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旅のわだち3

最初のヨーロッパは、88年冬のスイスとオーストリア。列車で一緒になった高齢の女性に「サンアントンのレースに岡部哲也は出るのかしら?」と聞かれ、アルペンスキーがメジャースポーツということに驚いた。
地図を手に雪道を歩き、空き部屋があるはずの複数の宿で断られたのはアジア人蔑視だっと思うけど、真偽はわからない。

サッカーを見に行くことが増えた。セリエA全盛90年代のイタリアではティフォージと言う過激サポーターや発煙筒に驚き、イングランド下部リーグチームのスタジアム近くの酒場でビールを煽る男たちに囲まれた。
ワールドカップや欧州選手権のサポーターたちで賑わう広場では、メジャー国との試合を控えて応援ボルテージを上げる東欧など新興国を見、開催国が勝ち上がりナショナリズムを煽るスポーツの力を目の当たりにした。

ヨーロッパスポーツが僕の歴史文化への関心の入口だとすれば、次の扉はトルコで開いた。
ボスポラス海峡や古代ローマ遺跡エフェソスで悠久の空を見上げた。

それからも、読書、ワインなどと旅のわだちは拡がり、それぞれがリンクして僕の身体の構成シェアを増しつつある。
それと、もう30年暮らす自宅のある街への愛着が、次の旅へのモチベーションにもなっていることに今気が付いた。
僕の旅は、帰る場所がなければ成り立たないのだし。


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