tomono

• 学生時代、社会人時代の経験を題材にして現代小説、エッセイなどを書いています。青春、恋愛、友情、人生、社会の現実を描いていきます。文学部出身の退職者です。

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最近の記事

性の泉 第1夜

 レンタルビデオの店に入ると、奥の方にアダルトコーナーがあった。その場所は、店内では目立たないが、品揃えは充実している。他のコーナーに引けを取らない。それだけ利用者が多いということだろう。  幸男は時々、アダルトビデオを借りに行く。棚のビデオは、パッケージに刺激的なヌードが映っている。選んでいると、目移りがして、いつの間にか時間が経ってしまう。  客同士は、目を合わさないようにしている。棚の周りを動き回る。みんな、こういう場所にいるところを、他人に知られたくないと思うらし

¥300
    • ツバメの来る日 第9章 正月の見合い

      (前章までのあらすじ~ 一方、母親が由美に手紙を出し、息子と会ってほしいと頼んだと知る。青木は母親を批判し詫びの電話を由美に入れる。由美はまた電話をくれという。やがて母親は病気で入院し、青木は病気が突飛な行動の原因だったのかと思う。また電話すると由美は彼氏と結婚すると言う。青木は片恋の終わりを感じる。その反動か、万里と電話のやりとりをする。秋山は高齢の母親が入院し、心を痛める。加えて友人が交通事故で死亡し、右往左往する。実家の縁談を聞き流す。相談所のクルージング・パーティに参

      • ツバメの来る日 第8章 女性たちの結婚

        (前章までのあらすじ ~ 青木は後輩の清水が妹と一緒にいるところに出くわす。秋山と語り合い、万里に連絡することを思いつく。清水が交通事故を起こし、自分も同乗者も死亡したことを知る。清水の葬儀に向かう敬子から、妹と紹介され女性は同棲していた恋人と知る。相談所のパーティーに参加して、洋館で2人の美人に出会って、交際を希望するが断られる。 青木は万里と10年ぶりに電話で話し、奇跡だと感じる。万里は独身でフランス語を使いスタイリストの仕事をしていた。青木は万里との昔をしみじみと追想し

        • 追分の恋物語(軽井沢5)

          昭和60年8月、軽井沢旅行初日、例年通り自家用車で5,6時間かけて碓氷峠を越える。  夏の盆の行楽シーズンは、すでに過ぎている。しかし、私にとって、軽井沢旅行は1年のうちで最も幸福な時間のひとつに数えられる。  旧軽のあたりを通り過ぎる。中軽井沢のレストランで昼食をとる。 英語を話す日本人の婦人に会った。住んでいるのはアメリカらしい。富裕層の集まる土地柄か、この別荘地に来ると、庶民の町では見かけない人と時々会う。   初めて追分の油屋旅館に投宿する。 追分は、かつ

          ツバメの来る日 第7章 10年ぶりの再会

          (前章までのあらすじ ~ 実家の縁談を受けたが、見合いの当日に遅刻する。都会的で上品な短大出の女性だったが、たばこ嫌いで断られる。青木宅に怪電話は続く。実家の縁談も続く。由美と交際相手のデートの場面を目撃して衝撃を受ける。いくつかの怪電話の相手は職場仲間の後輩女性2人と分かる。デートの目撃について友人たちから意見を聞く。夜中に由美宅のそばに車を停め、由美への未練をかみしめる。由美たちの関係を詮索する。) その日、青木が駅前の喫茶店に入ると、すれ違いざまに一組の男女が店を出よ

          ツバメの来る日 第7章 10年ぶりの再会

          学生時代の忘れ物(軽井沢4)

          昭和59年8月の軽井沢旅行の初日、私の地元の地方都市では地方博が行われていた。この頃、列島各地で地域振興の一環なのか、地方博が盛んだった。 私は友人とともに、私の住む町から電車に乗って地方都市に向かった。市街地からバスに乗り、博覧会の会場に着いて、暑い中を、予備校勤めの友人A、広告代理店勤めの友人Bと一緒に歩いた。  Bは「久しぶりに再会して懐かしかったよ」と言って、私の知っている東京の大学時代の男1人、女1人の名を出した。  会場では、ミス東京やどこかの企業のコンパニ

          学生時代の忘れ物(軽井沢4)

          ツバメの来る日 第6章 デートの場面

          (前章までのあらすじ~ 青木は電話で由美からの断りの言葉を聞き、落胆する。由美とのこれまでのやり取りを回想する。北陸への出張の途上で中西に10年ぶりに再会するが、失恋の感傷旅行になる。その足で万里の住むらしい大阪に回り、過去を回想する。由美に未練を感じる日々が続く。職場の大塚補佐の縁談を断る。職場で由美のそばにいた同期の村山と、由美のことは語らず友人付き合いを続ける。実家の縁談を断る。相談所の紹介で、2人の女性と掛け持ちのデートをする。万里の消息、現住所を知る。)  翌年の

          ツバメの来る日 第6章 デートの場面

          ツバメの来る日 第5章 断りの返事

          (前章までのあらすじ~ 2,3か月経ち、職場で由美と再会する。驚き、近くに就職したことを知ってうれしくなる。職場で残業が続き、時々由美の視線を感じる。仕事による過労・体調不良を覚える。北陸の学生時代の友人中西から結婚したと便りが届く。かつての上司から娘と会って良ければ結婚を考えてくれないかと相談が来て、見送る。青木は自分の母親が由美の件を知人に頼んだと知って慌てる。由美の住所が分かり、用意していたラブレターを出す。由美と初めて電話のやり取りをする。由美は交際している人がいるが

          ツバメの来る日 第5章 断りの返事

          インテリの山荘(軽井沢3)

          昭和58年(1983年)8月だった。私は、その年もまた軽井沢銀座の商店街の通りを歩いていた。  夏は盛りだった。通りは、大勢の観光客でごった返していた。色鮮やかな夏服を着た、若者がその中心だった。  沿道には、若い女性を目当てにしたブティックや旅行客を当て込んだ土産物店が軒を連ねていた。しかし、私や連れの友人は衣料品や小間物には、あまり興味はなかった。それよりも、別荘地帯に広がる緑深い森林に心惹かれた。そこで見る若くてきれいな女性に目が向いた。  毎年、この高原で数日の

          インテリの山荘(軽井沢3)

          ツバメの来る日 第4章 再会とラブレター

          (前章までのあらすじ ~ 青木の職場には魅力的な女性が多い。特に弘子のミニスカート姿に目を惹かれる。帰宅すると万里を回想し恋の時代に戻りたいと思う。怪電話が続き、相手の心理が想像される。仕事で福祉の貸付金の回収に行く。貧困問題を考える。思いつめる由美へのラブレターを要する。退職して職場を去る由美を黙って見送る。子供を作っている同年代の人々を知る。片や自分は同じ時に人生を哲学していると感じる。相談所のデートをする。好感は持てたが平凡な女性と会い、交際する気は起らない。) 新年

          ツバメの来る日 第4章 再会とラブレター

          ツバメの来る日 第3章 女性たちと別れ

          (第2章までのあらすじ ~ 青木が断っても実家、職場の縁談の話は続く。青木は仕事や私生活から離れ、自家用車の中の陽だまりや町中で安らかに過ごす平穏な時間を好む。由美についての職場仲間のうわさが耳に入る。職場で時々やり取りするバイトの由美を意識する。相談所のパーティーに出席し、結婚を深刻にとらえず気軽に参加している会員が多いように感じる。意中の人の妊婦姿を目撃した秋山の失恋話を聞く。青木の自宅に1度のベルで切れる怪電話がかかり、以降続く。実家の縁談で、親は決めろと言い、反発を感

          ツバメの来る日 第3章 女性たちと別れ

          ツバメの来る日 第2章 見合いと恋愛

          (前章までのあらすじ ~ 市役所職員の青木は福祉課に転入する。出身大学の会合でかつて袖にした敬子と再会して気まずい思いをする。心中では大学卒業とともに別れた意中の女性万里と一生会えないことを想像して悲しくなる。失恋などを友人秋山と語り合う。職場では美人の由美に気持ちが傾倒する。実家の縁談で容姿の整った英子と会い、デートを重ねる。過去の恋愛の対象の女性たちを回想し、恋仲になれなかったことを残念に思う。母や仲介者の反応を見ながら、結局英子の件は断る。職場では、青木の本心も知らず周

          ツバメの来る日 第2章 見合いと恋愛

          ツバメの来る日 第1章 度重なるデート

          (第1章のあらすじ ~ 市役所職員の青木は福祉課に転入する。出身大学の会合でかつて袖にした敬子と再会して気まずい思いをする。心中では大学卒業とともに別れた意中の女性万里と一生会えないことを想像して悲しくなる。失恋などを友人秋山と語り合う。職場では美人の由美に気持ちが傾倒する。実家の縁談で容姿の整った英子と会い、デートを重ねる。過去の恋愛の対象の女性たちを回想し、恋仲になれなかったことを残念に思う。母や仲介者の反応を見ながら、結局英子の件は断る。職場では、青木の本心も知らず周囲

          ツバメの来る日 第1章 度重なるデート

          白いテニスウェア(軽井沢2)

           昭和57年8月、私は学生時代の友人2人と軽井沢旅行に出かけた。大学を卒業して2年経ち、20代後半だった。  軽井沢の高原に出かける前の日に、成人映画を見た。これから出かける高原を舞台とした、有閑マダムの若い男性との交情を描いたものだった。私たちは勝手な想像を膨らませた。  旅行の初日の朝、私たちは私の車で高原に向けて出発した。バイパスの道路で碓氷峠を越えた。この峠は暑苦しい下界とさわやかな天上の世界の境目に思えた。避暑地に入れば、街並みも空気も人々の様子も変わる。  軽井沢

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          真珠のきらめき 第10章(最終章)  去り行く恋心

          (前章までのあらすじ ~ パーティーで出会った好みの女性はデートの約束をするが、寸前に断ってきて、石田は落胆する。思い切って昭子に5年ぶりに手紙を出す。返事をもらい喜びを感じるが、それ以上の行動には出ない。運転手の佐藤は実父を失って落胆し、気弱な一面を石田たちに見せる。石田は研修先の温泉地で、年下の女性2人とカラオケを楽しむ。再会した春子は、女の戦いで意中の男を手中に収めたと告白する。石田は小田の息子の縁談は流れたらしいと知る。久しぶりに元上司の遠藤とすれ違うが、半身不随で目

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          真珠のきらめき 第9章 保護と開発

          (前章までのあらすじ~石田はクリスマスパーティーで好みの女性に会い、夢中になる。容姿も、性格も好感が持てて、趣味も合っているような気がする。その場で会員の一人の男と話をする。好色で浮気で、少し不真面目で、相談所で女遊びのような活動をしているように見える。) 事務所に、巣から落ちたトビのヒナを拾った、という連絡が入ってきた。  石田が、夕方の職場の帰りがけに、発見場所と自宅が近いからという理由で、現場に行くことになった。保護しても、時刻が遅くて、今日のうちには自然保護センター

          真珠のきらめき 第9章 保護と開発