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007シリーズに見るアフリカ系俳優の台頭

大変遅ればせながら007シリーズ最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021年)を鑑賞。ダニエル・クレイグは、この作品をもってボンドを卒業すると宣言しており、有終の美を飾るにふさわしい仕上がりとなっていました。

007シリーズは時代の空気や世相を物語に反映させてきました。冷戦、核やテロの脅威、等々。1970年代からリアルタイムでシリーズを見続けてきたトランボが今回、注目したいのはアフリカ系俳優さんの台頭についてです。

ここで一旦、本題から離れ、言葉の使い方について一言。

ここではBlack(黒人)の皆さんをアフリカ系〇〇と表記することにします。英語で言うBlackも日本語で言う黒人も差別的な響きを伴うからです。例えばブラック企業という表現。「ホワイト=善」「ブラック=悪」という対比構造を前提にした表現であり、アフリカ系の皆さんに大変失礼な物言いであると思っています。

では本題に戻り、007シリーズでアフリカ系俳優さんたちがどのように台頭してきたかを見ていきましょう。

主要なキャラクターとして、アフリカ系俳優さんが登場したのは、シリーズ第8作目『007/死ぬのは奴らだ」(1973年)が最初です。毎回、個性的な悪役が登場する本シリーズですが、この作品ではアフリカ系アメリカ人のヤフェット・コットーが麻薬密売組織のボス、ドクター・カナンガを演じています。(ちなみにヤフェット・コットーはその後、リドリー・スコット監督の出世作『エイリアン』(1979年)など話題作に多数出演しています。)でもまだこの時点では悪役なんですね。

ボンドガールはどうでしょうか。そもそもボンドガールの定義が難しいところがありますが、主要な登場人物に限定していえば、まずはシリーズ第14作目『007/美しき獲物たち』(1985年)が上がります。出演したのはミュージシャンでもあるグレイス・ジョーンズ。でも彼女はメインのボンドガールではありません。アフリカ系俳優さんがメインのボンドガールを務めるのは、そのずっと後、シリーズ第20作目『007/ダイ・アナザー・デイ』(2002年)まで待たなければなりません。演じるのはオスカー俳優のハル・ベリーです。

ボンドの友人、CIAのフェリックス・ライターにも注目してみましょう。フェリックス・ライターは実に多くの俳優さんたちが演じてきました。その多くは白人俳優の皆さんですが、シリーズ第21作目『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年)以降は、米国ワシントン生まれのジェフリー・ライトが演じています。

そして、シリーズ第25作目にあたる今作。なんとなんと、ジェームズ・ボンドの引退によって欠番となった007を引き継いだのはアフリカ系女性という設定。演じるのは、『キャプテン・マーベル』(2019年)などにも出演しているラシャーナ・リンチ。

どうでしょうか。アフリカ系俳優さんたちがその存在感を広げていった軌跡を感じていただけたでしょうか。

<作品情報>
小説投稿サイトに作品を公開しています。
声 - 小説投稿エブリスタ (estar.jp)


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