息子を変えるのではなくて、私が変わろうと決めた。
3月の終わりのまだまだ肌寒い季節に、息子のためにグレーのパーカーを買った。
その何気ない購入が、私をあんなに悩ませるきっかけになるなんて、そのときはこれっぽっちも想像していなかった。
肌寒いときに、息子が気楽にはおれそうな上着を求めて、ユニクロの店内をウロウロしていた。
パーカー、いいかも。
そう思って、目についたパーカーを手に取った瞬間、うわぁ・・・と思った。最高の肌触りだったのだ。私もほしいと思うほどに。
2000円ちょっとのその商品。息子の服にしては高いなと思いながらも、あまりの肌触りの良さに感動して、ついついカゴに入れてしまった。ついでに、そのパーカーと同じ生地を使っている長ズボンまでもカゴに入れてしまった。
息子が喜ぶ顔が、ふわっと頭に浮かぶ。
幼稚園ではパーカーを着ていくのを禁止されていた。フードが取り外せるウインドブレーカーを1つだけ持っていたけれど、幼稚園に羽織っていくときは取り外して着ていた。
息子はどうやらフードが好きなようで、休日になると「フードをつけて着る!」と言って、外出中はひたすらフードをかぶっていたのだ。
小学校では服装は自由なので、パーカーを着ていける。
想像通り、いや、想像以上に、息子はそのパーカーを気に入った。いや、気に入りすぎてしまった。
その日から、毎日毎日そのパーカーを着続けている。「洗わないでね!」と言われるけれど、さすがに汚れのひどいときにコッソリ洗う。そして朝に乾いていないことがわかると、本気でションボリする。なんなら、濡れたまま着ようとしていた。さすがに止めたけれど。
毎日同じパーカーを着る。
そのこと自体は別にいいのだけれど、息子はパーカーを着ると、必ずすっぽりとフードをかぶる。つまり、毎日「もじもじくんスタイル」ということだ。
私はそれが気になって気になって仕方がなかった。隙をねらって、息子のフードを脱がしてみる。すると「やめてよ〜」と言ってまたすぐかぶる。
「りんりん、もじもじくんみたいだよ。ずっとそれは変だよ?」
そう言いながら、もじもじくんの画像を見せてみたけれど「ほんとだー!ぼくもじもじくんみたい!」と言って、キャハハと笑ってそれで終わり。
まぁいいか。フードブームもすぐに終わるだろう。しばらく様子をみよう。
そう思って、1か月ほど様子をみてみたけれど、全くブームは過ぎ去らないので、1度真剣モードで聞いてみた。
「りんりん、どうしてずっとフードかぶってるの?」
「フードかぶってたら落ち着くから。フードかぶってたら音がうるさくない。」
予想外の返事にハッとした。息子なりに、フードをかぶる理由がちゃんとあったのだ。
そういう理由なら仕方がないな、と思ったけれど、私は「息子が周りの人にどう思われるか」が気になって気になって仕方がなかった。小学校1年生がはじまって新しい環境の中で、「変な子だな」と思われているんじゃないか、そのせいで友達ができなかったら・・・などなど、ドッと不安が押し寄せてくる。
5月の中頃に、はじめての懇談があったので、担当のスタッフさんに聞いてみた。
「毎日フードをかぶってるんですけど、あれは学校的に大丈夫ですかね?」
「たしかに、りんりん毎日あのスタイルですよね。でもうちは全然大丈夫です。みんなも別に、りんりんはあのスタイル、くらいにしか思っていないので大丈夫ですよ〜。」
そうか、大丈夫なのか。みんな特に気にしてないのか。それなら別に気にしなくていいのか。
そう頭では思っているのに、「フードをかぶらないでほしい」という気持ちは、どうも消えてくれない。
いろいろ話す中で、朝の支度を全部私が手伝わないとやってくれない、という話になった。顔を洗うのを嫌がるけれど、目ヤニがついているので、毎朝ムリヤリ私が顔を洗わせている。頭を濡らすのも嫌がるけれど、寝グセもなんとかなおしている。朝が大変なんです、と話していると予想外の言葉が返ってきた。
「寝グセはついたままで大丈夫ですよ。目ヤニも大丈夫です。もう少し大きくなって、誰かに何か言われたり、自分でかっこ悪いなと思ったりすれば、自然とやるようになると思います。」
その言葉を聞いて、ハッと気づいた。
息子は今のところ、フードをずっとかぶっていても、寝グセでボサボサの髪の毛でも、目ヤニがついていても、何も困っていないんだということに。
ただ、私が嫌なだけだったのだ。
それはきっと「身だしなみをちゃんとさせないダメなお母さん」と思われるのが怖かったんだと思う。「息子のため」と見せかけて、「自分のため」に、息子をなんとか変えようとしてしまっていた。
その日そのことに気づくことができて、息子を変えようとするのをやめて、自分が変わることにした。
6月になって、さすがにあのパーカーは分厚すぎて暑いだろうと思って、夏用の薄い生地のパーカーを買って渡した。いつものパーカーがやっぱり好きみたいで、それを洗っているときにしか着てくれない。でも、本当に暑くなれば、薄いパーカーを選ぶようになるかもしれない。今日どの服を着るのかは息子が決めることで、私にできることは季節に合った服をそっと準備して置いておくことしかできない。
「りんりん、寝グセで髪の毛ボサボサだよ。かっこよくないと思うよ。なおす?」と聞いてみる。「フードかぶったらなおるから、このままでいい。」と言われる。「かっこよくないと思うよ」と自分の気持ちを伝えることはできても、寝グセを直すか直さないかは、息子が決めることなのだ。
「りんりん、目ヤニついてて、かっこよくないと思うよ。顔あらう?」と聞いてみる。「顔濡れるのイヤだから、手でとる。」と言って、手で顔をこすって目ヤニをとっている。まるで猫のように。そうきたか!と思い、「顔洗った方がスッキリするよ。顔あらう?」と、もう一度聞いてみる。「目ヤニとれたし、洗わない。」と言われる。朝、顔を洗わないといけない決まりはないわけで、顔を洗うか洗わないかは息子が決めることだから仕方がない。
自分が思っていることは伝える。でも、それをやるかやらないかは息子にまかせる。
それを意識するようにしたら、すごく楽になった。
息子は何ひとつ変わっていないけれど、自分が変わることで、頭を悩ませることはなくなった。
息子にとって私は「人間関係第1号」だから、人と人として、ただ信頼関係を築いていこう。その絆をデフォルトとして、息子は社会の中で人とつながりを作っていく。だから私とのその絆が、できるだけ強くて、太くて、温かいものであるように、はぐくんでいけたなら。
子育ての中で、私が1番大切にしようと思っていたのはそんなようなことだったのに。
どんなに仲のいい友達にだって「○○しなさい!」なんてことを言えないのは「対等」であるからで、「こうしなさい」と命令したり強制したりできるのは、きっと心のドコカで相手のことを「下」に見ているということだ。
無意識にそうしてしまっていた自分に気づいて、ゾッとした。
子供は親の言うことを聞かないといけない。
生徒は先生の言うことを聞かないといけない。後輩は先輩の言うことを聞かないといけない。部下は上司の指示に従わないといけない・・・
私の中に無意識に根づいている「上が下に従う」という感覚に気づく。
「教育」に関しては、いろんな考え方があると思うけれど、子供をひとくくりにして「子供」としてではなく、子供を「1人の人間」としてトコトン向き合ってくれる、今通っている小学校の姿勢が私はすごく好きだ。
息子の人間関係のデフォルトに「上が下に従う」ということなんて刻みたくない。「上が下に従う」という人間関係の中で、私だってもう生きたくない。まるでパソコンのDeleteキーを押すかのように、ポチッとその感覚を削除するイメージが頭の中に浮かんでくる。そのイメージは、私の心を妙に軽くしてくれた。
そんなある日、息子が久しぶりに風邪をひいた。1日だけ学校を休んで、その次の日にはまだ咳は残っていたけれど、学校に行くとのこと。
「みんなに風邪うつしちゃったらダメだからね。最近太陽がまぶしいからね。」と言いながら、玄関で靴を履き始める息子が目に入り、ぶっちゃけ血の気が引いた。
また強烈な試練が訪れた。神様は私を試しているんだろうか、とさえ思えてくる。
「りんりん、その格好さ、犯罪者みたいだよ。さあ、今から強盗します!っていう人が顔がバレないようにそんな格好するよ。それで学校行くの?」
今すぐフードとサングラスとマスクを引っ剥がしたいのをグッとこらえて、そう聞いてみると、息子はキャハハと笑ってそれで終わり。
グッとこらえて、息子を学校まで送る。
学校に到着して、息子がトゥクトゥクを降りると、同じ年の女の子がかけよってきた。
「りんりーん!おはよう!今日もトゥクトゥクで来たの?いいな〜。」
特に何のツッコミもないことに驚く。
そのあと、いつも元気な3年生の女の子が、かけよってくる。
「りんりん、なんか今日は不審者スタイルやなぁ。アハハハハ!」
「アハハハハ!」
「アハハハハ!」
3人でアハハと笑っている。
つられて私も笑っていると、犯罪者スタイルであろうと、不審者スタイルであろうと、別に犯罪者なわけじゃない。不審者なわけではない。どうってことないのかもしれないなぁ、なんて気持ちになってくる。
息子はなんて温かい世界で生きているんだろう。
息子が生きている温かい世界に助けてもらいながら、私も温かい世界の住人になりたい。温かい世界の住人でありたい。
そのために、私が変わろうと決めたのだ。
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