生涯投資家②「東京スタイルとプロキシーファイト」
トモーロです。
今回も生涯投資家の解説をしていきたいと思います。前回は、著者である村上世彰さんの紹介と通産省に入り、コーポレート・ガバナンスについて研究していたこと。
そこで、日本企業の成長のために自ら投資家となってコーポレート・ガバナンスを日本に浸透させていくことに使命感を感じ、村上さん自身が実際に動き始めようとうとするところまで解説しました。
今回は、投資家になった村上さんがどのように動いていったのかを解説していきたいと思います。
結論から言うと、コーポレート・ガバナンスを企業の経営者に理解させようとしますがものすごい拒絶反応を示し、問題をトラブルを起こしていまします。
そのストーリーを早速解説していきます。それではいきましょう!
【東京スタイルとの戦い】
投資家になった村上さんは、東急グループ、昭栄などの経営者に物言う株主として参加し、コーポレート・ガバナンスについてたくさんの提案を出してきました。
その一つである「東京スタイル」について説明したいと思います。東京スタイルとは、1949年創業の婦人服メーカーです。
投資家としてみると、この企業は不思議なことがありました。村上さんはその不思議さを外国人投資家から聞かされます。
この企業は、上場企業でありながら株主と向き合わず経営も保身に走り、株主のことを一切考えない企業である。その証拠に株主として経営者に面会を申し込んでも全く会ってくれない状態でした。
そう思い村上さんも東京スタイルについて調べてみると、本業のアパレルでは純資産の半分の売上であり、莫大な資産を頼りに事業を継続していました。資金だけを溜め込んでいる会社でした。
その割に不当に安く評価されていました。コーポレート・ガバナンスが効いていないと見た村上さんはプロキシーファイト(議決権争奪戦)で会社を変えることに挑戦します。
【上場企業のあるべき姿】
東京スタイルは、上場企業としてあるべき姿ではないと村上さんの目には映りました。そもそも上場企業とは何なのか。
上場企業であることによってメリットは2つ。株式が換金しやすいこと。もう一つが資金調達がしやすいということです。
また上場企業のことを英語でGo Public、非上場企業のことをGo Privateと言います。つまり、上場企業は株式を公開することで誰もが買えるということ。
言ってしまえば経営的に必要なければ上場する必要なんてない。それが村上さんの考えでした。信用が欲しいから上場するというのは本来の理由ではないということです。
また、企業にとってのお金とは人間で言うところの血液と一緒。だから企業がお金を溜め込んでいても意味がない。経済にとって、お金の流れが潤滑であることがいい状態である。
企業がお金を溜め込むのであれば、積極的に投資をするか、株主に還元するのがいい方法なんだと強く主張されています。
これらの思いを東京スタイルに伝えようとしました。
【社長との面談】
村上さんも東京スタイルの社長に面談を申し込みますが、断られてしまいます。そこで株主総会に出席してみると、外国人投資家のほとんどがファンドでした。
そこから、村上さんはなんとか粘って社長との面談の機会を勝ち取り、実際にお会いすることになりました。
しかし、社長は初めから「銀行と取引先以外の人と会ったことがないのになぜ君と会わないといけないのか」と言われていしまいます。
その後、経営内容の質問をいくつか投げかけますが全く答えてくれません。結局なんの話し合いもされないまま、面談が終わってしまいました。
【プロキシーファイトへ】
村上さんが東京スタイルに求めていたのは、余剰資金をどう活用するのかと言うことでした。もし使い道がないのであれば、投資か株主に還元すべきというのが村上さんの意見です。
その後も全く動こうとしない東京スタイルに対して2つの要求をします。1つ目が「1株当たりの配当を上げること」、もう1つが「余剰資金で自己株取得をすること」の2つです。
この意見には、さまざまな投資家が賛成し、この時点で外国人投資家はほぼ賛成の意を示していました。
この時点で、40%の議決権と村上ファンドの10%強の議決権は堅い。これならプロキシーファイトに勝てると確信していました。
そのあたりで別の企業の経営者から「お前はやりすぎた!」と圧力をかけられてしまいます。しかし、妥協せずに戦うことを決意します。
ちょうどそのとき東京スタイル側の恐れたのか、配当金も金額を要求する金額までではないが、値上げしていました。
そして、決戦の株主総会の日。結果から言うと全ての議案で村上さんの提案は否決してしまいます。実は、東京スタイルの株価が上がった瞬間にたくさんの人が株を売ってしまっていたのです。
その中には、村上さんに賛成の意を示した人たちもたくさんいました。プロキシーファイトに負けてしまったため、村上ファンドは撤退します。
その後、東京スタイルはサンエーインターナショナルと経営統合をし、TSIホールディングスと言う会社を設立します。
そして、自己株取得の実施、持ち合い株の解消を宣言し、村上さんの要求が徐々に実現していくのでした。
【本日のまとめ】
いかがだったでしょうか。今回は、村上さんと東京スタイルの話をしていきました。少々経済の話で難しく感じた方もいるかと思います。
ポイントは、コーポレート・ガバナンスの理解が深まっていない企業に対してどうのように理解させるかと言うことです。
言い換えれば、時代の流れは完全にスマホを使った方が便利なのに、いつまでもガラケーを手放さない人にどのようにスマホに切り替えてもらうかといったようなことに似ていると思います。
そう考えると、結構自分の身の回りでも起きそうな話ですよね。
さて、次回は少し私も怖いのですが平成の経済事件といえばこれと言う解説をしていきたいと思います。
次回もお楽しみに!ではまた👋
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