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忘れられない青色の海を見た【オーストラリア・グレートバリアリーフ】

海の中は、深くて濃い、そしてとても淡い青色をしていた。今までも、数度海には潜ったことがあった。海外でも、日本でも、海の中をシュノーケリングやスキューバダイビングや何やらで、覗いてみたことがあったはず。

けれどそこは、今までのどんな海とも違った。

日本がすっぽりと入ってしまうくらいの、大きなスケールのサンゴ礁地帯。白や青や緑やオレンジ。なぜあなたはそんなに蛍光色なの、と海の中で思わずしゃべってしまいそうになるくらいの、鮮やかな色たちがそこにいた。

(でもそんなに海の中の写真はない)

1日目。朝6時前に起きて、海へ向かう。船に乗って、1時間、2時間と旅をする。向かうはグレート・バリア・リーフの中でも、「アウトリーフ」と呼ばれる場所。ケアンズの街の海は、正直そんなにきれいじゃない。

なぜ、数時間進むだけで、こんなに、きれいに。

私は、船という乗り物がすきだ。天気の良さも相まって、青の美しさを、ずっと見ていた。

2日目。ケアンズに行くからといって、ダイビングなんてじつは全然考えていなかった。けれど、日本にいる友人も、ここで仲良くなったひとたちも、「ケアンズにいるのに潜らないなんてクレイジーだよ!」と繰り返すから、「そっか」と思って、私は海に行くことにした。

……行くのならば、一番きれいな海が見たい。欲張りだからね。けれど正しい。

日帰りでたどり着ける、グレート・バリア・リーフの最北端。陸から一番遠い場所。それより遠くに行くためには、泊まりで出かけねばならない。気候が良ければ20〜30メートルは海の中が見渡せるという透明度の、「エイジンコートリーフ」という場所へ向かう。

大陸棚の、いちばんはしっこ。

浅瀬には、小さな魚たちと、サンゴが。(カメやサメ、ナポレオンフィッシュなどもたくさんいた)

近くには、どこまでも続く、深い深い、海の底へと続く道。足がつかない、なんてもんじゃない。

地球は、海で出来ている。本当に、そう思った。

陸の上だけでも私はこんなに興味があるのに、もしこのまま海の中にまで興味を持ってしまったら、私はどうすればいいんだろう。人生が一度だけでは、本当に足りなくなる。

それほどそこは、美しかったのだ。頭がクラクラするほどの、深い、淡い、濃い青。私がいつも気に入って調整している、「あの青」の色をしていた。

どちらが上下かわからない。めまいがしそうな、光。

「この海は、ハマるよ。」

と、海に潜る前にダイバーが私に言った。何をそんなに大げさな、と思っていたけれど、そうか、それは、こういうことか……。

***

以前、美容のライターをしていた頃に、とても素敵な女性が言っていた。シャドウも、チークも、リップもすべて。メイクは、自然の中にこそ色合いのヒントがあると。

花を見て、空を見て。自然の中に見る色の組み合わせが、美しくないはずがないのだからと。だから私は、いつも自然を見るのだと。

私は、海の中でそれを思い出していた。カラフルで、大げさで、それでいてふつうに生きている、泳ぐ魚たち。サンゴ、波、太陽から降り注ぐ光と、それに合わせて刻一刻と変わってゆく世界。

色合いの美しさの妙が、海の中に溢れていた。

きっともう一度、私はこの海に来る。放心しそうな楽しさの中で、うっすらとそう思う。

あの海は、ずるい。できればあなたと、もう一度潜りたい。


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