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追悼 森村誠一先生

昭和、平成、令和と三つの時代を駆け付けた偉大なる作家、森村誠一先生が亡くなりました。先生が描き続けたのは大きな力に抗う個の姿でした。多くの読者同様、トランボも先生の紡ぐ物語に魅了されました。

先生の作品で最も印象に残っているのは『人間の証明』。発表は1975年。まだ戦後という表現がしっくりくる時代。物語にも戦争という人類が引き起こす大いなる悲劇が影を落としていました。複数回、映像化もされています。代表作は角川春樹事務所が1977年に製作のものでしょう。ハリウッドの有名俳優を起用し、ニューヨークロケを敢行した(当時の日本映画には珍しい)大作でした。

トランボは『人間の証明』を二度読んでいます。一度目は中学生の頃。二度目は大人になってから。二度目に読んだ際の心が締めつけられるような想いを忘れることができません。自分を産んでくれた母親に会いたい。ただその一心で日本を目指した貧しい黒人青年は結局、その母親の手にかかって命を落とします。切ない物語でした。

素晴らしい作品の数々を本当にありがとうございました。先生のご冥福をお祈り申し上げます。

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