見出し画像

「地球がシャワーを浴びている世界」は美しかった。

息子を小学校へ送り届ける途中。

その日の私の心は、曇っていた。
そして空も、曇り空。

淡々と、黙々と、運転する。

赤信号のとき、後部座席に座っている息子にチラッと目をやる。ボンヤリと窓からの景色を眺めている。

心が曇っているときは、フロントガラスから見える世界だって、曇って見える。


今の自分にしっくりくる音楽は、RADWIMPS。いつもは息子のリクエストでマイケルジャクソンを聴いたり、私が大好きなアーティストのチャットモンチーの曲を聴いたりしているけれど、それらは今日の私には明るすぎてきっと耳ざわり。今日はRADWIMPSじゃないとダメだった。


曇り空から、急に雨がふり出す。
ザーッと音を立てる、激しい雨だった。

空の天気と、自分の心の天気を重ね合わせていたものだから、なんだか私も泣きたくなってくる。

空が泣いている。
私の心も泣いている。

そんな風に感じた。



「めっちゃ雨ふってきたね。」

息子が言う。

「うん。今日は雨降らないと思ってた。洗濯物、外に出してきちゃった。さいあく〜。」

私は答える。


そこで会話は終わったかと思ったのだけれど、10秒くらいして。息子がボソッと言葉を発した。



「地球がキレイになるね。地球がシャワー浴びてる。」



その言葉を聞いた瞬間、私の視界がワントーン明るくなるのを感じた。

そして、なぜか涙腺がゆるんだ。


「ほんまやなぁ。地球がキレイになるのかぁ。地球がシャワー浴びてるのかぁ。いい表現すぎて、母ちゃんなんか泣きそう。」

そう答えると、「なんで?なんで泣きそうなの?」と、息子は不思議そう。


赤信号のとき、後部座席に座っている息子にチラッと目をやる。あいかわらずボンヤリと窓からの景色を眺めている。



同じ乗り物に乗って、
同じ時間を過ごしているのに、

私の目から見える世界と
息子の目から見える世界は
どれだけ違っていたんだろう。


空が泣いている世界で
生きていた私と

地球がシャワーを浴びている世界で
生きている息子。

息子の言葉をきいて、
息子の生きている世界に
ピョンッと瞬間移動した。

そうしたら、私の目から見える世界は
急にキラキラ輝きはじめた。

ここはきっと今この瞬間、
息子が生きている世界。

息子の言葉が連れてきてくれた世界に、
うっとりした。



また、ある雨の日。

息子を小学校まで迎えに行くと、小学校の隣の公園で傘もささずに遊んでいた。

母ちゃーん!と満面の笑みで手をふっている。全身ビショビショで、顔には水がしたたっていた。

トゥクトゥクに乗り込んで動き出してしばらくすると、息子が言った。


「ビショビショやわ〜!体が気持ちわるい〜!」

やっと体の気持ち悪さに気づいたようだった。

服を着たまま濡れたら、気持ち悪い。
だから雨にはあたりたくない。
だから雨が降ったらイヤだ。

そんな経験を積み重ねて
「雨の日が憂鬱な大人」になっていく。


「母ちゃん、もっとスピード出して!早く服きがえたい〜。」

息子が私を焦らせる。


「そんなことよりさ、地球がシャワー浴びてるね。地球がキレイになってる。」

かつて息子が私の心を晴らした言葉を、ソックリそのままマネして投げかけてみたけれど。

「ぼくは早くお風呂でシャワーあびたい!」とちょっぴりフキゲンなご様子。今日の息子の心に、この言葉は響かないようだ。


雨がふっている。ただそれだけのこと。

でも自分の体や心の状態によって、その見え方はガラリと変わる。

今日の私は、車内に流れているチャットモンチーの曲に合わせてフフフンと鼻歌を歌う。息子の要望に応えて、ちょっとだけスピードをあげて家に向かいながら。


今日も
同じ乗り物に乗って
同じ時間を過ごしながら

お互いちがうメガネをかけて
それぞれのレンズを通して
世界を見つめる。

まだ6年しか生きていない息子は、
まだまだ曇りの少ないピカピカのレンズから見える世界を、私に思い出させてくれたりする。

そして私は、
大人になるにつれてどんどん曇っていった
自分のレンズの曇りに気づいて、
その曇りをキュッキュと磨いてみる。

そして、そこから見えた景色を美しいなと思う。

そして息子は、
日々いろんな人と関わっていくうちに
いろんなことがあるうちに

少しずつレンズを曇らせていくのだろう。

そして、ピカピカのレンズのままでは味わえないことを味わっていく。


それでいいんだと思う。

ピカピカのレンズから見える世界と
曇っているレンズから見える世界を
行ったり来たりして、
そのコントラストを楽しめばいい。

そのコントラストが、
人間として生きる醍醐味なのかもしれない。

ずっと曇っているレンズで生きるのは、そりゃしんどいだろうけれど。ずっとピカピカのレンズで生きられたとしても、きっと全然おもしろくない。

きっと退屈して、「なんかおもしろいことないかなぁ」なんて言いながら、自らレンズを曇らせたりしちゃうのかもしれない。



自分の鼻の上に乗っかっているメガネを意識しながら、

その日その日、自分の目の前に広がる世界を、おもしろがって過ごせたらなと思う。

メガネはいつか外すんだよ、
レンズはいつでも磨けるんだよ、
という余裕をちょっぴり持ちながら。

「人間」として生きられるたった数十年、
思う存分、人間を味わえたらなと思う。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

最後まで読んでいただいてありがとうございます(^^)

大阪府箕面市で、お家サロンをやっています。noteから来てくださった方は、初回60分2500円で施術させていただいています。お近くの方はぜひ遊びにきてくださいね♪

詳しくはこちらのページへ↑

この記事が参加している募集

雨の日をたのしく

育児日記

大事な時間を使って、私のページにあそびにきてくださってありがとうございます。サポートうれしいです♪書きつづける励みになります(^o^)