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梶井基次郎『檸檬』と、イカの水晶体

イカの眼球を潰して、水晶体を取り出した。
死体の中に美しい透明があるのが信じられなくて 確かめてみようと思った。
半信半疑で軽く力をかけてみたが、角膜は思ったより弾力があって押し戻される。しょうがないから無い力を一点に集約させたら、ブツっと鈍い音をたてて 破裂した。
指先を染める青い血液を気持ち悪いなと他人事のように思いながら、目的の透明を探した。
...
何度石鹸で洗っても、指先に染み付いた生臭さが取れなかったこと。その一点だけがショックだった。水晶体は見つかったけど、鈍った感情はちっとも動かなかった。ただ、その臭いだけが脳にやたらこびり付いたんだ。
梶井基次郎にとっての檸檬が、私はイカの水晶体だったのだろう。くすんだ気持ちを貫通してくるような、鮮やかな黄色に期待していた。こちらを照らさなくていいから、綺麗なものをただ見ていたかった。単純明快で新鮮なものに惹かれた。そういう純なものに、期待したかったんだろうね。
国語の時間で習った時、私だ!と思った。取り返しのつかないとこにいて、どうしようもなくて、救われたいけど救われようがなく。誰にも助けられないと思っている。
あの主人公は、確か持病があり、借金を背負っていた。当時の私も似たようなもんで、散々疲れていた。どうしようもないクズの主人公が恥ずかしく、気持ちが分かると公言した後にかなり後悔したけれど、習った次の日くらいには新品を買って、自宅の本棚に並べた。これは満足感を得るためではなく、自暴自棄な主人公を揶揄する為、これはいけない例だと自分を牽制する為だ。
...
自暴自棄は敵だった。側音化構音という母音iの音が発音できないのを言えるようになる為、間違った発声を治す為、私は自分をキツく縛り上げなければならなかった。発声はいい教室に恵まれ、比較的早くに何とかなったが、滑舌の問題は根深くてここに書ききれないほど無茶苦茶をした。初めは、滑舌なんて早口言葉を唱えれば治るものだと思っていた。けれど実際は違っていて、解法が存在しない茨の道だった。毎日ネットサーフィンし、専門書を読み漁り、ない人脈作って、己の身体で実験&取捨選択。最初は良かったけど、治る保証はどこにもなくて徐々に不安な日々。
許されない。甘えるな。時間がない。母音しか喋られないとか原始人じゃん。
強い言葉と思想で蓋をしなければ、やり抜けなくて意図的に自分を煽った。辛くても目を背けるな。いつからだろう。自分の影を殺してやりたかった。ガラスに映る自分が憎くて、鏡が大嫌いになった。意図的に扇動してたのが掻き消えて、本当に自分をぶっ壊したくなってた。心の生傷をナイフで抉るよーな自傷を繰り返した。
そして、イカの眼球を取り出した高二の冬。コロナの流行る少し前頃に、感情が薄くなった。
何を考えても思考が空転する感じで、心と頭がロープで縛られたみたいに動かない。そんな自分でクラスメイトと話せる自信がなくて、不登校を経験した。
それでもずっとお芝居がしたかったから、強い執着で半ばロボットみたいになりながら乗り越えて、主人公と遠くなった。捧げた年月は、2年と少し。持つ力を全て使い散らかして、めいいっぱいの時間を生贄に何とかした。
今でも読みたくなることはあるけれど、あの頃ほどは入れ込めない。

.𝙉𝙚𝙭𝙩⇝
高3の進路選択の時期、矯正中にその進路は搾取されるだけと直談判で知り合ったナレーターに止められて悩んだが、熱血な担任に説得され、芝居を選びとった。
いざ入ったら、後悔なんて少しもなくて、皆でお芝居出来るのが楽しかった。尊敬する何人ものプロから多種多様な芝居アプローチを聞くと脳内麻薬が出て、心が熱くたぎった。
だけど刹那の欲求を満たすのを繰り返す内に、時は過ぎて、いつしかただの学生のポジションに滞留してしまった。
昨年の冬頃から、楽しいばかりで捨て身になりきれていない自分が嫌で情けなかったけど、親から養育費の貯金を受け取ったのをきっかけに、このまんま東京に行ったらだめだと強く思った。
いま次に進まないといけない波が来たと思う。
わたしは、お芝居を筆頭として、歌、絵画、漫画、演奏...etc. エモーショナルなエンタメがすき。
ステージが好きで、イベントが好き。
ポジションよりも、この愛を還元することを優先したい。
これが「仕事」に求める軸だ。

役者という生き物を知りたい、芝居が何で出来ているのか知りたい。好奇心ばっかり先行して、いまいち職業に繋がらないまま来てしまったけど...間に合うかな?

脳使って幾つもパターン出して、足で情報集めて、ぜんぶ試して取捨選択。頭が...疲れる笑 呆れるほど、やること変わってないし、皆はもっと楽に出来るのかもしれないけど、どうにも不器用でだめね。

だけど、もう、ないものを埋めなくていい。
あるものを増やすに切り替わったんだ。
そこが違う。幸福なことだと思う。

涙の数だけ強くなれる だとか、
散々などん底を経験したら他人に優しくなれる と言うけど、わたしは違う。
絶対に過去の自分に言わないことをペラっと言ってしまいそうで怖い。(実際言った)(ごめん)
.そもそも、あの時の私は優しくして欲しくなんかなかった。もっと頑張れるよってエールが欲しかったんだ。

ここは文章上で、私から貴方は見えず、無責任に言葉を伝えられるからこそ、

貴方の幸福を貫けと、言いたい。
優しい言葉が欲しい派には、もしかしてきちぃかもしんないけど、
わたしは貴方が望む形がなんであれ 肯定 したいな。

貴方の幸福を肯定します。




〜〜〜これは文章に入らなかった余談〜〜〜

本当の意味で私の檸檬になってくれたのは、アールグレイというお茶だった。光を受けてキラキラする水色と、鼻をつくベルガモットの香りを美しいと思った。
あの頃に入れた紅茶の知識が、今は日本茶屋のバイトで役立っている。不思議なものだね。


一人芝居をずっと、家でやってる女でした(こわい)
笑 小学生の時から音読やまる読みが好きで、
感情を込めたり、スラスラ読むのは得意なことであったから、だから、滑舌変になったのは取り柄が消えたみたいでつらかった。


コンプレックスを攻略するのに
リアルに何やったか備忘録⤵️

・中学1年生 自分の声が好きじゃなかった。当時所属していた合唱団でソプラノを歌っていたのだけれど、周りの子は女の子らしくて可愛い声ばかりだった。それが羨ましくて、普段から高めの音域を使えば声が高くなるんじゃないかと思いつく。止めときゃ良かったのに、家でも外でも徹底的に実践してしまった。
結果、人体は思ったより脆弱で、2週間くらいかな?で発声が変わり、声は高くなった。
けれど、喉を触ると分かる。喋る度に、喉仏が高く上がる癖がついてしまった。低い声が出なくなるが、本人それにも気づいていない。愚かすぎるぴえん

・高校1年生〜 劇団に入ったことをきっかけに、使える音域の狭さで表現は疎か、歌えないことに気づく。YouTubeを参考に自主練を積んでみる。Twitterで知り合った人から紹介されたイギリスの発声の機械を使い続けた結果、肺活量が増えた(笑)
オーキャンで思いつきで手を挙げ、質問。
自主練だけで治せないとアドバイスをもらう。
それからはネットサーフィンの日々。歌を教えるボイストレーナーは多くても、話し声を見てくれる教室は少ない。体験を受けまくってみる。アニメ声を肯定されることの方が多くて、ボイトレ教室ジプシーに。

・高校2年生〜 ナレーターや劇団員、教師や医者に発声そのものを教えると謳う教室をとうとう見つける。親戚にお金を出してくれないかなど交渉。紆余曲折してかくかくしかじかで、発声はマシになった。
でも次に、待ち受けていたのは乱れた滑舌で...こいつがしんどかった。当時、母音 iの音は全て発音出来なかった。例えば「ち」が言えない。情けなくてつらくて、毎日泣いた。小学生の時は音読が得意で、まる読みが大好きだったのに。発声を歪めた代償か?でか過ぎないか?通っているボイストレーナーの教えは口を大きく母音の音を作るというもので、少々古い。何より律儀に実践するご本人の滑舌が悪いのが気になった。ボイトレ教室は続けながら、自分にフィットした滑舌改善法を手当り次第探す生活。この頃に発声と滑舌に関する本を読み漁る。

YouTubeで情報発信していた滑舌トレーナーのレッスンをzoomで受けてみることに。別の親戚を説得。毎日4時間、鏡の前で稽古した。習った発音が不自然で相談するも、間違った音に耳が慣れているからだとか、やり込めばスムーズに口が動くようになると言われる。半年やりこんだけど、良くなる気配が少しも感じられない。とてもじゃないけど喋られたもんじゃない。発音もリアルの人に変だと言われたのが決定打になり、辞める。

頼みの綱がなくなり、舌の筋トレを過剰にやり込み、舌小帯(舌の裏のピロピロしたとこ)を切りまくる。母音と子音ごとに正しい舌の位置があることを本で知っていたのでやりまくる。
が、うまくいかず。この辺で感情喪失。学校に行く時間が惜しいと思い始める。
駅で言語聴覚士と何やら気になるワードをみつける。この頃学校行かなくなりだす。
不登校を利用し、市のセラピーに出向き、言語聴覚士の紹介状を強請り、辿り着くが言葉が通じるので大丈夫と言われてしまう。そういうことじゃないんだと憤る。

・高校3年生〜 とある滑舌本を出していたフリーのナレーターのホームページにメールフォームをみつけた。プロしか教えないと書かれていたが、頼みの綱がないので、素人だが教えてくれと直談判。運良く返事をもらえて、1回だけならとzoomで状態を見てもらえることになった。(まさに蜘蛛の糸!有り難すぎる...!)
口内の写真などメールで送信し、結果、悪さしていたのはディープバイトだと、歯並びのせいで発音できないのだと言われ、オススメの歯医者を教えてもらった。しかしそこは東京の歯医者だったので、その東京の歯医者の院長先生に電話し、関西圏でインビザライン矯正に強い先生を教えてもらった。

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