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文を書いたり文を読んだり。 世界を解釈してみよう。

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    トキノツムギB面本編

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    詩というほどでもない一言と写真。

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    トキがツムガれた世界へ

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詩のような冒頭文

僕たちは 溢れる文字に 切られ 揺らされ 溺れ 窒息し それでも 飲み込み 刻み込み 囲い込み 獲りにゆく 文を掴み 文を産み出す 世界を解釈するために

    • ヒトツタツ

      心に文字を積もらせて 不器用にハンドルを回し カプセル入りの文字を カタンコトンと落とす 文字だけを取り出して 空のカプセルをポイポイと放り投げれば 透明度の低い山が僕の周りに聳え 僕を消した 僕の五感の塵芥が積もり積もる その奥底にまどろむ僕は いつかここに一本の墓標を建てられることを 望みもし、恐怖もした

      • ミルクティーみたいな空

        僕は1日の中に溶け 跡形もなくなったそうだ 君が好きだった僕の心は原子のサイズに砕け 世界中に散らばったそうだ 君を構成するものたちの 全ての中に僕は宿ったそうだ だから世界は君を愛するんだそうだ

        • 探す

          綿毛のように浮かぶ 文字一つ一つをじっと観察し 虫取り網で獲って このまま布団と一緒に 雨に溶かされ 塗り込められるための言い訳か 僕は溶けもせず 塗り込められもしない理由を やらなければいけないとか言ってることは 本当にそんなにやらなければいけないのか この雨なんかよりずっと 見えもしないし 生かしも殺しもしないのに

        • 固定された記事

        詩のような冒頭文

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        記事

          僕という固形

          別に生きるために書く訳じゃない でも書かないと生きられないじゃないか それは具体的な僕が 僕を確かめる話 白い背景に鮮やかに浮かぶ黒いものが 僕がそこに確かにあると思う文字というものが 本当は何の形もなしていないのだという真実は 生きるとか命とかいうものにとても似ていて僕は思う それじゃない それは、僕などではないのだ

          僕という固形

          レゾンデートル

          僕は僕が欲しい言葉を皆に投げるのだが 僕が欲しい言葉は当然返っては来ないのだが 欲しいものをいると言えば良いのだが 何かのプライドが言わせないのだが 結局は夏の暑さに 時間も感情も蒸発するのだが それは僕の存在の消滅でもあるのだが でも 僕の焦燥は 多分それとは関係がないのだ

          レゾンデートル

          その言葉

          どこまでが自分の場所で どこまでが自分の時間で どこまでが自分であるか わからないような曖昧な輪郭の この世界を 清潔で鋭い刃で一部切り取ったその切片が 全然僕のものじゃないそれが 僕を映し 僕を切り取り 僕を飲み込み 僕は消えた

          その言葉

          トキノツムギB面

           前回までのB面あらすじ  山にある森の中で眠っていた男は子どもの声で目覚めた。男はそれまでの記憶をなくしていたが、子どもはこの世界での神と同等の存在である「管理者」の手足だと名乗る。そして、男の世話をしていた王宮の女性騎士が用意したピアスに宿ることになった。  「マルク」という名前を管理者からもらった男は、ある日、居住しているテントにあったマントを羽織って街に降りた。そこで街の人間から「モリビト」だと言われ混乱する。  果物屋の男性が捧げ物として出してくれた果物をそれと知

          トキノツムギB面

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          22 勉強②  マルクは浴場入口を見た。札はない。ドアを開けると掃除をしている人間もいない。脱衣所、装飾のあるアーチ状の柱と低い壁、その向こうにたっぷりの湯が張ってある大きい浴槽がある。  顕現したピアスが感心したように言った。 「これはすごいですね」 山にいるときは川で体を洗うしかないので、温かいものに浸かれるだけで天国だ。 「うわー。これならやっぱり服洗いたいし着替えたいな。さっきの子に聞けば良かった」 必要あるのかなと思うが、自分も風呂に入る気満々で服を脱ぎながらピア

          トキノツムギB面

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          20 街に降りて② 「森林のマルクという者が来てますが」 城の執務室で作業をしていたソーヤの元に、秘書の女性が告げに来た。 「マルクが?」 街に降りて来たのはいいとして、わざわざここまで来るのは何か困り事が起こったと思われる。 「わかった。通せ」 入って来たマルクは、端がほつれたデザインのカーキのマントを羽織っていて、耳には例のピアスが揺れている。 1目見て、ソーヤは言った。 「モリビトだな」 山の担当をするに当たって、ソーヤは聖域や山のことを一通り勉強していた。その中に、

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          19 街に降りて①  目を開けると煉瓦造りの建物の間だった。いつもながら、この瞬間移動はすごい。マルクは建物の間から出ながらピアスに聞く。 「街の地図わかる?」 “いえ、私もこうして出て来るのは初めてで。“  この2人で出て来るのはちょっと無謀だったかなと思う。最初はソーヤにでも案内を頼んでおけば良かったかもしれない。  屋台が沢山出ている大通りに行くと、人目がパッと集まったのが分かった、 「え、何?」 年配の2人組などは、コソコソっと話をしている。  やっぱりこの服まず

          トキノツムギB面

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          18 グリフィス②  診察室へ向かう廊下の半ばくらいで、こっちを見もせずにグリフィスは言った。 「君のことだよ」 何のことかと聞いても教えてくれないだろうから、そのまま診察室について入る。グリフィスの部屋は入ってすぐが診察室でその奥の扉向こうが個室らしい。診察室と言っても他の部屋の作りと同じだ。  柔らかい絨毯、天蓋付きベッド、書き物机と中央に小さな丸テーブル。 ベッドの天蓋からは薄いカーテンが降りていて中が見えないようになっており、壁沿いのガラス棚には様々な瓶が並ぶ。その

          トキノツムギB面

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          17 グリフィス①  基本的には個室兼診療室にいるグリフィスだが、用事がなくても行く唯一の場所がある。それは大抵ライマがいるキッチン横の使用人室だ。個室があるにも関わらず、すぐに飲み物や食べ物が持って来れるので良いという理由でライマがほぼ私室化している。まあ、この屋敷には料理人というものはいないので、基本誰も使っていないから何も問題ないのだが。最も早い時期に拾われたグリフィスとライマは戦争孤児でもあり、兄弟のように育った仲でもある。  時間ができたので一緒にコーヒーでも飲

          トキノツムギB面

          これまでのトキノツムギB面あらすじ

           騎士がいて王宮があり、魔法や特殊能力が存在する中世ヨーロッパ風の世界。王都の中心には管理者という信仰対象がいるとされる、聖域である山がある。 前回までのあらすじ  王宮に騎士として勤めるソーヤは現在の、管理者の山の担当者。ある日、管理者の山で見知らぬ瀕死の青年を見つけた。青年はその後ずっと眠り続けており、このままの状態が続く場合、この青年をどうしようかと思案している。  大学寮で同室であるアイリスとリアンは、それぞれ、元執事、王国抱えの占い師宗家という経歴がある。  

          これまでのトキノツムギB面あらすじ

          トキノツムギA面

          32 高校とバイト②  「うわ、急にどうしたの」 案の定バートも驚いているが、入ろうと言った当の本人はほぼ仕上がった店内を見回すのに忙しいらしく、何の返答もない。 仕方なくデューが答えた。 「そこの高校の商業科に入ることにしたんだよ。で、勉強のためにここのバイトもしてみようかなと」 ついにリッジは店内を歩き出し、もうこの会話に帰って来そうになかった。 「え、本当?助かるよ。まだ店員の募集もかけてないんだけど、それなら思ったより早く開店できそうだな」  週に何日とか何時か

          トキノツムギA面

          僕の君のこと

          どこにも足場がなくなる夜 君に触れて僕を確認し 君の最初の内側を味わって 僕の形を確かめる 僕たちには表面があるから 君は僕からこんなに遠くて 僕も君からとても遠い そんなまどろっこしさは 朝日が差せば消えてしまうけど 僕は 僕がいることを赦されたいと思ってて 朝も昼も夜も やっぱり君を探している

          僕の君のこと