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心の浄化週間~DAY2-②~

さて、どうしようか。
恐る恐る山門の敷居を跨ぎ、中を見上げる。現在の山門は1785年(天明5年)に再建されたとのことで、239年間分の重みを感じる。
欄干に彫られた模様が一見すると竜に見える。何匹もの竜に囲まれている心持ちになって立ち止まる。
ガイドにつれられた4、5人の外人の団体がやってきて、写真をバシバシとっている。押し出されるように一緒に山門を通過してしまった。

煩悩だらけではあるが、通過できてしまったので佛殿へすすんでいく。その外人の一行と一緒にスリッパに履き替えて中にはいると、天井に大きな竜が現れた。
「Oh,Dragon!」とその外人の一行が口々に感嘆の声をあげる。
私も同じ気持ちであった。そして鎮座する釈迦如来坐像。とても険しいお顔をしている。
煩悩だらけでごめんなさい。外人さんと同じ感想しか言えなくてごめんなさい。と心のなかで呟き、手を合わせる。
私のジェスチャーをみて、外人のカップルが真似をした。
ガイドが「Here is the Garden.」と言ったのでわたしもついて行った。


とても素敵な裏庭があった。庭を鑑賞するように椅子がいくつかおいてあったので腰掛けてしばし眺めた。手にもっていた案内パンフレットにかかれている言葉に目がいった。
     このように 生まれてきて
     このように 生かされて
     いま 生きている
     これこそ 仏心
     如来 無量のいのち
     ありがたく 手を合わす

禅の心は難しいが、だからこそまずは感謝の気持ちで手を合わす、これでいいのかなぁと思い、円覚寺を後にした。

円覚寺の後に明月院と建長寺に行こうと思っていたが、ググるとどちらも禅寺であったので、いまの私には内省する禅はキツイ、と思い予定を変更しシェアバイクで旧華頂宮邸に向かうことにした。
名月院の紫陽花は有名だが、今年の紫陽花は遅かったのか、まだまだ生き生きとまあるく、わらわらと線路沿の花壇に咲いていた。円覚寺でもたくさん見ることができたのでそれで良しとすることにした。

お天動様が頂点に達し、コンクリートの上は灼熱地獄のような熱気を帯びてきていたので、近くにあったおにぎり屋さんのイートインで腹ごしらえをすることにした。
しゃけと梅のおにぎりを頬張り、お茶でお腹に流し込む。
少し涼めたので、電動自転車に跨りグーグルマップで方向を確認し出発した。

目的地まで歩くと47分とある。自転車なら15分くらいかなぁと思っていたが、そこは鎌倉。
アップダウンあり狭い道ありで、自動車が渋滞している横をバイクに前後挟まれながらぎりぎりに進んでいくが、クルマにぶつかりそうで冷や冷やしながらようやく鶴岡八幡宮前まで来た。
大勢の観光客を横目に八幡宮を通りすぎて、国道をさらに東へ進んでいく。
ようやく国道から1本逸れた人気のない住宅街の裏道に入ることができてホッとして、自転車をぐんぐん漕ぎ緩い坂道を登ってゆく。

旧華頂宮邸

旧華頂宮邸に着いた。だれもいない。
鶯の鳴き声が聞こえた。
門は開いていたのでゆっくり入っていくと、鬱蒼とした木々の向こうから緑の屋根の威風堂々たる洋館が現れた。
鶯の森に鎮座する洋館は、少し寂しい佇まいであった。
外観をじっくり眺めながら建物の前へまわるとフランス式の庭に3人の男性が立っていた。ラフな格好のその一行は私が写真をとっているのをみて少し下がってくれた。
話の内容から、ドラマか映画の撮影で使うための下調べのようであった。
建物内に入れる日は不定期らしく、よく見ると入口に「7/20、21は内覧日」と張り紙がしてあった。
そのとなりに「工事のお知らせ」とある。
今年は屋根の葺き替え工事を予定しているらしく、緑の屋根は見納めになるらしい。銅の屋根は初めは赤く徐々に錆て緑になるのだ。
葺き替え後にまた来よう、と自転車を駅に向かって漕ぎ出した。
    ホーホケキョ
         ケキョ
鶯の鳴き声が私に「また来てね」と言っているかのようにあちこちで聞こえた。




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