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ワーキングママが「休園の連絡」を恐れなくなった理由。

「いいよね、お父さんは。子供が休園でも関係ないもんね。」


とっさに口から出てしまった言葉に、ハッとした。


「そんなこと言われても・・・」


そう困った顔で答える父ちゃんの反応を見て、またまたとっさに答えた。


「そうやって"みんな"言ってる。父ちゃんを責めたわけじゃないよ。」



たった数人のママさんと話したことを"みんな"と言って、私がほとんど無意識に口に出してしまった嫌味を、フワッとやわらかく包み直した。



息子の園では、出席や連絡にアプリを使っている。そのアプリの右上に"お知らせマーク"がついていることに気づくと、いつもギクーッとした。


休園のお知らせが届いたら、まずは父ちゃんに「明日在宅ワークできたりする?」と聞いてみる。会社と調整して在宅ワークに変更してくれて、息子を見ていてくれる日もある。



「明日だけは無理や。」

そう答えが返ってきた日に、私はとっさにさっきの嫌な言葉を返してしまったのだ。



だって。

お父さんが「大切な仕事で休めない日」があるように、お母さんにだってそういう日がある。スタッフさんが少ない日とか、代わってくれるスタッフさんがいない日とか、私の仕事の場合であれば指名が入っている日とか。お父さんはそういう日にちゃんと会社に行けて、お母さんは何とか休むしかない。


父ちゃん、ズルイ。


私は心の奥底で、そう思ってしまっていることを認めた。



頭で考えると、父ちゃんは全くズルくなんてない。だからそんなことを思いたくない。でも心で感じてみると、確かに私はそう感じている。

湧いてくる気持ちは止められないものだ。湧いてきた気持ちに"罪悪感"のようなものを感じてフタをして、見ないフリをしていたけれど。

でも見ないフリをして押し込めていたから、あんな嫌味がとっさに口から出てきてしまったのだ。「フタをしないでよ!」と言いながら、まるで"私の心"が"私"に反抗するかのように。




2月から、店舗を異動することになった。「○○店、どう?」と店長から急に言われて、1月の中頃に急に決まった。心機一転がんばるぞー!と思っていたときの休園続き。出鼻をくじかれた感じと、まだ新しい店舗のスタッフさんたちと関係が築けていない中での代行探しやシフト調整のお願いは、なかなかのストレスだった。ママさんが私を含めて2人しかいないので、子供の都合で代わったり代わられたりする"お互い様"な空気が少ないような気もした。




ふと、ヨガのインストラクターをしていたときのことを思い出す。


ある店舗に異動したときに、早番専門のママさんがいた。そして妊婦さんのスタッフさんが1人いて、体のこともあり、ほとんど早番で入っていた。

早番、中番、遅番とに分かれていて、早番は"2人"と決まっていたので、自動的に早番が埋まってしまう。


中番は20時まで、遅番は23時までの勤務。私はまだ明るいときに帰宅するのが好きなので、早番が好きだった。

キレイなオレンジ色の空の中、「おつかれさまでーす!」と帰っていくママさんと妊婦さんをうらやましく感じていた。

そのあと彼女たちが、どんな夜を過ごすかなんて想像はしない。ただただ、明るいうちに帰れる彼女たちをうらやましく思っていたのだ。



でも自分もお母さんになった今、そんなことは決して思わない。


朝は早起きして、お弁当や朝ごはんを作って、子供を送って。

働きおわって、そのまま腰もおろさずに子供のお迎えに行って、お風呂に入れて、ごはんを作って。

子供と一緒にコテッと眠る。




お母さんはとっても忙しい。でもそれは、お母さんになってみないとわからない。私がそうだったように、お母さんの帰宅後まで想像力がおよぶ人なんて、ひと握りなのかもしれない。


当時お母さんではなかった私は、仕事以外の時間をすべて"自分のため"に使っていたのに、何をそんなにうらやましがっていたんだろう。今ならそう思えるけれど。





「ズルイ」とか「うらやましい」とか、
私はなんて未熟なんだろう。

みんなそれぞれの時期に
みんなそれぞれの立場で
それぞれの葛藤や想いをかかえながら
一生懸命に生きている。



でもそれならば、

「ズルイ」って思われないように
頑張らなくてもいいのかもしれない。

「うらやましい」って思われないように
頑張らなくてもいいのかもしれない。

「休んでばっかりで迷惑」って思われないように、頑張らなくてもいいのかもしれない。



ズルイって思われないように
うらやましいって思われないように
迷惑って思われないように
頑張ろうとするから

「息子が休園のため、お休みさせてください。代わってくださる方いらっしゃいますか?」

そのたった1言をグループLINEに送ることが、あんなに辛いのかもしれない。




お母さんではない時代の、
あの葛藤や、あの楽しさ。

幼い子供と過ごす時代の、
あの葛藤や、あの楽しさ。

これからも、その時々によって
その時期特有の葛藤があるだろうし、
その時期特有の楽しさがあるだろう。


もし今、店舗のスタッフさんたちに「お母さんが店舗にいると迷惑だなぁ」と仮に思われていたとしても、それはそれで仕方がないと割り切る勇気をもてたらいいなと思った。




迷惑をかける勇気。



それが今の私に必要なことのような気がした。




それを意識するようにしてから、休園メールが来ても"淡々と"やるべきことができるようになった。


父ちゃんに確認して

無理なら店舗に連絡して、調整してもらって

息子と家で過ごす。


よく考えたら、ただそれだけのことなのだ。





新しい店舗のスタッフさんたちは、みんな優しい。

「お先に失礼します!」と声をかけたら、「おつかれさまです♪」と笑顔で返してくれるし、

「お休みさせてください」と言えば、それこそ淡々と調整してくれる。そして「息子さん、大丈夫でした?」と気づかってくれる。



自分自身が「迷惑をかける勇気」を持つことができれば、「急に休むこと」は怖くなくなる。案外みんな優しくて、案外自分がいなくても世界はいつもどおりに回っていく。



そして、

「迷惑をかける勇気」を持つことができれば

「迷惑を受け入れる優しさ」も育っていく。



人に迷惑をかけてはダメだと思っていたし
人に甘えるのが苦手だった私。だからこそ、人に迷惑をかけられるとモヤモヤしていたし、人に甘えられるとザワザワしていたのかもしれない。




子供のおかげで、

人に迷惑をかけざるを得なくなって、
人に甘えざるを得なくなって。



「お互い様」の"優しい世界"を、
今知れたような気がしている。


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