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ユーザーの声が届く組織の”5つの型”

Insight Techで代表をしている伊藤です。
いつもnoteを読んで頂き有難うございます。

最近よくお聞きする「生活者・ユーザーの声(VoC)の分析ができても意志決定に繋げられない」というお悩みにお答えして、「ユーザーの声が届く組織の”型”」について私の経験を通じて綴ってみたいと思います。

VoC(Voice of Customer)への期待の高まり

「ユーザーや生活者の声に基づいて新しい事業や商品を考えたい」というVoC(Voice of Customer)活用に関するご相談が増えています。

私たちInsight Techでは兼ねてから【VoC経営】の重要性を掲げています。【VoC経営】とは、VoC活用を「顧客満足度の向上」「クレームの撲滅」といった狭い定義で捉えず、「声から価値を生み出す」ことを目指す経営スタイルです。

VoCの活用=声から価値を生み出す

様々な環境変化や不確実性の向上に伴い、企業だけでは解が導き出せない時代になりました。つまり、企業と生活者との関係が変わりつつあります。その中で、ユーザー・生活者と「価値共創のパートナーシップ」を紡ぐことが重要であり、そのヒントがVoCに隠されていると信じる企業が増えているのです。

企業と生活者の関係が変わることへの対応=VoC経営

なぜVoC経営が求められるのか、どのようなシーンで有効なのか、に関しては、以下のシリーズ「なぜ、いま、VoC経営なのか。」をご覧ください。


VoC活用は「分析・洞察」では終わらない

「VoCの中にビジネスを強くするヒントが隠れている」と感じたとしても、実際にVoCは音声データ、テキストデータなどで蓄積されているケースが大半です。売上データのように簡単に集計・分析できないという「VoC活用の難しさ」があります。

Insight Techでは、不満買取センターで収集した独自のVoCをワンストップで検索・解析できる「不満ファインダー」やVoCのテキストデータを意志決定につなげる「アイタスクラウド」、特徴的なN=1を見つけアイデア創発に繋げる「アイデアイ」などVoC活用ソリューションをご提供しています。

このようなVoC活用ソリューションをご提案し、実際にご活用頂く中で、多くの企業で次の課題が生まれてきたことを実感しています。

VoC分析ができ、生活者インサイトを炙り出すこともできるようになった。
”でも、どう意志決定に繋げたらいいのか分からない”

という課題です。

VoC活用を意志決定につなげるための条件

「どう意志決定に繋げたらいいのか分からない」という課題にどう対応するかを考える前に、この課題を解決するための条件について考えたいと思います。

各社の文化や組織形態によるところも大きいですが、それを問わず、以下が満たされない限りはどのような意志決定フローを構築したところでVoCから価値を生み出すことは難しいと考えます。

①【客観性】抽象的な議論ではなく客観的な証拠に基づき議論できること
②【標準化】単発で終わらないように手順や仕組みが標準化されていること
③【打ち手】分析して終わりではなくアクションに繋げられること
④【ナレッジ】散発的な取り組みでなく知見が集約・蓄積されること
⑤【スピード】ニーズは変わる、を前提にスピーディに意志決定されること

こうやって整理してみると、この5つ条件はなにもVoC活用に限らず、時代の変化に対応したイノベーションを組織的に生み出し続ける条件とも読み取れるかもしれませんね。

「声が届く」組織の”型”

私自身、多くの企業の皆様とご意見交換する中で、【VoC経営】を実現できている企業には、いくつかの組織の”型”があることに気が付きました。

これを「声が届く」組織の”型”と定義します。

いずれの”型”も上記①~⑤を実現している前提ですが、各社の特徴・組織形態を前提としながら【VoC経営】の狙いを体現しようとした結果の”型”ということが出来そうです。

具体的には以下の5パターンがあることに気が付きました。
もちろんこれに該当しない企業や1つの企業で複数のパターンを組み合わせている企業もおありかと思いますが、標準的な”型”としてご理解ください。

パターン1:VoCドリブン型
パターン2:部署横断型
パターン3:トップダウン型
パターン4:顧客接点部門主導型
パターン5:横串組織伴走型

パターン1:VoCドリブン型

VoCドリブン型は【VoC経営】をより本質的に捉え、事業運営において最も重要な要素として位置付けているパターンです。

苦情・問合せに限らず、アイデアや要望を集める仕組みを常設し、そこで集められた声から商品開発・サービス企画を進めることが定常化している企業です。

このパターンのメリットとしては、VoC活用が顧客のロイヤルティを生み出す好循環が実現可能であることが挙げられます。
デメリット(成功の条件)としては、運用負荷が大きく、商品化・サービス化にスピードが必要であることが挙げられます。

VoCドリブン型がフィットするのは、「対顧客接点要素が強いサービス業」や「商品開発サイクルが短い食品業界・日用品業界」などと想定できます。


パターン2:部署横断型

部署横断型は、所管部を横断して定期的な商品開発会議が実施されており、自所管部だけでなく他所管部からの「よそ者」としての意見も反映されるパターンです。外部VoCだけでなく、社員自らの「不」や「提案」が起点になっているのも特徴と言えます。

このパターンのメリットとしては、制約にとらわれすぎない多角的な目線でのVoC活用が可能であることが挙げられます。
このパターンのデメリット(成功の条件)としては、社員・関係者が生活者目線でニーズを洞察できることが前提であることが挙げられます。

部署横断型がフィットするのは、「商品開発サイクルが短い食品業界・日用品業界」や「複数カテゴリで多角的に事業展開する複合企業」などと想定できます。

パターン3:トップダウン型

トップダウン型は、所管部やCS部門が把握するVoCを定期的にトップに集約し、そこでトップが優先事項を判断し対応を指示するパターンです。

このパターンのメリットとしては、ビジネス戦略と整合した統率のとれた意志決定が可能となることが挙げられます。
このパターンのデメリット(成功の条件)としては、VoCにバイアスや忖度がかからないようにする必要がある点が挙げられます。

トップダウン型がフィットするのは、「金融機関や運輸など顧客保護が重視される規制業界」や「ビジョナリーな経営者によるスピーディな意志決定が有効に作用する企業」などと想定できます。

パターン4:顧客接点部門主導型

顧客接点部門主導型は、コンタクトセンター部門やカスタマーサクセス部門など顧客接点を担当する部門が主導するパターンです。コンタクトセンター等に寄せられる声を仕分けし、優先度・緊急度が高いVoCを各所管部へ展開する流れとなります。定期的な会議体を通じて所管部と課題を共有するケースが多いようです。

このパターンのメリットとしては、鮮度・解像度の高い情報が直接所管部に届けられることが挙げられます。
このパターンのデメリット(成功の条件)としては、顧客接点部門のミッションを明確に定義する必要があることが挙げられます(例:コールセンター部門のミッションとしてVoCの価値化を定義する、など)。

顧客接点部門主導型がフィットするのは、「CRMが導入され顧客接点部門に多くの声が蓄積される業界」や「カスタマサクセス部門と企画部門が近い距離にある企業」などと想定できます。

パターン5:横串組織伴走型

横串組織伴走型は、VoC活用に関するナレッジや専門性を横串組織に集約し、VoCに限らないマーケティングデータを統合的に洞察できるようにするパターンです。一般に調査部やマーケティングリサーチ部が該当します。
所管部のニーズに応じて伴走、そのナレッジを蓄積し全社活用を狙います。

このパターンのメリットとしては、マーケティングの専門性を高める好循環が実現可能であることが挙げられます。
このパターンのデメリット(成功の条件)としては所管部要望ありきの受け身にならないミッション定義が必要であることが挙げられます(所管部の要望に対応する、という受け身ミッションに加え、所管部に主体的に提言するミッション)。

横串組織伴走型がフィットするのは、「所管部において独立した企画機能を持ち意志決定できる企業」や「マーケティングリサーチ機能が特定部署に集約されている企業」などと想定できます。


おわりに

いかがでしたでしょうか。
「自分の会社はこの型だな」とか、「今後組織的にVoC活用を進めるとなるとこの型がなじみそうかな」といった感想をお持ち頂けたならこんなにうれしいことはありません。

VoC活用はあくまで手段です。

企業と生活者との関係性が再定義されようとする中で【VoC経営】はユーザーファーストを超えて、ユーザーとの価値共創を実現する”ムーブメント”だと確信しており、現に【VoC経営】を目指すお仲間も増えてきました。

Insight Techは「声が届く世の中を創る」ことを目指すVoC活用のプロフェッショナルであり、VoC経営実現のパートナーです。各社の特徴にあわせたVoC経営の実現をワンストップでサポートします。

このnoteが「ユーザー・生活者の声をもとに経営のありようを考えるVoC経営」の実現に向け少しでもお役に立てばうれしいです。

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