梶井基次郎『檸檬』と、イカの水晶体
イカの眼球を潰して、水晶体を取り出した。
死体の中に美しい透明があるのが信じられなくて 確かめてみようと思った。
半信半疑で軽く力をかけてみたが、角膜は思ったより弾力があって押し戻される。しょうがないから無い力を一点に集約させたら、ブツっと鈍い音をたてて 破裂した。
指先を染める青い血液を気持ち悪いなと他人事のように思いながら、目的の透明を探した。
...
何度石鹸で洗っても、指先に染み付いた生臭さが取れなかったこと。その一点だけがショックだった。水晶体は見つかったけど、鈍っ