八条口、コンコース(4)
日曜の昼だ。当たり前に京都駅は人がごった返していたし、電車の中なんてぎゅうぎゅうのすし詰め状態だった。背の高い彼と時折目を合わせながら、揺られた。微笑み返されると、馬鹿みたいに頬が緩んでしまった。彼は私を愛おしそうに横目で見ていたのもわかっていたから。
「マーちゃん、なんかプレゼントさせてよ。」
「要らないよ、申し訳ないし」
奥さんに使ってあげなよ。
「いいから」
じゃあここ、といって私が入ったのは駅地下にある小さな雑貨屋さんだった。壁や棚に敷き詰められたピアスやイヤリング、指輪。
私は開けたてのピアスの穴に、彼の思い出で蓋をしたいとおもった。
「私の好みとか関係なく、ユウくんに選んで欲しいの。」
あんまりセンスが無いから知らないよ、っと言って彼は笑った。
「うん、じゃあこれにする!マーちゃんっぽい」
ピンクゴールドのパーツ、ハートの中に小さなストーン。
いくら安物だとしても、私にとってはどんなブランドのものより高く、希少な物に見えたのだ。
「あ、マーちゃんごめんね。そろそろ待ち合わせ時間だから八条口まで来いって言ってる」
本当はもう少し居たかったけれど、仕方がない。
「じゃあ一緒にいこう、送るね」
わたしも彼も、2人の時間が終わることをはっきりと理解したのだろう。
ふいに手を繋ぎ、私達は歩き出した。
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