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昔の記憶を呼び覚ます雪の音、夜の気配【北海道・札幌】

さく、さく、という音が足を動かすたびに鳴る。しん、と静まり返った夜、さく、さく、とすでに踏み固められた雪の道を歩きながら、白い息を吐いて、待つ人のいる店へと向かう。

北海道は、圧雪に近いところが多いのだな、と故郷・新潟との違いを想う。びちゃびちゃ、ぐちゃぐちゃにならない雪は、いつまでも塊のままで、なんだか、いつもより白さを保っているように見えてくる。

雪は、夜の音を吸い込んで。遠くに聞こえるなにもかもをも、その白さにたくわえて、しん、と夜を飲み込みゆく。

さく、さく、と足元で。夏が好きだすきだと言ったところで、現金なもので冬も悪くない、と雪国生まれの私は想う。

肌を凍りつかせるような、厳しい気温が昔の記憶を呼び覚ます。あぁそうね、私はいつもこんな道を歩いて、小学校へ行ったり、中学校へ行ったり、高校へ行ったり。雪道にランドセルの中身をぶちまけたり、除雪車の音と匂いに起き出したり、素足にミニスカートをはいてあられ雲に腿をさらけ出したり。

友だちみんなと笑いあって、先生に怒られて。あぁ懐かしいな、と目の前の札幌の景色に昔を見る。いつからだろう、毎年雪を踏まなくなったのは。しみわたり、がしたいなぁと弟と田んぼで遊んだ風景も思い出す。

***

ずうっと昔、まだ幼稚園に入る前。まだ幼い私は、ここ札幌でも暮らしていたのよと母は言う。もう記憶はあんまりないけれど、数年ぶりに訪れる札幌は、どこかなぜか、きらいじゃない。

夏が好きだといったところで、そうね冬も素敵だわ、と心の底から笑みこぼれる。氷の像が、一刻一刻。カタチづくられ、削り融け。

あと数日で、札幌ではまつりが始まるのだと、たくさんの人が言っている。おしゃれなお店も多いのよ、と暮らす人が誇らしげに教えてくれる。

今度はどの街に住もうかな、と青い空見て想いを馳せる。北も南も、行きたいところがたくさんある。いつまで放浪するのか知らないけれど、まだ私は、どこにだって住めるのだ。

(なんか氷像、すごい……)


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