2021年ベスト展覧会[評判分析](4/5) 梅津庸一 日本美術の夢を継ぐという覚悟とロマン 【梅津庸一展 ポリネーター】ワタリウム美術館

年間の便りから抜書して、【2021年展覧会ベスト5】をはじめてnoteに転載。

2021年は現代美術の展覧会へ97個。
当記事は2021年12月21日に作成しました。詳しくは各館HPへ)
今年も個人偏見を避けようと周囲の評価やインターネット評判も集めて合計点で合算制。とはいっても個人の域でございます 
心做し公平でありたいとはじめたレビューを笑覧ください。
具には【評価基準】をご照覧ください。

【評価基準】
  30年近く美術業界に。一角の学会と美術館に非常勤勤務 原文同一性研究(このような分野)から最近はジェンダーハラスメント・フェミニズム研究に傾倒 素人のデータ分析の一環として挑んでおります
<持ち点25点>

旦那 ニューヨークの美術館で長く勤務のアメリカ人 現在引退 我が家では現代の絵画解説係 
<持ち点25点> 

夫婦が出会った美術関係者の会での評判
<持ち点15点> 

インターネット、雑誌、新聞の評判
<持ち点35点> 
雑誌と新聞は可能な範囲で追いかけました。
インターネットはツイッターとインスタグラムを手動で統計 インスタグラムが5倍以上多い傾向、それ以上か。年々差がついています。統計とありますもののキャプチャーは拒否される方がおりますのでしていません、悪しからず。

◇今年の研究特記
アナザーエナジーの記事で書きましたが、インターネットを調べていると美術展には稀に、嫉妬、怒りの意見が見られます。展覧会は公的なものとしてコレ自体はいいものの、ほとんどが20~40代男性に集中しているという、ジェンダー研究の端くれとしては関心を寄せるべきサンプルがみられました。専門家でもまれに。関係する会でも会長不祥事があったところ。

これ、私はヘイトの源泉と睨みます。
妬み怒りで中身はからっぽな文章。本題(≒作品)と向き合えていないという特徴も多い。これも他分野のヘイト傾向と似るんですね。ジェンダー意識の研究素材として、収集中。発表場所を模索中です。便り読者の方々、あなたは大丈夫ですか。そうなっていませんか?

そして我々親世代の皆皆様。写真映え、流行りという感想は、頭の悪さを露呈してしまいますよ、注意しましょう。


【写真について】

写真はなしで統一。(昔トラブル体験者)
写真拝見は其々の美術館サイトと、noteの皆さんの感想、
150以上の展覧会の画像ありレビュー集(これはすごいこと!)のアートテラー・とに~さんのblogを推奨いたします。
あまねく分野の展覧会のレビュー画像掲載ありです。
noteの画像量に驚き、転載をトライしたのでした。

ネタバレ防止で作品解説少なめ。個人の感想多めです。
筆が進みやすかった順に順不同。

梅津庸一氏、愛知県美術館「未遂の花粉」や美術手帳でも監修をされていて、URANOギャラリー所属の作家で、結構知名度があると感じていましたよ。
いろいろ考え、最も長いレビューになりそうです。(追記:唯一6000文字超えの記事に)

フロレアルシリーズ、森村泰昌のような(ここでわたくし取り上げています)ことで興味。周りの美術関係の人々の評判高く、早めにいったのでした。わたくしもいつしかARATANIURANO時代で拝見しています。これはほかの展示とことなり、メジャー館ではないのですが、雑誌やインターネットでは評判よい様子です。アディショナルで、ランクイン。

ワタリウムの場合館長担当のはずですが、梅津氏キュレーションに思いましたよ。

インターネットでは「良い意味で悪夢のような空間が最高」「いろいろ衝撃的」「3階にひらける新しい世界が圧巻」「3階にひらける新しい世界が圧巻」など好評の意見で溢れています。

↑こちらのレビューわかりやすいです。

近年の現代アーティストの中で、梅津庸一ほどその活動全域を把握しづらい作家はいない。細密画のようなドローイングや点描画のような絵画作品、自身を素材としたパフォーマンス映像、陶芸作品から、キュレーション、非営利ギャラリー運営など、その領域は多岐にわたっている。本展は2004年から2021年までの作品を梅津自身がキュレーションしていくが、回顧展ではない。

タイトルにある「ポリネーター」は植物の花粉を運んで受粉させる媒介者という意味をもち、梅津自身の立ち位置をたとえて選んだ言葉だ。繊細でフラジャイルなものということで、アートと花粉は似ているかもしれない。それを世界中に広げていく。実際この2年、私たちの世界は微細なウィルスによって麻痺に追い込まれ、新たな扉を開かざるえない状況に来ていることを考えれば、花粉のようなアートが世界を席巻しても決しておかしくはない。
  実は、ワタリウム美術館も「花粉」との縁が深い。1990年開催の第一回展「ライトシード」では、ゲスト・キュレイター、ハラルド・ゼーマンが目の覚めるような黄色のたんぽぽの花粉(ヴォルフガング・ライプの作品)を真新しいワタリウム美術館のフロアに敷き詰めた。日本の現代美術にとってそれは衝撃的な出来事だった。

  梅津は言う、「美術とはなにか。そして芸術の有用性や公共性とはなにか。それはわかりやすい希望やとっつきやすいビジョンの提示にあるのではなく、一見すると有用性や公共性など感じられないほど入り組んだ悪い夢のような世界にこそ存在する」と語っている。いつも梅津の作品は悪い夢のようでいて、とてもロマンチックなポエムのような空間を有している。本展ではさらに次のステージへと移り、楽しみな未知の空間となるはずだ。

【私の感想】
日本美術を背負う覚悟を感じましたよ、大きく揺さぶり動きました。数百点の点数も圧倒。
日本美術の円循環の、終点が見えたように思いましたよ。
愛知県美術館の「未遂の花粉」でも、接続が中心にある作家さんだと思いました。居心地の良い悪夢ってあります。
ロマン、羞恥、トラウマ。

それとできるならばポーラ美術館の「ラファエル・コランと黒田清輝―120年目の邂逅」と合わせてみてください

黒田清輝、森村泰昌に続く脈々と続くオマージュ・開きなおりの日本文化がよくわかります。

たくさん思いますが、悪い夢は、椹木氏の悪い場所を引き継ごうとしているはず。展示の方法もチープな印象を意識してるよね。ワタリウムでは同年代の個展も拝見したが、群を抜いて良い展示ですよ。美術に対してのメッセージは私も共感しますよ。有用性や明瞭性はないのです。

注文は、陶器の彫刻は数が少なかったら、よく思うのか、よくなく思うのか。ジャムの映像は今後どうやって位置づけていくのか。一つの作品で良くみえるタイプではない可能性もありますでが、すっきりしたものも見たかった。友人とも同じ意見になりましたよ。愛知県美術館でも三越コンテンポラリーギャラリーでも混み気味の展示が多かったので。

悪い場所
・1998年に刊行された、美術評論家の椹木野衣の主著。日本の戦後美術の歴史を時系列に沿って記述するのではなく、現在の視点から過去に向けて遡行することによって逆説的にその全体像をとらえた。その中心的な概念である「悪い場所」とともに、90年代後半以後の現代アートの批評的なトピックとなっている。椹木によれば、日本の戦後美術は、絶えず同じ問題が反復的に立ち現われるがゆえに、その歴史を「通史」としてまとめることが難しい。この閉ざされた円環の非歴史性を、椹木は「悪い場所」と呼んだ。戦後日本の経済成長と平和は、第二次世界大戦の敗戦以後、冷戦構造に組み込まれた反面、世界史から隔絶されたことに由来しているが、戦後美術もこの暴力と無縁ではない。にもかかわらず、これを忘却することによって戦後美術は成立したと椹木はいう。椹木の主張は、閉ざされた円環の彼方を新たな暴力によって押し開くのではなく、その存在を認識し、それに規定された生存様式を受け入れることにある。

https://artscape.jp/artword/index.php/『日本・現代・美術』椹木野衣


【旦那】
「センスあるよね。まじめで勉強好きでもアンニュイ、好感。そのかわり、ニューヨークには似た作風のアーチスト、実はたくさんいる。美術館の文章も気になった。いないと書いているけど、たくさんいる。グローバルじゃなくてドメスティックな像が彼には向いている。それも狙い通りだと思う。そうだとすれば良い」

と言いながら1時間はいた旦那。興味津々の証拠です。


【美術関係者】
高評価。彼、以前から根強い人気があって、楽しみに大型個展を待っていた人多いはず。
三越コンテンポラリーギャラリーの一件で血気盛んな人だと思いましたけど、ロマンチストに感じましたよ。ANOMARY、期間限定だと聞いたので、スペースが変わるのが楽しみです。

これも仲間内で盛り上がりましたけど、アーティストとして生きるとはを知るためにおすすめ。
直前に一緒にTERADA ART AWARDにいったのですが

彼らと近い年代が合同で行っていた展示なのではっきり書きますが、それと比するとこの梅津展は別格です。もちろん他のベスト展覧会も別次元なのですが。

学生さんは、比較するといいと思います。寺田のアーティストさんたちは、みなさんのスタイルが流行りからはじまっている。見栄えはいいけど。これは実際に見たらすぐにわかると思いますよ。

【インターネット、雑誌、新聞の評価】
👍85% GOOD
この展覧会、メジャーな展覧会ではないんですが、評判いいようにみえます。彼の知り合い多いのか~という雰囲気もありますがそれはそれ。男性と、若い女性がいい評価なのかな?

数字について
インターネットはツイッターとインスタグラムを手動で統計 漏れもありますが今年もがんばりましたよ。インスタグラムが3〜5倍以上多い傾向、それ以上か。年々差がついています。詳細はこちらに書きました


展示やトーク相手を見ると、意外とポップ層に訴えかけた気配。

わからなかったという意見もありましたが、現代美術は解ろうとしなくていいのです。わからなかったのはなぜかを書いたほうが為になるのではないでしょうか。

ワタリウムはJRのときに、知名度を広げましたね。JR展の写真、インスタグラムでもまだでてきます。
ワタリウムさんは本当に頑張っている。応援していますよ。

こういうこともされております、みなさまも是非に。

わたくしたちも小さい力ですが支援しましたよ。

案の定最長のレビューに。ようやく半分。コピーとペーストするだけ。でも体力使います。

展示期間は2022.1.16(日)まで。


梅津庸一
(1982年山形県生まれ、神奈川県在住)
梅津は東京造形大学絵画科卒業後、ラファエル・コラン (1850-1916年) の代表作「フロレアル」を自らの裸像に置き換えた「フロレアル (わたし)」(2004-2007年)でデビュー。 また、2014年には黒田清輝の「智・感・情」(1897-1900年)をアップデートした、四枚の絵画により構成される「智・感・情・A」を発表、その後、フェルディナント・ホドラーの「昼」(1900年)を下敷きにした、幅3mを超える大作「昼(東洋のわたし)」(2015年)を発表するなど、日本における近代美術の展開とその末尾に位置する自分自身の関係を探求し続けている。また2014年からは、美術教育と美術運動の歴史を生き直すべく美術共同体「パープルーム」を主宰し、黒田清輝を中心に発足した天真道場等の画塾から現代の美術予備校および芸術大学にいたる、美術と教育、共同体の在り方について、実践を通して批評考察する。近年の主な展覧会として愛知県美術館個展企画ARCHでの個展「未遂の花粉」(2017年)など。また、「恋せよ乙女!パープルーム大学と梅津庸一の構想画」(2017年・ワタリウム美術館)、「瀬戸内国際芸術祭」(2016年・女木島)など、梅津個人としてだけでなくパープルームとしても全国各地で展覧会に参加している。

◇ 
トークが面白いですよ。ここで聞けます。

プロフィール
新藤淳
1982年生まれ。美術史、美術批評。国立西洋美術館主任研究員。共著書に『版画の写像学』(ありな書房)、『ラムからマトン』(アートダイバー)、『ウィーン 総合芸術に宿る夢』(竹林舎)など。展覧会企画(共同キュレーションを含む)に「かたちは、うつる」(2009年)、「フェルディナント・ホドラー展」(2014-15年)、「No Museum, No Life?―これからの美術館事典」(2015年)、「クラーナハ展―500年後の誘惑」(2016-17年)、特別展示「リヒター|クールベ」(2018-19年)、「山形で考える西洋美術|高岡で考える西洋美術――〈ここ〉と〈遠く〉が触れるとき」(2021年)など。

杉戸洋
美術家。主な個展に「FOCUS」(フォートワース現代美術館、2006)、「天上の下地 prime and foundation」(宮城県美術館、2015)、「frame and refrain」(ベルナール・ビュフェ美術館、2015)、「こっぱとあまつぶ」 (豊田市美術館、2016)、「杉戸洋 とんぼ と のりしろ」(東京都美術館、2017)など。

和田彩花
1994年8月1日生まれ。群馬県出身。アイドル。2009年4月アイドルグループ「スマイレージ」(後に「アンジュルム」に改名)の初期メンバーに選出。リーダーに就任。2010年5月「夢見る15歳」でメジャーデビューを果たし、同年「第52回日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2019年6月18日をもって、アンジュルム、およびHello! Projectを卒業。アイドル活動を続ける傍ら、大学院でも学んだ美術にも強い関心を寄せる。 特技は美術について話すこと。特に好きな画家は、エドゥアール・マネ。好きな作品は《菫の花束をつけたベルト・モリゾ》。特に好きな(得意な)美術の分野は、西洋近代絵画、現代美術、仏像。趣味は美術に触れること。



2021年展覧会ベスト5

◇傑作。アメリカ超重要作家の個展、絶対に見てほしい 【ロニ・ホーン:水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?】 ポーラ美術館

森美術館で最高のグループ展【アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人】森美術館

若き日の伝説の展覧会になるでしょう【ユージーン・スタジオ 新しい海 EUGEN STUDIO AFTER THE RAINBOW】東京都現代美術館

日本美術の夢を継ぐものの覚悟とロマンの【梅津庸一展 ポリネーター】ワタリウム美術館

天才とはこの人のこと。彫刻の底力 【マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在】 東京都現代美術館

次点
◇ジャム・セッション 石橋財団コレクション×森村泰昌 M式「海の幸」ー森村泰昌 ワタシガタリの神話 アーティゾン美術館
◇イサム・ノグチ 発見の道 Isamu Noguchi: Ways of Discovery 東京都美術館
◇石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか 東京都現代美術館
◇イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜  三菱一号館美術館

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