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八条口、コンコース(4)
日曜の昼だ。当たり前に京都駅は人がごった返していたし、電車の中なんてぎゅうぎゅうのすし詰め状態だった。背の高い彼と時折目を合わせながら、揺られた。微笑み返されると、馬鹿みたいに頬が緩んでしまった。彼は私を愛おしそうに横目で見ていたのもわかっていたから。
「マーちゃん、なんかプレゼントさせてよ。」
「要らないよ、申し訳ないし」
奥さんに使ってあげなよ。
「いいから」
じゃあここ、といって私
八条口、コンコース⑶
朝が来てしまった。
目を覚ますと彼はニコニコと微笑んで私を見ていた。恥ずかしいことに、しっかり寝顔を見られていたらしい。私の目に映る彼は、もう出会った頃の彼ではなかったように思う。
知らなかった。好きで好きでたまらない人を見るとき、人はこんなに緊張するものなのか。
「ねぇ、ユウくんの奥さんってどんな人なの?」
彼は少々苦い顔をしたが、出会いから話してくれた。私とは性格が真逆といってもいいほ
八条口、コンコース⑵
【まーちゃん、もしかしたらだけどさ、今度京都に行けるかもしれないんだ!】
あれからというもの、毎日連絡を取り合っていた。彼はユウマさんといい、神奈川に住むごく普通のサラリーマンであった。26歳にして既に結婚3年目、次の初夏には3人家族になるらしい。
彼とはいろいろな話をした。趣味、好きなモノ、今までの恋愛、家族の話や自分の性格。あの日だけじゃ知り得なかったお互いについて1から補填しあった。