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元板前が解説する、ご家庭の調理設備で作るチャーシューレシピ

僕の居た和食の世界では特に顕著ですが、料理の世界は職人さんの勘や経験を重視する風潮が強い業界なんですよね。

もちろん勘も経験も大事ですよ、プロですもの。
でもね、ちょっと偏り過ぎてると思う元板前のともちーでございます。

料理って言葉は『おしはかる』『ことわり』と書くように、科学です。
当然技術や慣れが必要なこともありますが、9割は理屈で成り立つはずのものなんです。

という訳で今回の本題、片手では足りない件数のラーメン屋さんでアルバイトをしてきたんですよ。

突然ですがチャーシュー、好きですか?
僕は大好きです。男の子大満足。

というわけで、時間はかかるけど本格的なチャーシューの作り方と、小1時間で出来るお手軽チャーシューの作り方の2種類をご紹介させて頂こうかと思います。

●寸胴が無くても家の調理設備で作る本格チャーシューレシピ

・メイン食材
豚肉 バラorロース、安いお肉でもおいしくなるので大丈夫

・醤油ダレ
醤油 メイン、ボトル丸々1本用意しておくと楽
酒 安いのでOK、醤油の1/10(だいたいでOK)
生姜 香味、チューブでもOK
にんにく 香味、チューブでもOK
みりん お好みで
砂糖 お好みで
塩 お好みで(余り入れすぎると味が崩れるので少量で)
味の素 お好みで(余り入れすぎると味が崩れるので少量で)
その他野菜くず

出来上がる醤油ダレの量=用意したお醤油の量とほぼ同量になります。
チャーシュー以外にも色々と使い勝手の良いタレなので、ボトルは捨てずに取っておいて保存容器に使うのがおすすめ。

その他野菜くずについて、入れても入れなくても大丈夫です。入れれば野菜の甘味と旨味がプラスされます。
代表的な所だとねぎ(玉ねぎ、長ネギの頭)でしょうか。野菜のうまみを絞り出す用なので、野菜くずなどを冷凍保存で溜めておいてまとめてブチ込むだけで結構いい出汁になってくれるので、この醤油ダレ以外にも使えて便利。
隠し味にオイスターソースを少量入れるのもアリ、お好みで。

生姜やにんにくを生で用意する場合は作る分量に関わらず生姜1かけら、にんにく1房でいつも用意しています。(ガロン単位で作りたいとか極端すぎる場合は除く)
量が多い場合や、個人的に味が強い方が好きな場合は、薄くor細かくカットしたり、擦りおろしたり、にんにくは潰してあげることで調整ができます。
この調整方法は醤油ダレに限らず、この次に記載しているスープでも同じようにできます。
チューブを使用する時は好みに合わせて量で調整しましょう。

みりんと砂糖は甘味の為に入れるんですが、みりんを入れすぎるとチャーシューが硬くなってしまうので注意。
目安は砂糖1に大してみりん1か、それ以下にしましょう。何でしたらみりんは入れなくても問題ありません。
お好みで、の分量が検討付かない場合はお酒と同量以下を目安に入れてみて、そこから増やしたり減らしたりして自分好みの味を探してみましょう。

・スープ
水 水道水でOK
生姜 香味、1かけら
にんにく 香味、1房
野菜 長ネギの頭(青い部分)&玉ねぎ、その他野菜くず、あればでOK


醤油ダレを作ります。
タレの材料を丸ごと鍋の中にぶち込んで火にかけましょう、入れる順番は気にしなくて大丈夫ですし、混ぜる必要もありません。煮立ってくると勝手に混ざります。
生姜、にんにく、野菜くずなどはネットにまとめて入れてしまうと後で取り出す時に少しだけ楽になります。

生生姜を使う場合は皮を剥いておきましょう、生姜の皮はスプーンやテーブルナイフ、包丁の背などを使うと簡単に削り落とす事ができます。水の中で作業すると皮も飛び散らず後片付けも楽。
逆に玉ねぎやにんじんなどの皮は意外と旨味、甘味が豊富にありますので剥かないのがおすすめです。泥などが付いていたら洗い流して、皮は剥かず入れてあげましょう。

※ちょっとトリビア
意外と普段捨ててしまっている野菜の切れ端って、出汁に使える部位が多いです。
先述した玉ねぎの皮や、にんじんや大根の端、長ネギの頭などなど、捨てずにビニル袋に詰めて冷凍保存しておくと使い勝手がいいです。
長ネギの青味が欲しい時は、長ネギの頭よりも万能ねぎ(薬味ネギ)がおすすめ。気持ち分はお値段上がってしまいますが、お値段以上に味も風味もいいですし、万能ねぎは出汁用に使えないので。

強火で思いっきり火にかけて沸騰させてあげましょう、ある程度深いお鍋を使うと吹きこぼれの心配が若干軽減されます。
数分沸騰させることでアルコールを飛ばしてあげたら火を止めて、丸1日寝かせます。


1日経ったら野菜類を取り除いてあげれば万能醤油ダレの完成です。
ネットを使っていると、この時ちょっとだけ手間が軽くなります。野菜類がタレの中に残っていると痛みやすくなるので、ここでズボラはしないようにしましょう。

材料一覧でお醤油はボトル丸々1本用意しておくと楽と書きましたが、出来上がりの量が元の醤油の量とほぼほぼ変わらないので、そのまま保存容器として使ってしまうのが個人的におすすめです。

チャーシューに限らず味卵や醤油ラーメンの種、炒め物などなど、非常に応用の効くタレなので常備しておくと料理が捗ります。
ただしちょっと場所を取るので、台所の主権を握っていない時は調理場の主と相談しましょう。

※ちょっと一手間
煮る調理の基本として、加熱している時に具材からスープに味が染み出して、冷めていく時にスープから具材に味が染み込みます。
タレを1日寝かせることで、味が多少具材(野菜くずなどなど)に奪われてしまっているので、野菜類を取り除く前にもう1度加熱してあげるのもアリです。


お肉の下準備として、豚肉の表面を焼き固めましょう。
表面を焼くことでコーティングしてあげるイメージで、表面全体を焼いて行きます。
お肉自体から油が沸いてくるので油をひいてあげる必要は余りないです、焦げ付くようなら薄くひいてあげましょう。染み出してきた油をふき取り過ぎない方がしっかりカリッと焼きコーティングできます。

この後に煮込んでいくのでここで中まで火を通しきる必要はありません、焼きすぎると美味しくなくなってしまう可能性があるので注意しましょう。目安は表面がきつね色になって、突くとぷにぷにと柔らかい(中が生のため)くらい。
好みや手間削減でこの手順は省略しても大丈夫ですが、表面を焼き固めることで煮崩れ防止と、旨味を中に封じ込めることができます。
ほろほろトロトロのチャーシューが作りたい時は焼き固めない方がいいですが、省略した場合は煮崩れに要注意。


スープの材料と、3で用意したお肉を丸ごとお鍋にぶち込んで強火にかけます。
お水の量は豚肉を含めて具材すべてがひたひたに浸かる量です。
沸騰してから豚肉を入れなきゃ駄目とかは無いので、足りなかったら後からお水を足しても大丈夫。
加熱すると野菜類が柔らかくなって具材のかさが減って沈んできますので、吹き零れ防止もかねて灰汁を取り除いていきます。多少多めにスープごと掬ってしまっても問題ありません。

灰汁を取り除いてある程度スープが澄んできたら、吹き零れない程度に火を弱めて煮込んでいきます。
目安として90分~150分程度。お肉のサイズと好みによって調整しましょう。
小さめのお肉で2時間以上煮込んでしまうと柔らかくなりすぎてしまって、形がボロッと崩れてしまったりするので要注意。不安なときは菜箸で刺して確認するのをお勧めします。


煮込み終わったらお肉と野菜を取り出します。
スープはまだチャーシュー作りに使うのと、チャーシュー以外にも使える美味しい出汁が出ているので捨てないでください。

先に作った醤油ダレとスープを混ぜて、チャーシューの漬けダレを作ります。
分量は基本的に1:1ですが、好みに合わせて調整してみましょう。濃い味が好きなら醤油ダレを多めに、あっさり旨味たっぷりが好きならスープを多めに。
取り出したブロック肉をジップロックやビニル袋に入れて、肉全体を覆える量の漬けダレと一緒に密封します。

ボウルやシンクに水を溜めてビニル袋を沈めてあげると、簡易真空パックになるので味の染みがより良くなります。
1つの袋にブロック肉を複数個入れてしまうと肉と肉の触れ合ってる部分から味が染みなくなって味ムラの原因になります。少々手間かも知れませんが、1袋1肉で密封していきましょう。

袋詰めしたら冷蔵or冷凍で丸1日ほど味を染み込ませてチャーシューの完成です。(2で解説した※ちょっと一手間の理屈で、冷蔵or冷凍保存中に漬けダレの味がお肉にギュンギュン吸収されます)
時間はかかりますが、やる事は非常に単純なので慣れてしまえば自宅で量産できます。
冷蔵保存しておけば日持ちもするので、是非お試しあれ。


チャーシューを作るだけだとまず間違いなくスープが余ってしまいますが、お肉や野菜のうまみたっぷりの出汁なので捨ててしまうにはちょっと勿体ない。
しかしその場で使い切るには多すぎる量が出来ていると思いますし、そのまま保存しておくにも多すぎる…という事で、残ったスープは煮詰めてかさを減らしてあげるのがお勧めです。

焦げ付かないように煮詰めていくと、プルプル(ゼラチン? 煮凝り? みたいな感じ)になってかなり体積が減るのでおすすめです。
使う時はお湯で戻してあげれば元のスープに戻せますし、何か他の煮物などを作るときにはプルプル状態のまま入れてあげれば簡単に旨味を足してあげられます。


いかがだったでしょうか。
やる事は単純なんですが、ただひたすらに時間がかかるんですよね…

ガチでチャーシューを作ろうと思うと結構手間がかかるんですよね、そもそもチャーシューの醤油ダレを作るだけで1日かかったりしますしね。

でも時間がかかるだけで、やる事は単純で案外簡単だったりするので、是非ご家庭でチャレンジして頂きたい一品です。

因みに料理の出来る男性はモテるだとか、やっぱ料理できる女の子っていいよねーって世の中で結構言われますが、現実では案外そんな事はありません。
何故なら僕が特段モテるわけじゃないからね、悲しい現実だね。

でもこのレシピは僕が過去に付き合っていた女性や友達には例外なく非常にウケが良かったり、教えてあげた女友達が恋人に作ってあげても毎回大評判だったそうなので、覚えておいて損はないと思いますヨ?

特にチャーシューというのは
『ラーメン屋さんが作るもの』
『ご家庭の調理設備じゃ無理』
みたいなイメージが強いので、この先の有料区間で解説してる時短チャーシューをお酒の席などでパパッと作ってみたりすると、毎回非常に評判がいいです。

モテるとまでは行きませんが、ゲスな話し個人的にこのレシピは外したことがありません、これだけで話題の中心になれたりもしますw
作る量にもよりますが、小1時間で作れてしまうので毎日の献立や旦那さんor奥さんの晩酌のお供に悩んだ時とかにも重宝する一品。


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