見出し画像

槍ヶ岳と女子大生のお尻と上高地

1979年。15歳の夏に北アルプスの槍ヶ岳に登った。もちろん初めての登山。
父親から聞いた穂高の尾根で見たブロッケン現象など幾つもの山での体験の話しに触発されたのと、何ていうか、父親への対抗心みたいなのはあった。

誰にアドバイスをもらうこともなくガイドブックと数枚の五万分の一の地図を頼りに、夏休みのある日新宿から中央本線に乗った。
買ったばかりのキャラバンシューズと、キャンプに行くときに使った背負子(しょいご)を背負った。

上高地からの登山道は、今では明るいファッションの人たちが行き来するけど、当時は大正池から3時間も歩けば本格的な恰好の人たちだけだった。
2日目の夕方、頂上直下の山小屋に辿りついた。槍の名そのままに尖っている山頂は、近くで見上げてもやはり尖っていて、目前にせり立つ岩場にたじろいだ。

大人たちで賑わう山小屋で、僕の不安が伝わったのか、女子大の山岳グループの一人が声をかけてくれた。
「明日は、あたしの後ろについて登って来なよ」
そんな感じで言ってもらったと思う。
翌朝僕は、大学生のグレーのニッカズボンの大きなお尻について、岩場をクリアして登頂した。

あれから40年以上。
山は好きだけど、趣味ほどになったことはない。
じつは大変な思いをした槍ヶ岳より、上高地の美しさが染み付いて、今まで幾度となく出かけている。ずっと「日本で一番好きな場所」と言い続けている。
別天地という言葉がぴったりなところだと思う。

#読書 #旅行 #歴史 #ワイン #世界史 #エッセイ #海外旅行 #サッカー #映画 #槍が岳 #上高地

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?