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映画『エターナルズ』が私たちに伝えたかったこと
『エターナルズ』は私たちに何を伝えたかったのでしょうか。原作とは大きく変更された設定の数々。クロエジャオ監督の思惑か、あるいはプロデューサーであるネイトムーアの引き金か。米映画批評サイトのトマトメーターでは、批評家支持率が非常に低いポイントを叩き出しました。なぜでしょう。
それはこの作品があらゆる権威を滅多斬りにしたからです。私もあなたもこの映画が攻撃した対象だったのかもしれません。まるでこの映画は新時代の叫びであって、その叫びはどうすることもできない地球に対しての嘆きに違いありません。
セレスティアルズとは資本経済の象徴
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/65739440/picture_pc_7898ead4ee53ea40c58cca7f9a13e51e.png?width=1200)
エターナルズを派遣した黒幕のセレスティアルズは明らかに『資本主義経済の象徴』です。地球の内部に存在したセレスティアルズ(ティアマト)は、人口が増えるほどに成長します。人口が増えるとは資本経済は大きくなる。セレスティアルズは資本主義経済の比喩です。
最後のクライマックスシーンを見れば、それがビジュアル的に表現されていることがよくわかります。金色のセレスティアルズ(ティアマト)は、なぜ金色だったのでしょうか。なぜ金色の大きな手の中でエターナルズは戦ったのでしょうか。金色とは、金=資本そのものであって、手の中で転がされているという演出だからです。
「お前たちは金(カネ)の手の中にいる。転がされているんだ。」
セルシとは既存のシステムを変える者
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/65739477/picture_pc_003d9b57b5426dd39e366d0d9e10dcc0.png?width=1200)
セルシとイカリスの二人は対比として存在したキャラクターでした。なぜセルシはリーダーであるエイジャックに選ばれたのでしょうか。そして、なぜイカリスはエイジャックを殺したのでしょうか。そこにこのエターナルズを理解する大枠があると考えています。
エターナルズの公開の裏では何の"因果"であろうかCOP26が開催されていました。このままの現状が維持されれば気候変動は止まりません。しかし、世界のリーダーは気候変動の原因をつくってきた化石燃料産業を肯定してきました…
「そんなのはウンザリだ。地球がもたんときがきているのだ。」
COP26に集まった民間非営利団体や若者の団体が世界各国のリーダーに訴えています。彼らが抗議しているのはニュースでも流されている通りです。そして今、歴史的に動かなかったピラミットの頂点が動き始めています。既存のシステムに抗議する(SDGs的)存在、それこそが「セルシ」だったのです。
イカリスは既存のシステムを守る者
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/65739569/picture_pc_4855cd8f42ad95efe936f4fb1ee28299.png?width=1200)
とは言っても、人類は化石燃料産業で生きてきました(生きています)。そして、我々日本人もその恩恵を大きく受けています。
環境には良くないと思いつつも、現実問題として経済を支えているのは化石燃料産業です。だからセルシの抗議は到底受け入れることはできません。なぜなら我々こそ「イカリス」だからです。
「やめたいけどやめられない。今さら無理なんだ。」
小さなエターナルズであるスプライトはイカリス側につきました。スプライトは現代の若者のそのものの象徴です。若者が過去の好景気を知らないように、過去に縛られて成長しない存在。本当は成長したいはずなのに。
そして、スプライトはセルシを刺しました。”日本刀”で刺しました。この日本刀こそ大きなメッセージを持っています。私たち日本人もまた「セルシ」殺そうとしていると言っているのです。こんなシーンを見て心が痛まないわけがありません。
「それでも私たちは愛し合っている。たとえ想いは違っても。」
愛という共感が地球と人類を守る
![](https://assets.st-note.com/img/1637835045702-yQoagbcrPq.png?width=1200)
最終決戦でセルシとイカリスが戦っているとき、この戦いが不自然に終わったことを観客は驚いたと思います。
それまで、好戦的だったイカリスがセルシとの愛(性愛)の思い出によって、急に寄り添い始めたからです。そして間も無く、ユニマインドが起動し、金色のセレスティアルズの出現を止めました。
「今のままの資本主義じゃダメだよね。わかってるよ。」
強ければそれでいいという男性原理のイカリスとダメなものはダメというセルシ。分かり合えないという論理を超えてそれぞれが繋がり回答を出しました。互いに一つになければならなかったのです。
「分かり合えなくても人類が滅亡するよりはマシさ。」
「世界はすでにポスト資本主義について考え始めている。」
左翼vs既得権益という簡単な構造ではない
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/65740344/picture_pc_1d64f01be796b51c354611798a7c479b.png?width=1200)
セルシを単なる左翼的なものだと考えてしまうのは議論の幅を狭めてしまうかもしれません。そしてイカリスもまた既得権益そのものだと考えるのも良くないと考えています。
その根源には感情と論理、女性性と男性性があります。私たち人類はこうした二つのものを抱えている矛盾した存在であるということを心に留めたいと思っています。
ディヴィアンツは人類にとっての不条理そのもの
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/65740275/picture_pc_6d771d4cb69af1e59c1c923da5c842cd.png?width=1200)
人類を増やすのがエターナルズ、人類を減らすのがデヴィアンツという構造も非常に面白いです。経済成長は常に人類を物質的に豊かにし、テクノロジーの発展は人類にとっての不条理=デヴィアンツ=災害などを克服しました。まさに10人のエターナルズが人類に施してきたことそのものと重なります。そうして人類は災害のような不条理を克服し、デヴィアンツを克服しました。
「気候変動によって氷が溶け、デヴィアンツが復活するまでは…。」
それでは最初の問いに戻ります。映画『エターナルズ』は私たちに何を伝えたかったのでしょうか。
『エターナルズ』は現状を見直せと叫んでいる
![](https://assets.st-note.com/img/1637835116267-nBe2874Ooc.png?width=1200)
『エターナルズ』が私たちに伝えたかったこと。
それは資本経済を見直そうということではないでしょうか。さらに踏み込めば民主主義を見直そうということではないでしょうか。
愛(性愛)という共感性がなければ、民主主義と資本経済は正常に機能しません。ポスト資本主義を本気で議論する時代がやってきたと思うのです。
そして同時に加速主義がやってきます。広島のシーンでファストスはテクノロジーを発展させたことを後悔していました。加速主義への警告も忘れてはなりません。
また、イカリスが太陽へ自滅しに行くのは、決してイカロスの伝説をなぞらえているだけではありません。皆さんもご存知の通り、イカリス的な男性原理は宇宙に行くしかないのです。なぜなら、気候変動が止まらない地球は捨てるしかないからです。
「だからイーロンマスクは火星に行くのだ。」
『エターナルズ』は映画的文脈での凄みがある
![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/65858739/picture_pc_e7b505ecd3ca0c011fd17b4659be1f7f.png?width=1200)
MCU(マーベルシネマティックユニバース)は時々、私たちに爆弾を投げてきます。この『エターナルズ』は明らかに爆弾です。この程度の記事では語りきれません。
クロエジャオ監督の思惑は大きいと思います。しかしそれ以上に、私はプロデューサーのネイトムーアが仕組んだ爆弾だと睨んでいます。彼が関わったMCU作品は紛れもなく「映画」であって、ジェットコースターではありません。この爆弾を皆が解除しようとすることを願います。
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