ウェブ解析士、ディレクター、マーケターなら知っておきたい Google Analytics の罠
1st. note です。
仕事で「何度かこの話したな」と思った話をアウトプットすることにしました。「これ読んどいてください」で済めば業務効率化につながるし、それが誰かの役に立てば尚良しと思って。
今回は、Google Analytics(以下GA)の罠というか仕様をまとめました。
※ほかにもハマりがちな罠があったら追加していきます。
1. セッションの罠
まずはセッションのタイムアウトについて。
デフォルトでは、セッションは30分間何も操作がないと切れます。「画面そのまま放ったらかしてたらセッションが切れる」のは誰でもイメージできると思いますが、そうじゃないケースもあるのが罠。
「何も操作がない」というのは、ちょっと曖昧な表現なんです。
具体例を挙げると、
・マウスカーソルを動かし続けて30分経過した。・スクロールし続けて30分経過した。・サイトに埋め込んである動画を視聴し続けて30分経過した。
これ、操作はしてるけどすべてタイムアウト!
だから「何も操作がない」わけじゃなく、厳密には「30分間GAに対して何の情報送信もなされなかった場合にセッションが切れる」ということなんです。
「デフォルトでは」と強調して書いているからにはそうでないケースがあるわけですが、JavaScriptを使えば上記のような操作もトラッキングできます。いわゆるイベントトラッキング。
たとえば「各ページのスクロール量をトラッキングして読了率を測る」イベントトラッキングを仕込めば、スクロールに応じてGAに情報が送信されるため、タイムアウトしづらくなります。(タイムアウトさせないために実装するのは辞めましょう)
他に、「リンク以外のクリックも全てトラッキングする」なんて方法も考えられますが、無意味にトラッキングするのは辞めましょう。
ここで理解していただきたいのは「イベントトラッキングなど独自拡張設定を使用している場合、セッションのタイムアウト条件が変わる」ということです。
なお、30分以上の無操作状態が頻繁に起こるサイトの場合は、いっそ設定を変えてしまった方がリアルな数値が取れます。「主なコンテンツが再生時間の長い動画」とか、「1ページ読み終わるのに30分以上かかるLP」とか。
セッションタイムは最小1分~最大4時間まで、1分刻みで任意に設定できます。手順はアナリティクスヘルプを参照。
それから、忘れてはいけない仕様として「日にちをまたぐとセッションタイムアウト」があります(※セッション設定と違って変更できません)。
主なアクセスが深夜帯に集中するようなサイトは、<セッション/ユーザー>の値が実際の倍になっている可能性もあり、注意が必要です。
2. ユーザー数の罠
GAのユーザー数は、厳密には「ブラウザ数」です。
同じPCであっても、Chrome、Safari、FireFox からアクセスした場合、ユーザー数は「3」とカウントされます。もちろん、デバイスが異なる場合も同様で、PCサイト閲覧者がその続きをMobileで見たとしても、ユーザー数は「2」とカウントされます。
「GAのユーザー数と実際のユーザー数は異なる」これが、ユーザー数の罠です。必ず頭に入れておきましょう。
ちなみに、GAにはユーザー数と実際のユーザー数を近づけるための「クロスデバイストラッキング」機能があります。デバイスが変わっても変わらない情報(ログインIDなど)をもとに、同一ユーザーかどうかを判別する仕組みです。
以前は「ログインを必要とするサイト」が前提で、かつ「ログインIDをGAに送る実装」が必要でしたが、いまはGoogleアカウントのログインを利用して、簡単にクロスデバイスレポートを表示できます。
GAで Google シグナルを有効にするだけで、
・複数デバイスによる重なり・デバイス経路(PCで閲覧後にMobileで閲覧しているユーザー数など)
などが分かります。(設定方法はアナリティクスヘルプを参照)
ご注意いただきたいのは、クロスデバイスレポートはβ版であり、Googleアカウントへのログインが判断基準になっているという点。
あくまで、ユーザー数と実際のユーザー数を近づけて把握するためのレポートです。実際のユーザー数を完璧に取るのは不可能です。
3. 滞在時間の罠
GAの数ある指標の中で最もあてにならないのが滞在時間です。なぜなら、「GAは離脱したタイミングを計測できないから」です。
具体的に見てみましょう。
(1)ページ「A」を閲覧……10分読んでページBへ遷移(2)ページ「B」を閲覧……15分読んでページCへ遷移(3)ページ「C」を閲覧……20分読んでブラウザを閉じる
このユーザーの実際の滞在時間は45分ですが、GAに計測される時間は25分です。はい。この時点でかなり当てにならないことがお分かりいただけるかと思います。GAは仕様上、トラッキングコードを設置したページ間しか時間を計測できません。
上記はセッション単位での話ですが、「平均ページ滞在時間」となるとより悲惨です。上記ユーザーに当てはめると、
・ページ「A」……10分・ページ「B」……15分・ページ「C」……0分
ですから。
本当はページ「C」の閲覧時間が一番長いのにもかかわらず。
(しかも、平均ページ滞在時間の計算式は、母数に直帰は含めるけど離脱は含めないというややこしい仕様。ここに詳しくは書きませんが)
ちなみに、本気で滞在時間を取りたいなら、Google Tag Manager(GTM)を駆使して、「一定時間ごとに経過滞在時間を記録して送信する」方法があります。デフォの機能よりも優れた(リアルにより近い)値が取れるでしょう。
とにかくデフォの滞在時間は絶対値として当てにならないので、ご注意ください。どうしても時間的な評価をしたい場合は、相対的な指標として扱いましょう。
4. レポート精度の罠
僕がよく作るレポートは「13ヶ月間の各指標推移を俯瞰して把握できるレポート」なんですが、結構な頻度で精度の罠に引っかかります。
これですね。
「ユーザー サマリー」と書いてある右横のアイコン。この盾アイコンが黄色になっているとき、表示される数値は正確なデータではなくサンプリングデータです。※100%のセッションに基づいている場合は緑色です。
アイコンですぐ分かるGAならまだしも、スプレッドシートや Google データポータルとの連携で間接的にGAを見ている場合は気づかない可能性が高いです。時折、本家のGAをチェックしてください。
セッションやPVであればそれこそ誤差で済むかもしれませんが、問題はCV数……特にCV単価が高額な場合は1件の誤差が大きいですから、注意しましょう。
ということで以上です。
「4. レポート精度の罠」は、1~3で紹介してきた罠と違って単純に「ご注意ください」で終わりです(笑)締まらない感じで申し訳ないのですが、データが正確かどうかを疑うことは非常に重要です。
なお、無料版GAだとサンプリングのしきい値は「選択した期間でプロパティ単位のセッション数が50万件以上」ですが、有料版GA(アナリティクス360)だと「選択した期間でビュー単位のセッション数が1億件以上」と、大幅に上限が開放されます。(詳しくはアナリティクスヘルプを参照)
有料版GAは高額ですので、資本力のある大規模なサイトでないとなかなか導入できません。無料の場合はサンプリングに気をつけながら活用しましょう。
現場からは以上です。
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