成陽高校文芸部

略して「セイブン」。 物語を主に書きます。部員募集中。 ご連絡はこちら↓ sclst…

成陽高校文芸部

略して「セイブン」。 物語を主に書きます。部員募集中。 ご連絡はこちら↓ sclstory2022@gmail.com

最近の記事

ショートショート「衝突記念日」

本格的に冷え込み始めた10月23日。科学者A氏から緊急で発表があった。 「私たちの星にとんでもなく大きい隕石が、ものすごいスピードで迫ってきています。いやそれだけではありません。どうやらこの星もその隕石に引き寄せられている。衝突予定時刻は来月の下旬ごろだと予想できます。この惑星は終わりです。」 この発表は我々を騒然とさせた。このままではどうやっても我々の世界は終わってしまう、とニュースは連日我々を煽り立てる。もちろん世間は大混乱に陥った。 世界が絶望に包まれる中、A氏か

    • ショートショート「AIの挨拶」

      「はいどうも〜こんにちは!あなたと愛を繋ぎます!人工知能アイドル マミです!」 少し無機質で、透明感ある挨拶が響く。  2024年。IT技術の進歩は目まぐるしい。 最近某動画配信サイトで「AIドル マミ」という配信者が流行りつつある。いや者ではない。彼女は生配信で来たコメントをAIによって自動でコメントする。しかも人間に近い声で、アニメキャラクターのようなデザインの女の子が表情と声色をつけて瞬時に返してくれるのだ。昔からチャットアプリで似たようなものはあったのだが、その親戚

      • ショートショート「月下美人」

        「国際会計士になって、アメリカで働くんだ!BIG4に就職して、会計士の立場から世界に貢献したい!」 「いいじゃん。応援してるね。」  晩御飯の時間。温もりあるダイニングのライトの下で、壮大な夢を無邪気に語るあなたは子供みたいで可愛くて微笑ましい。夢は口に出す方が叶うってハウツー本で読んだって言ってたね。本に書いてあることをすぐに実践する、素直なあなたも好き。 「国際会計士の資格が取れるまで勉強に精を出したいんだ。今はあまり時間を取れなくなっちゃうかもしれないけど、必ず近い

        • ショートショート「ロボロマンス」

          「大人になったら絶対に結婚しよう。この手を見て、私のことを絶対に忘れないで。」  2535年10月。そう言って僕の大好きな幼馴染みは引っ越ししていった。僕らは最後に手のパーツを交換した。大人は愛している人と、愛情を示す証拠に自分の一部であるパーツを交換し合うのだ。以前それを映画で見た僕らはそれに憧れていて、真似をした。  どんなときも僕は幼馴染みを手を見るたびに思い出した。中学や高校で素敵な女性にたくさん出会ってきたが、この手を見るたびになんとなく引っ掛かり、幼馴染み以外

        ショートショート「衝突記念日」

          ショートショート「背徳マシマシ」

           金曜日、深夜の2時。気になっていたお店についに来た。その名も「レストラン・カーニバル」、通称背徳レストラン。なんでも、その人の背徳感に合わせて料理を提供してくれると噂だ。そして、深夜にしか営業していない。いかにも背徳を感じさせる。社会人の僕はなかなか予定を合わせるのが大変で、やっとこさ念願が叶った。  ウェイターの方から簡単なアンケートを受け、少し待つと遂に料理が到着した。なんと、深夜に食べる家系ラーメンだ。いささか王道過ぎる気もしたが、まぁいい。空腹でお腹と背中がくっつ

          ショートショート「背徳マシマシ」

          ショートショート「人生はメリーゴーランド」

           友人と遊園地に行くときメリーゴーランドに絶対に乗ってしまう。子供っぽくて恥ずかしいのだが、正直にいうとメリーゴーランドが好きだ。私はジェットコースターがそんなに得意じゃないので、楽しんで乗れるアトラクションは限られる。そんな中ただぐるぐると回るだけの彼は、外で乗り番を待っている知らない人と笑顔で手を降りあいっこしたり、ゆっくりと上下する友人の間の抜けた映像を撮ってみたりとなんだか楽しい気分にさせてくれるのだ。夜に乗るときは柔らかいオレンジ色のライトで私を迎えてくれて、まるで

          ショートショート「人生はメリーゴーランド」

          ショートショート「感情のゴミクズ」

           観賞後の映画館。僕は映画館で働いているアルバイトだ。今世間で流行っている「桜を見て、あの頃の君を思い出す」が終わったみたいだ。原作は累計100万部を越えた傑作らしい。涙ぐんでいるカップルたちが去っていくのを尻目に、僕は春のシアターの掃除を始めた。いわゆるお涙ちょうだい系だったからか、ティッシュがたくさん落ちている。汚いな。僕にはあいにく変わった趣味は無いし、ただただ不快でしかない。マナーを守ろう、って映画館のゆるキャラも注意しているじゃないか。僕はため息をつきながら床に落ち

          ショートショート「感情のゴミクズ」

          ショートショート「長すぎる走馬灯」

           長い。あまりにも走馬灯が長すぎる。  わたしはIT企業に勤める齢32のごくごく普通のサラリーマンである。仕事の関係上同僚の女性と一緒に歩いていたところを妻に見られ、さらに浮気だと誤解されそのまま包丁で刺された。釈明の余地など全くなかった。そして、噂に聞いていた通り現在走馬灯を見ているのだが、やっと12歳になったところである。走馬灯というのは、字のごとくフラッシュバックがどんどん駆け巡っていくようなものを想像していたが、どうやら人生のリバイバル上映のようだ。あと20年、先は

          ショートショート「長すぎる走馬灯」

          ショートショート「人生の受託」

           ずっと待っていたものが、ついに届いた。新型のキーボードである。C社というIT企業が、今流行りのクラウドファンディングで応募していて、ガジェットオタクの僕は迷わず購入した。驚きの機能はなんと、キーボード自体にAIが搭載されていて、自分の入力したいワードを判断し勝手にタイピングしてくれる、というシロモノである。ネットではよくバカにされているが、「カタカタカタカタ、ッターン」と高速タイピングも夢じゃない。僕はあんまりタイピングが早くないので、会社で使えば多少効率化に繋がるかもしれ

          ショートショート「人生の受託」

          ショートショート「ご利用は計画的に」

           わたしは小さなお店を切り盛りしているしがない経営者である。ある日、いつも使っているカード会社から新しいクレジットカードの紹介を受けた。 「このカードはただのクレジットカードではございません。このカードを使っていただくと、使った額に応じて幸福が舞い降りるのです。この幸福は決してお金では買えません。」  とてもじゃないが信じられない。そんなものがあるなら誰もが使いたいだろう。しかし、わたしは同時にギクッとした。経営者としてそれなりに成功を収め、いわゆる小金持ちのわたしは、お

          ショートショート「ご利用は計画的に」

          ショートショート「人間味ある」

           とっても腹ペコの宇宙人がこの惑星を訪ねてきた。 「ワガハイはとても腹が減っている。とにかく食べ物を持ってこい。さもなければお前らを食べてしまうぞ。」  とんでもないことになった。もはや人間同士で争っている場合ではない。全人類を総動員して、とにかく食材を集め、一流のシェフからファミレスの店員、主婦(または主夫)を呼び料理を大量につくってもらった。これを宇宙人に渡したところ、 「こんなもんじゃ全然足りない。他の宇宙人いわく、どうやら人間は美味しいらしいじゃないか。お前らを

          ショートショート「人間味ある」

          ショートショート「深爪」

           最近巷で変わった爪切りが流行っているらしい。何でも爪を切ると同時に、ネガティブな感情とも縁を切れるようだ。私の妻もどうやら購入したらしく、職場でのストレス解消のため愛用しているようだ。ついでに爪切りとしても質がいいみたいだ。  確かに機能は素晴らしい。誰だって思い悩む時はあるし、このストレス社会で精神的にダメージを抱えて生きている人も少なくない。そういったケースで対症療法として使い、心の傷を治療するのは素晴らしいことだろう。  ただ副作用が気になる。ネガティブな感情と共

          ショートショート「深爪」