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ともみの部屋 #2

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伊佐知美の、世界一周の旅とエッセイ。2016年10月〜
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2017年2月の記事一覧

変わらないものなんて何ひとつない。

変わらないものなんて何ひとつない。

みなとみらいには、いつも気持ちがよい風が吹いていた。空が広いのがすき。そう思って歩いていた、20歳の頃。

あれから10年(え……笑)経っても変わらない風の匂い。近くなるランドマーク見つめながら、ゆっくり歩みをすすめる夕暮れの数十分。

こんなゆったりとこの場所を歩いたことないかもしれない、とそれでも原稿に追われながら頭の中で文字を拾う私は穏やかに思っていた。

けれどふと気が付く。あぁ、昔よりも

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いまふたたびの、旅へ。出よう。

いまふたたびの、旅へ。出よう。

目の前に「とん」と差し出されたハンバーガーを、専用の袋に入れて、少しつぶしてぎゅっとして、うん、ハンバーガーだ。と思って口へ運ぶ。

見つめる2秒。何かを頭の隅が、思い出す。

そうだ、あれはたしかオーストラリア。大好きだった。疑いなくその先どこまでも夏だった。海光る、波寄せる、風そよぎ吹きすさぶ夜もある、春終わりゆき過ぎたゴールドコーストとバイロンベイ。

ぶわり目の前の景色が一瞬でカチリと切り

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結局ひとは、無い物ねだり。

結局ひとは、無い物ねだり。

暗くなっていく空を見ながら、ガラス張りの部屋の中、広い天井の下、私は今日もパソコンを開く。

灯る明かり、回るシーリングファン、隣で笑う、知らない言葉の知らない人。

日本にいたって海外にいたって、今の私はとても自由だ。好きな時に好きな場所で、愛すべき仕事に囲まれて、また新しい目標をつくって。

けれどどうして、いつまでたっても心のすべてが満たされることがないんだろう? 「ねぇ今の自分も認めてみた

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昔の記憶を呼び覚ます雪の音、夜の気配【北海道・札幌】

昔の記憶を呼び覚ます雪の音、夜の気配【北海道・札幌】

さく、さく、という音が足を動かすたびに鳴る。しん、と静まり返った夜、さく、さく、とすでに踏み固められた雪の道を歩きながら、白い息を吐いて、待つ人のいる店へと向かう。

北海道は、圧雪に近いところが多いのだな、と故郷・新潟との違いを想う。びちゃびちゃ、ぐちゃぐちゃにならない雪は、いつまでも塊のままで、なんだか、いつもより白さを保っているように見えてくる。

雪は、夜の音を吸い込んで。遠くに聞こえるな

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