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日曜日の朝

薄暗い地下鉄の階段を駆け上がると、ひんやりとした空気が私に迫ってきた。見上げると、駅の出口の形をした明るい青い空が浮かんでいる。

久しぶりのWestminster。この辺りはいつも観光客やデモの団体でごった返している。でも今日は日曜日の朝。観光地といえどもまだ静かで人影まばら。威厳を纏った古い建物の並ぶ景色に、背筋を伸ばして周りを見渡す。

”Look! We are in London!"

横から聞こえてきた歓声の方へ目を向けると、朝早くから動き始めていた観光客だった。その声に釣られて私もその方向を見る。そこにはBig Benが、春の朝日を浴びてすくっと立っている。

早朝のBig Ben。後ろにはThe River Thames対岸のLondon Eye。
観光客で賑わう前の静かなひととき。
著者撮影

そして、数年前に見たBig Benが白いシートですっぽりと覆われた新聞記事の写真を思い出した。当時、改装工事の完了予定は2021年と聞き、ずいぶん先の話だと思ったことを覚えている。

そのころは毎日オフィスに通勤して、同僚と仕事の後にたまにPubへ飲みに行って仕事のうさを晴らしていた。週末は博物館や美術館にイベント、オペラや演劇を見に行って、その後にレストランへ行っていた。そしてちょっと長めの休みが取れると、ヨーロッパの国々へ旅行に行っていた。

キラキラと光る金色と青色の時計台が目に写った。
今はオフィスへ行くことはほとんどなく、自宅で仕事をして、同僚と飲みに行くことは無くなった。以前はふらっと気が向いた時に訪れることができた博物館や美術館は、今ではオンラインで予約しないと入れない。BrexitにCoronavirusでヨーロッパへの旅行は、以前ほど気軽に行くことができなくなった。

そして時計台の後ろに広がる青い空。
でもそのおかげで、自分と向き合う時間ができ、こうやって自分の思いを表現しはじめた。博物館や美術館はチケット制になったおかげで、人混みに押されずゆっくりと鑑賞できるようになったし、今ではオンラインでもある程度作品は見ることができる。ヨーロッパへの旅行は減ったけど、英国の自然や歴史にあふれたCountrysideへ行くようになった。

ふと周りを見回すと、観光客のグループが一組また一組と到着し、Westminsterの駅のあたりは賑わいを増してきている。今年はロンドンはどんな夏を迎えるのだろう?Big Benがシートに包まれていた頃のように、観光客で溢れ、街に賑わいが戻ってくるのだろうか?

こんな青空の下で静かな朝が迎えられれば、私はそれで充分な気がした。

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