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ぺけぽん
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2020年8月の記事一覧

王さまの本棚 まえがき

35歳の誕生日(2020年8月8日)周辺にTwitterで、favのついた数だけ本を紹介するよ!という企画を行ないました。そのとき112冊ノックした本について、王さまの本棚と題して、1tweet1noteにまとめていきます。 Twitterでは砕けた、というかむしろ溶けた文体も使い放題なので、やりやすかったのですが、noteとなるとそうはいきません。ええと、がんばります。 始めるにあたって、少し、まえがきを。 生まれたときから、わたしのそばにはたくさんの本がありました。

なんのために、きみは計算する

人が集団で生活する限り、なにに対しても評価はついてまわる。仕事、家事、育児、勉強、人間関係。ものを書くのだってそう。コンテストに通るか。いいねがいくつ付くか。 評価を気にすべき、目標にすべきという立場があるのはわかるし、それをどうこう言うつもりは全くない。ただ私は、評価を気にしながら何かに集中したり、何かに魂を込めたりする方法を知らない。 * 以前、私は個別指導塾の講師のアルバイトをしていた。生徒は、下は5歳から、上は17歳まで。そのとき出会った5歳の男の子Aくんは、や

偽物のほうき星【連作短歌】

彗星のきたみち指でなぞったらたどり着いたのあなたのほおに 詞も知らず曲の名前も分からずにどれみで歌う初見の熱を より暗くもっと光のない場所でだけ輝くのみどりのあなたは 決められた二文字の定義ほくそ笑み私はすくう彼の吐物を 映らない映らないって駄々をこね黒い瞳を食もうと口を 錆びついてちぎれたチェーン自転車を蹴っては睨み夜気を仰いで ちかちかと流れるひかり飛行機と気づいてひとりくちびる噛んで 人工の光にすべて呑まれてくその明滅も汗も命も ガス管をくわえて死んだ人

ライブハウス支援グッズを作って

つくるのは、たのしい。 ライブハウス支援グッズの中のひとつであるTシャツの「ロゴ」を制作して、私は改めて感じました。 だれかのためにつくるのは、たのしい。 自分のクリエイティブの力を信じてグッズ制作に携わらせていただけたこと。私にもできることがあるんだと、デザインを学んできて、デザイナーとして働いてきて本当に良かったと思えた瞬間でもありました。 *** 私はライブハウスが大好きです。 好きなバンドのライブを見に行くうちに、ライブハウスに足を運ぶ瞬間や、着いたときの

グラスの音は時を超えて

キンとグラスを合わせる音が、ぼくらをあの日に連れていく。 お酒を飲むようになって10年余り。仕事でプライベートで、それなりの回数の盃を交わしてきた。浴びるように安酒を飲んだことも、おそるおそる高級酒を口につけたこともある。 景色ゆらぐ居酒屋の座敷、後ろのテーブル席の会話が気になる行きつけのカウンター、思いつきで友人と夜な夜な集まる近所の公園。ときには、誰にも(妻を除く)咎められない家のリビングで。 そこに、いつも乾杯があった。喧噪を切り裂くようなそれも、心の内を確かめ合

死にたい、の最適解について

とあるウイルスのおかげでしばらく休校になっていて、学校に行かずに済んでいた。なのに、ゆるゆると学校が始まって、いつのまにか通常営業に戻っていた。典型的ないじめを受けている僕は、夏休みの終わりを目前にして、仕方なく、そして、必然的に「死」と向き合うことになった。 だからといって、首をつれそうなロープを用意する、とか、毒を入手するとかそんなことは当然できるはずもなくて、ネットで「楽な死に方」を探しながら、夜勤中の母の顔を頭に浮かべるだけだ。 ふと、なんとなく、おもむろに、広告

誰かに決められた「素直でいい子」になんかならないで

あなたは「素直でいい子」って、言われたことがありますか? もしくは「あなたは素直じゃない」とか、「もっと素直になりなさい」と言われたことはありますか? この記事はそのどちらかを言われたことがあったり、「素直ないい子」にならなきゃ、ないりたいと思っている人に向けて書きます。 具体的には、10代の「素直でいい子」でいなきゃと思っていた頃の自分や、同じように思っていた友人、今でもそれに少し縛られている僕のパートナーに言いたいことをまとめています。 良かったら、外も暑いので涼し

今月のイチオシnoteクリエーターズ(2020年8月)

ヤマシタマサトシさんが2020年4月まで続けていた「月末恒例、勝手にオススメのnoteクリエーターを表彰して褒め称えて1000円サポートするコーナー!!!」をご存知ですか? コロナ禍の深刻化とともにnote/twitterとも停止されているヤマシタ兄貴の復帰を心待ちにしつつ、「留守の間にこんなに素敵な人いたよ」というメッセージを込めて、《候補出し》までしておこうと思います。 ・note内で初めて知った人 ・noteでのフォロワー数が1000人未満 ※twitter側のフォ

死にたいくらいの苦痛に支配された時に読む自分へのメモ #もう眠感想

このnoteは、西智弘さんが主催する、著書『だから、もう眠らせてほしい』の感想文公募企画 #もう眠感想 参加記事です。 幸い、私はこれまで大きな病気をしたことがない。去年、左足首の捻挫でひどい目にあったくらいで、入院したこともない。祖母が癌で逝ったときは7歳ぐらいで、お見舞いに行った記憶もない。死に瀕した身近な人と間近で接したことがない。 だから、「苦痛の先にある死」を考えるのはとても遠いことなのだけれど、むしろ冷静な今のうちに、「いざという時のこと」と考えて言語化してお

結局文章は世間に出したらもう読み手のものだけど、仲さんに解説してもらったからちょっと私も解説しちゃおうかしら

先日、 note &ツイッタ仲間の仲さんがこんな noteを書いてくれました。 すごい。記事の中身、まるまるクニnoteについて書いてあります。ココまで解説&分析できるほど読んでもらえるなんて、幸せです。 元のクニnoteはこちらです。 仲さんの今回のnoteの発端は、おそらくこのツイート。 上記のアイスキャンディー記事のシェアをしてくれたのですが、固いよねえ表現。事象と視点が入り混じるって、いやわかるけど、わかるけどねってことで、戯れで何言ってるかさっっっっぱりわ

エモーショナルな夜明けが見せてくれた音楽との未来

午前3時40分、目覚ましが鳴る。 子どもたちを起こさないようにそーっとベッドを抜け出した。2階の寝室からリビングまで忍び足で階段を降りる。 しん、と静まったリビングは主役不在のステージのようだ。眠気覚ましに淹れたコーヒーのコポコポコポという音が緊張を溶かしていく。 10分前。YouTubeから届いたメールを確認して、テレビ内蔵のアプリをオンにした。 「ELLEGARDEN_OFFICIAL はライブ配信中です」 ソファに浅く腰掛けて、ブランケットをそばに寄せた。まだ静

200枚のポストカードと駆け抜けた2020年の冬、春、そして夏(全カード集合写真付き)

私は学生時代の頃からポストカードを収集するのが好きで、連れ帰ったそれらを大事にそっとしまっていました。昨年のある日、ふと思いついて数えたらなんと仰天、600枚くらいある。 それらを見つめながら、息を吐きました。なんだか彼らが死蔵されている状態がひどくもったいなく思えたのです。そこからあれこれ考えた末、ぱらぱらと200枚のポストカードを選び、今年の初めからこんな投稿を始めました。 ポストカードから連想されうるテーマを決め、ミニエッセイを書く。文章の分量は自由。1日1枚のカー

交差点

交差点の一角に立ち、煌々と光る真っ赤な人型を恨めしく見ていた。 その横に点滅する目盛りの数は、まだまだ青信号にならないことを意味している。 あともう少しで受付時刻を迎える小児科は、この横断歩道を渡ったすぐ目の前にあるというのに、この距離を今すぐ縮めることを社会のルールは赦してくれない。 はぁ、と交差点の角に苛立ちを吐き落とした時だった。 目の前のその病院の正面入口が開き、よたよたと半ば足の機能していない女性が、男性に支えられて出てきた。歳は私とさほど変わらない。三十代だろう

「面白い」は、一人の頭の中でつくらなくていい。 分業制で書いたnoteが本に載った話

いつか本に自分の関わった文章を載せたい。 そんな夢が、唐突に叶った。 いや、正確には著者として名前が載った訳でもないのだけど。 本当に唐突にその機会が来てしまった。 出版とは程遠い文具屋の私が、編集として関わった文章が、本当に意外な形で本に載ったのである。 それは、noteの人気クリエイターである、岸田奈美さんが開催した「キナリ杯」がきっかけ。 キナリ杯は、新型コロナウイルスの影響で、政府が緊急経済対策として国民に定額給付した10万円。 それを元手に賞金を用意し、面白い文