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心の浄化週間〜DAY3〜

寝苦しくて、目が覚めた。
時計を見ると1時55分だった。
もう少し寝たかった。きっとまた朝まで眠れないのだろう。

四書五経とはなんだろう。学生の頃世界史で習った気がする。
スマホを手にして電源を入れる。
ライトが目ん玉を射る。目を顰めながら、検索窓に入力する。
四書五経がなぜ思い浮かんだのかというと、渋沢栄一も中里柴三郎も幼い頃に学んでいたと偉人伝に書いてあったからだ。
ざっくり言うと孔子の言葉を纏めた書物とのことだが、それをいま8歳の息子が読めるのかと考えると到底無理である。
息子はようやくおしり探偵の本を一人で黙読できるようになったくらいである。
明治時代の意識高い系の家庭の教育レベルは、今の動物園みたいな小学校とは比較にならない。
ましてや、渋沢栄一は幼い頃から家業も手伝っていたそうだ。
うちの息子のお手伝いといえば、箸を食卓に並べるくらいのものだ。

「お母さん、トイレ!」の声に、ハッとする。
四書五経について調べているうちにうつらうつらしていたらしい。
握っていたスマホの時間は4:08であった。
トイレに行き、麦茶を飲むと息子はベッドに戻った。
私はリビングのソファーに寝そべり、スマホで今日の天気を調べる。昨日より雲が多く午後は雷雨マークが付いているがまた猛暑日になりそうだ。
今日は土曜日。学校がない土日はもっぱら息子のサッカーかバスケの練習の付き添いだ。
今日はバスケの練習がある。
主人はゴルフの打ちっぱなしに行くと言っていた。

キッチンで鍋に水を貯め火にかける。
味噌汁に何を入れるか冷蔵庫を弄る。
ブロックベーコンがあった。少し萎びた1/4キャベツが野菜室の奥からでてきた。
夏野菜が食べたいと昨日スーパーでカゴに積んだ茄子やピーマンも目に留まったので、味噌汁はやめてミネストローネを作る事にした。
野菜を1センチ角に刻んで鍋に放り込む。
鍋の中が茄子の紫で暗くなったので、冷蔵庫を漁り人参を探し当てた。少しくたびれているが、まだいける。刻んで入れると鍋の中が明るくなった。
軽く塩コショウをして、コンソメキューブを2個剥いて投げ入れる。
お玉で軽く混ぜると、なんかラタトゥイユみたい。野菜室を再び漁る。
底に転がっていた小さなじゃがいもを2個、玉ねぎを1個掴み、四角く刻んで投入した。
ブロックベーコンもサイコロのようにカットし投げ入れる。
パントリーからトマト缶を掴みだし、グイッと開けて鍋に入れ、お玉で2回3回とかき混ぜる。
赤いスープの中に紫の茄子の皮がミネストローネにしては異質だ。この茄子のせいでラタトゥイユに見えるんだな、と思う。
ふとこの茄子がチームでの私のように見えてきて、ぐるぐるお玉でかき混ぜた。

15分ほど煮込むと角張っていた具材はしんなりしてきて、カドがとれてどの野菜もおとなしくなってきた。
お玉にスープを少し掬い、フゥッと息を吹きかけ口に運ぶ。
少し薄い。塩を追加し、隠し味にみりん、ケチャップ、カレー粉を混ぜ入れる。
あとは具材から出るコクが煮込むほどに調和してくる。
私ももう少し踏ん張っていたらチームに溶け込んだだろうか、と考える。

朝食を済ませ、洗濯物を干し、身支度を整えて息子と自転車でバスケの練習がある小学校の体育館へ向かう。
今日は雲が多く太陽が翳っている。湿った空気が身体にまとわりつく。

いつもは息子のバスケ練習を他のお母さん方とワーワー言いながら観戦するのだが、用事があるので練習が終わる頃また迎えにくるね、と息子に声をかけ自宅に戻った。

「雨降ってきたよ〜。」ご近所のおばさんの声が聞こえたので、急いでベランダに行き洗濯物を取り込んだ。雨粒が乾いたバスタオルに丸いシミを落とす。
ゴロゴロゴロ、と空の唸り声が聞こえてきたので、急いで窓を閉める。
夫に帰りに車で息子をお迎えに行ってほしい、と電話で頼み、家中の窓を閉め、除湿機のスイッチを押し、テレビのリモコンに手を伸ばして音量をあげた。









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