せたことが評価されたとか。日本人クリエイターの底力を世界に示すことができました。関係のみなさま、おめでとうございました。 1954年、記念すべき第一作の公開から、数多くのゴジラ映画が製作されてきました。昭和ゴジラが15作、平成ゴジラが13作、2010年以降では「シン・ゴジラ」と、現在公開中の「ゴジラ-1.0」の2作があり、その総数は30作に及

      • 007シリーズに見るアフリカ系俳優の台頭

        大変遅ればせながら007シリーズ最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021年)を鑑賞。ダニエル・クレイグは、この作品をもってボンドを卒業すると宣言しており、有終の美を飾るにふさわしい仕上がりとなっていました。 007シリーズは時代の空気や世相を物語に反映させてきました。冷戦、核やテロの脅威、等々。1970年代からリアルタイムでシリーズを見続けてきたトランボが今回、注目したいのはアフリカ系俳優さんの台頭についてです。 ここで一旦、本題から離れ、言葉の使い方について

        • 追悼 森村誠一先生

          昭和、平成、令和と三つの時代を駆け付けた偉大なる作家、森村誠一先生が亡くなりました。先生が描き続けたのは大きな力に抗う個の姿でした。多くの読者同様、トランボも先生の紡ぐ物語に魅了されました。 先生の作品で最も印象に残っているのは『人間の証明』。発表は1975年。まだ戦後という表現がしっくりくる時代。物語にも戦争という人類が引き起こす大いなる悲劇が影を落としていました。複数回、映像化もされています。代表作は角川春樹事務所が1977年に製作のものでしょう。ハリウッドの有名俳優を

        一人称多視点への挑戦

          時代が生んだ傑作~映画「イ二シェリン島の精霊」

          前回に引き続き、映画のお話。 映画「イ二シェリン島の精霊」について。 ※若干のネタバレあり。これから鑑賞を予定されている方は鑑賞後にどうぞ。 使用期限が迫っていた某劇場の招待券を消費するために、タイトルだけで何となく鑑賞を決めた作品でした。ストーリーすら知らず、ゴールデングルーブ賞をはじめとする数々の受賞歴のことも知らずに観たわけですが、運命の一品に出会えた感慨を胸に劇場を後にするトランボでした。 舞台は内戦に揺れるアイルランドの孤島、イニシェリン島。そこに住む二人の男

          時代が生んだ傑作~映画「イ二シェリン島の精霊」

          映画「砂の器」

          1か月ぶりの投稿です。 実はトランボは映画も大好き。今日は映画と原作本の話。 日本映画は小説を超えられないと言われていた時代がありました。大好きな小説が映画化されたと聞き、大喜びで映画館に足を運んだものの……。確かにそんな経験が幾度もありました。 そうした言質を吹き飛ばす一作があります。 「砂の器」 原作は松本清張先生。原作も素晴らしかったですが、映画は想像を遥かに超えるものでした。 なんといっても脚本が素晴らしい! 橋本忍先生と寅さんシリーズの生みの親、山田洋次

          映画「砂の器」

          ChatGPTとの共作、止めます

          次の作品をChatGPTと共作しようと思っていましたが、止めます。 さまざまな領域にAIの活用が拡がっています。メルカリ米国法人はユーザーにおすすめ商品を提案するため、ChatGPTを使うと発表しました。芸術分野も例外ではありません。中国の新興企業がメロディの一部から20~30秒の楽曲を自動生成できるスマートピアノを開発しました。音楽版ChatGPTです。 そうしたなか、AIの活用に懸念の声も上がっています。AIによるプライバシーの侵害や偽情報の拡散。AIは(とりあえず現

          ChatGPTとの共作、止めます

          『カササギ殺人事件』

          以前からずっと読みたいと思っていた『カササギ殺人事件』を読了。ミステリー作家アンソニー・ホロヴィッツ氏の作品です。作品は全体で二部構成になっており、前半では作中小説「カササギ殺人事件」本文が、後半ではこの作中小説を巡って起きた殺人事件にまつわる物語が綴られます。 前半と後半で二度の犯人捜しが楽しめる! なんと贅沢な作品でしょう。 氏はアガサクリスティ女史から大きな影響を受けているようです。その実、作中小説「カササギ殺人事件」はまるで女史の作品を読んでいるようでした。アガサ

          『カササギ殺人事件』

          小説には時代性が必要

          時代を先取ったかな、と密かな優越感に浸っています。 米メタ(旧Facebook)が文章や画像を自動生成するAIを年内にリリースすると発表しました。商用利用が進めば、業務の効率化が図られることでしょう。 ここのところ、新聞を読んでいてもAI関連の記事を目にしないことがありません。それに呼応するようにAI脅威論も聞かれるようになりました。 イタリアは対話型AIであるChatGPTの使用を禁止しました。データ利用に不透明な部分があるというのが理由です。実業家イーロン・マスク氏

          小説には時代性が必要

          辻村深月先生の作品にはまっています

          辻村先生の作品には、ミステリー小説を読んでいるようなスリルがあります。例えば近作『傲慢と善良』。婚活をテーマにした恋愛小説で、結婚を間近に控えた男女が主人公。作品の前半は男性の視点で、後半は女性の視点で物語が進行します。 突然、姿を消してしまう女性。それを追う男性は女性の過去を少しずつ手繰り寄せていきます。その過程はまるで推理小説のよう。たぶん、予備知識なしで読んだらミステリーと勘違いすることでしょう。 筆力も凄い! トランボがあまりの凄さにのけぞったのは、直木賞受賞作

          辻村深月先生の作品にはまっています

          近未来社会派ミステリー「声」連載開始

          2035年。教育格差の是正を目的に学校外教育を禁じる法律が施行された日本。学習塾は地下化し、一部の富裕層だけがサービスを享受する。6月のある日、東京都X市で通り魔事件が発生。3名の被害者は、城田尊が経営する闇塾の関係者たちだった。 現行犯逮捕された犯人、相神圭吾は内なる声に従って犯行に及んだと供述。事件関係者のなかには他にも沖縄の離島にルーツを持つ2人の相神がいた。代々、優秀なシャーマンを輩出し、沖縄の政を支えてきた相神一族。その末裔である相神圭吾が言う内なる声とは? 常

          近未来社会派ミステリー「声」連載開始

          ChatGPTで遊んでみた

          今話題のChatGPTを使ってみました。 辻村深月先生に関するエッセイを書いています。(もちろんnote用) ChatGPTに書いてもらったらどんなものができるのだろうと思い、試してみました。次のように質問しました。 あえて「書いてください」ではなく、「書きたい」と意地悪をしてみました。『そうですか。あなたは辻村深月さんが好きなのですね』なんて、間の抜けた返事が来るのではないかと思っていましたが、結果は違いました。しばらくの沈黙。そして、ChatGPTはエッセイを書き始め

          ChatGPTで遊んでみた

          ペンネームの由来について

          堂本トランボ。もちろん、これはペンネームです。 ハリウッドの脚本家、ドルトン・トランボ氏にちなんで名づけました。氏は1936年のデビュー以来、数々の名作を生み出し、映画界に偉大なる足跡を残しました。 ドルトン・トランボは赤狩りに反旗を翻したハリウッド・テンの一人です。非米活動委員会での証言を拒んだトランボ氏は、議会侮辱罪で実刑判決を受けます。刑期を終えた後、偽名を使って映画の仕事を続けます。その間に生み出された作品に、「ローマの休日」「黒い牡牛」といった名作があります。(す

          ペンネームの由来について

          執筆の動機

          今回はトランボが執筆を始めた動機について、書きたいと思います。 現在、小説投稿サイト「エブリスタ」で公開中の「スマートホーム」は長編3作目ですが、1作名から一貫して格差というテーマをストーリーの軸にしてきました。登場人物を配置するとき、常に持つ者と持たざる者の構造的対比を意識しています。 トランボが企図する格差は経済的なものだけに限りません。性愛を獲得できる者とそうでない者、学校におけるスクールカーストなど様々な対立構造を取り上げています。そして、これこそが執筆を決断した

          横溝ワールドに魅了された少年の今

          私が産まれてはじめて、小説というものに没頭したのははるか昔昭和の時代。ある作家によって小説の世界が開いたのです。 その作家の名は横溝正史。 トランボ少年は、横溝先生の世界観に頭をぶん殴られたような衝撃を受けたのでした。(ここで作家さんを紹介する際には、敬意をこめて「先生」という敬称をつけることにします。) 「八つ墓村」「悪魔の手毬唄」「三つ首塔」「獄門島」「病院坂の首縊りの家」…。タイトルからして横溝ワールド炸裂です。 たぶん最初に読んだのは「犬神家の一族」だったかと

          横溝ワールドに魅了された少年の今

          『家族の記憶』

          一本目の投稿から、たくさんの「スキ」を頂き、ありがとうございました。引き続きご贔屓のほどを。 次回作の準備に入りました。つくられた記憶、変容した記憶を物語の軸に、家族性の喪失と再生を描きたいと思っています。タイトルは「家族の記憶」。(たぶんこのままいくと思います) つくられた記憶で犯罪が捏造されてしまったら…。 あまり書き過ぎないほうがいいですね(ちょっとネタバレかも)。いつ完成するか分かりませんので、気長にお待ちください。 ◆作品情報 小説投稿サイトに作品を公開して

          『家族の記憶』