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食べ物が人間を作っている

友人のイタリア人男性Fさんは30歳代前半。僕は、北イタリアベネト州の彼の地元で会うのは先月で3回目だった。

初めて訪ねた独身住まいの彼の自宅は、築数百年の石造りの屋敷の一角で2フロア。
ガス台周りが新しいぐらいで、横幅2メートルはある石の流しや暖炉。母屋の蔵で見つけて磨いたという年季の入った革のソファなど。一目見ただけで入居時に買い揃えたような家具は一切ない。彼の価値観の鏡のような暮らし。
僕の日常とは違う時間が流れていた。
心地良い空間だった。
natura。自然。

スローフード運動の発祥のイタリア。今もコンビニが無い国。
地域の食材を大切にして素材の味を生かした食事が受け継がれている。
彼の食に対する向き合い方は、食を越えて人生そのもの。

彼と一緒に捥ぎったザクロを口にしながら敷地内を歩いた。
小さな畑では、遠目には雑然としている一角に多くの野菜や果物を栽培されていた。
収穫のことや、叔父さんの手作りの発泡ワインの話を聞いた。
自宅ドアに彼が細工した穴から子猫が出てきて、悠然と向こうに歩いて行った。

母屋の屋敷には、米とトウモロコシの農場を経営する叔父さんが住んでいる。
田畑は近隣にも点在していて、16世紀に作られた水車が今も現役で稼働している。
Fさんは、人口10万人の古都ヴィチェンツァのアパートに住んでクルマで30分かけて農場に通っていたのだが、最近今の場所に越したそうだ。「もっと田舎に住みたかった」とのこと。

農場で招かれたいただいた食事は、どれも優しい味。収穫したものを含む地域の食材を、塩、コショウ、オリーブオイル、チーズ、ハーブ類などを工夫して調理する。
シンプルは簡単ではない。

食事のための工夫や用意に手間を惜しまない。
家族や仲間との大切な食事の時間のために。

食べ物は人間を形成している。
彼といると実感する。

ちなみに、僕が土産で持っていった「発芽玄米」をとても喜んでくれた。

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