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20年前の東北鈍行列車の旅

たしか息子が小学4年で娘が2年生の時だったと思う。僕は二人を連れて「青春18きっぷ」を使った2泊3日の旅に出かけた。
もう20年も前のことだ。
早朝浦和駅から宇都宮線に乗り、東北本線は何回乗り換えただろう。さっき時刻表で調べたら青森駅まで11回乗り換えて12時間弱と出てくるから、当時も似たようのものだったと思う。
暗い時間に青森駅に着いて、探したどり着いたビジネスホテルが二段ベッドだったことを覚えている。
たぶん僕は娘と下段に、息子は上の段にひとりで寝たんだと思う。

翌日は、日本海沿いを走る五能線に乗り、昼の内に着いた深浦駅で降りた。深浦に特段目的はなかった。

駅からぶらぶら歩き、公園で遊び、ほんとうに何気なく見かけた古い民宿の玄関を開けて泊まらせてもらった。
通された2階の和室の道路側が木枠のガラス戸になっていて、そこからは白波が飛沫(しぶき)をあげる海岸がよく見えた。

3日目。秋田から奥羽本線に乗り、山形、福島を通って、やはりかなり多くの駅で乗り換え、浦和駅に戻った。

横座りのシートと向かい合わせの直角シート。
車中何十時間も、子供たちとどんな話をしたのかな。
二人ともゲーム機は持っていなかった。
中距離列車だし、混んでくることもあったから、他の客に席を譲って僕は立っていた時間もあった。

どの辺りでのことだったか、吊革を持ち、横に並んだ男子大学生と言葉を交わした。浮かぶのは、子供たちがシートで互いに寄り掛かかり寝ている姿を目にしながら、大学生と就職について話し込んだ光景だ。

なぜ東北鈍行列車の旅に出ることになったか覚えていない。
だけど僕はそんな父親だった。たぶんたいした理由もなく思い立ったように出かけたのだと思う。

何かがどうかしたなどまったくない旅。
でも大切にしたい思い出。

娘も先週から家を出た。

#読書     #旅行   #ワイン   #世界史 #エッセイ #映画

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