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#60 沈み込んだ気持ちを温かく包み込み心震える感動へと誘う一冊

「きっかけをくれた1冊」が今日のテーマです。

僕の本を選ぶ基準というのは、浅田次郎さんの「鉄道員(ぽっぽや)」から全てが始まりました。直木賞受賞作。この「鉄道員」をきっかけとして、すごく気になる賞になり、まず、当時の最新作からずっとさかのぼり受賞作を全部読み、その次は候補作も全部読みました。なので、直木賞に関しては僕、全部読みました

なぜこの賞の作品が心に響いたのか。

仁義だったり友情だったり、義理人情、何かそういったものを切々と訴えてくるものが多いんですね。愛情、それは家族愛であったり友達同士の友情でもいいんですけれども、恋人ももちろんそうですよね。そうした情にまつわる話を通じて、心に響く作品がとても多いなと思って、それでハマりました。

誰しもが幸せな気持ちになれる一冊

今回おすすめしたい一冊はこちら。「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」万城目学さんが書いた本です。

出版は2010年です。今から12年前で、なんでこの本に僕たどり着いたんだろうと思い、裏表紙に書かれている万城目さんのプロフィールを見て思い出しました。万城目学さんは2作目の「鹿男あをによし」で第137回直木賞候補となり、「プリンセストヨトミ」も、第140回直木賞候補になったということで、彼の本を読んで、「面白い!」と思い、万城目学さんの本を探していたら、この「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」という本にたどり着きました。ちなみにこの本も直木賞候補作です。

そして「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」という、タイトルからみてもまったくわからないストーリー。どういった物語が始まるんだろう。気になって気になって仕方なくて、手に取りました。

紹介文にはこうあります。

「かのこちゃんは小学1年生の元気な女の子、マドレーヌ夫人は、外国語を話し優雅な猫その毎日は思いがけない出来事の連続で、不思議や驚きに満ち満ちている」

今回この本を紹介させていただくにあたり、もう一度読み直しました。なんせ面白いし、テンポも良いので一時間半ぐらいで読み終えたのですが、当時、12年前に買ったときには、読み終えた時点で号泣でした。そして12年ぶりに読んで、また再び涙が頬を伝わって落ちていきました。

どういう本かというと、ネタバレは嫌いなので、決して結果どういうことなのかっていうことをお話するつもりはないんですが、どんな人が読んでも、おそらくほぼ100%、すごく幸せな気持ちになります。

オブラートに包んで少しだけ紹介

予備知識なしで読んだからこそ面白かった、というのもあるので、もうタイトルだけ紹介してあとは中身は話さない、というのがベストなんでしょうけが、それだとあまり意味がないので、ものすごくオブラートに包みこんで紹介します。

かのこちゃんは小学1年生の女の子です。マドレーヌ夫人はこの裏表紙の説明にあった通り、猫です。そしてもう1人。というかもう1匹、主人公がいます。それは玄三郎というワンコなんですけれども、年老いたこのワンコと小学1年生の女の子とマドレーヌ夫人、この三者の物語なんですね。

この小学1年生のかのこちゃんの目線で話も進んでいくし、チャプターによっては、猫のマドレーヌ夫人の目線でも進んでいく。

この3人がですね、一つの愛情で繋がってるんです。そうした関係を猫目線で見るというのもものすごく面白くて。もちろん、万城目さんが考えてるものなんですが、こうやって本当に猫って人の世界を見てるのかな、とすっと入ってくるんですよね。そしてまたかのこちゃんの所作であったり、言葉であったり、これがまた逐一可愛いんです。

そしてこの三者が織りなす物語。何がいいのか。とにかく優しさに満ち溢れてるんです。相手を思う気持ち。どうやったらこの子のためになるんだろうか、とか。それは決して、甘やかすことでもないし、かわいがりすぎることでもなくて、それはかのこちゃんであったりマドレーヌ夫人であったり玄三郎それぞれに関してなんですが、この三者がどうしたらそれぞれ一番幸せを感じてもらえるか、そうしたことをお互いに考えながら生きてるんですね。
それがキュッと詰まった作品です。

そして、これを読んでくれている皆様方、どんな心の状況にあったとしても、例えば、悲しかったり、落ち込んでたり、へこんでいたり、ハッピーだったらなおさらそれはそれでいいんですけれども、どんな心理状況に陥ってたしとしても必ず幸せな気持ちにしてくれる本です。

ちなみに僕はこの本を読み終えた後に動物の気持ちというものを、考えるようになりました。この本を購入したときはまだペットはいなかったんですけれども、今、チワワがいます。2歳になるのですが、12年ぶりにこの本を読み終えた後、僕はそのチワワにしばらく話しかけました。「ね、あなた本当は僕の言葉わかってるんでしょう?」と。

なぜこんな問いかけを彼女にしたのか。

この本を読めばわかると思います。必ず、温かく幸せな気持ちにしてくれる本です。どうなんだろう。ネタバレした方がよかったのかな。でもね、絶対手に取って読んでいただきたいなと思ってこのような形で紹介させていただきました。

(voicy 2022年7月29日配信)

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