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海外MBA受験にまつわる壮大な誤解

海外MBA受験については、整理が曖昧になっている結果、壮大な誤解となっている事項がいくつかあります。

それらについて、個別に観察してみたいと思います。

なお、学校による個別性が強いであろう内容、例えばキャンパスビジットをしておいた方が入学審査上有利になるか、3つ目のラウンドでの受験は不利になるか、などは含んでいません。

したがって、以下の内容は、原則、学校に関係なく概ね当てはまるものとご理解ください。


入学審査において点数が高いほど有利


これは半分正しく半分間違い
です。

まず、TOEFL/IELTSについては、学校が求めている基準点を超えている限りにおいて、もはや有利/不利はほぼ出ないでしょう。

面接でのパフォーマンスに重きが置かれることが多いのと、そうでなかったとしても、海外MBAにおいて英語はあくまで道具に過ぎないためです。

もちろん、高い点数であれば目に付きやすいし、他のスペックが完全に同じ受験生との比較で高い点数の受験生の方が若干有利になる可能性があることは否定しません。

しかし、色々な構成要素が絡む海外MBA入学審査において、基準点以上は些末な差分と言えるでしょう。

それに対して、GMAT/GREは高ければ高いほど良いと言えるでしょう。

但し、これも既に730点という高得点を保有している人が750点に上げる努力が真に必要か、などは微妙なところであるのと、学校による個別性も孕みます。

バランスの取れた受験戦略を心がけたいところですね。

国際経験が豊かでないのは日本人だけ


日本人が英語レベルで最下層であろうことは否定しませんが、海外MBA前の国際経験の豊かさでそうとは必ずしも言い切れません。

イランを想像してみましょう。

経済制裁を長期にわたって受けているかの国で、海外居住経験が豊富だったり、イランにいながら国際的な仕事を日々している人がどれだけいるでしょうか。

台湾を想像してみましょう。

日本で生活している台湾人のような方は別として、この小さな台湾発の企業所属で海外駐在している人がどれだけいるでしょうか。

何と比べるかによりますが、こういう見方をすれば、海外駐在などの機会はそれなりにある日本が海外との接点を持ちやすい側面もあることがわかるはずです。

英語に焦点を当てるならば、問題は、日本が均質的な社会すぎて何も意識しないで日本で暮らしているとろくに英語運用能力を伸ばせない点と、日本語が英語からかけ離れている点にあります。

後者についてはどうしようもありませんが、前者については、海外駐在といってもピンキリである点は特筆に値するかと思います。

日本からのお偉いさん来訪対応と閉じた駐在コミュニテイで週末ゴルフを延々と繰り返すような駐在形態もあれば、日本人単騎で乗り込んで現地の社会にどっぷり浸かって大胆な経営改革を現地で実行するような駐在形態もあります。

たとえ国際経験が足りなくても、例えば前者のような方との比較で、英語力で長けることは日本国内にいても可能です。

それが困難なのだとしたら、英語に関しての蓄積されてきた努力が質量面で純粋に足りない可能性が高いです。

国際経験にしても、たとえ仕事ではそういった状況に恵まれなくても、様々なものがオンライン化しているこのご時世、日本人の場合、オンライン英会話の枠を超えて色んな経験を積むことができるはずです。

日本が他国比で恵まれた環境にあると言える部分もあることは前述のイランと台湾の事例からも明らかなので、環境を言い訳にせず、愚直に頑張りたいですね。

ちなみに、英語ネイティブの国なので変化球ですが、世界一の国と自負する自国しか知らないという米国人もそれなりにおり、それを逆にコンプレックスとしている方の事例も少なくありません。

国際経験の豊かさという点で悩むところがあり得るのは日本人だけに限らないということです。


巷に出回っている合否関連情報は正確

正確な場合もありますが、不正確な場合も多いです。

まず合格率についてです。

IESE(イエセ)についても一部界隈で出回っている当該情報があるのは知っていますが、残念ながら不正確です。

時期も含めて出どころがわかりませんが、現在は非開示です。

他校についても、現実と著しく乖離している例を複数知っています。

他校における実際の正確な数値を私が知ることは当然不可能ですが、業界人として大まかな見当はつく場合もあり、それと比較しても乖離が著しいということになります。

入学者数/受験者数で合格率を叩き出している分析も見かけたことがあります。

算数の基礎的な話ですが、合格率は、合格者数/受験者数ではじき出されるべきものです。

合格してからその学校に入学しない背景は色々あり得ますが、最たるものは合格した他校に入学するというものです。

次に合格体験記についてです。

IESEを受験して合格に至らず、結果的に他校に入学したけれど、IESE受験という事実自体を伏せている日本人の合格体験記をこれまで少なくとも3件見たことがあります。

受験生の細かいプロフィールや点数まで把握している立場上、この照合は難しくありません。

なぜ伏せるのか、無理やりポジティブに解釈するのであれば、私なり誰かしらに気を遣ってということがあり得ますが、おそらく現実的には異なるでしょう。

全体の受験記を綺麗に見せるためではないでしょうか。

受験生にとってはショッキングな話かもしれません。

受験生目線で正確性が強く期待される合格体験記において見栄を張って事実にそぐわない描写をすることはそれなりに罪深く、そんな見栄を張るくらいなら誰もが見れる形の合格体験記など書くべきでないと私は思ってしまうのですが、別の考え方をする方もいるようです。

なお、海外MBA合格体験記は、以下の海外MBAドットコムなどに蓄積されており、上記の内容は、学校別のページではなくこういったページへの記載事項を念頭に置いています。

ということで、巷に出回っている合否関連情報に過度に踊らされたり臆したりせず、受験戦略を適切に練られると良いでしょう。


年齢の壁など関係ない

これは見方によってYes/Noが変わりますが、新型コロナウィルスの影響で機を逸して歳を重ねたものの海外MBAに挑戦したいという日本人が増えた印象があります。

また、35歳転職限界説が該当しない例が一般的に増えてきたことも、そのような機運に繋がっているのかもしれません。

卒業時35歳超の受験生が入学審査上どう扱われるかは学校による差分もそれなりにあるはずなので踏み込んだ議論は控えます。

しかし、ここで強調したいことは、少なくとも、目安として卒業時35歳超の人がそれ以下の年齢の人と同じキャリア機会を得られると思うべきではないということです。

海外MBAの入口ではなく出口の話です。

一般的に想起される中途採用周りの転職で達成可能な内容で海外MBA後のキャリアとして十分なら、その限りではないのかもしれません。

但し、海外MBA採用の場合、自分の市場価値にプレミアムをつけつつ、業界・職種・土地のいくつかないし最大全部を変えるキャリアチェンジを実現することを想定するのが一般的です。

これら三要素のうち何をどこまで変えたいかによってその難易度は異なるし、不可能と断定する必要はありません。

しかし、この前提で、少なくとも卒業時35歳超の人とそれ以下の年齢の人が同じキャリア機会を得られるわけではないという小さな危機感は受験生としても持っておくことを強くお勧めします。

こういった年齢のレンジに差し掛かった方にとって最も難易度が高いのは、海外就職で海外MBAを毎年採用しているような企業(非日系企業)に入社することでしょう。

反例もあるかもしれませんが、それはいわゆる生存バイアスである可能性も一定程度あるし、海外MBA前のキャリアが非常に強い、業界/職種は一切変えないなどの要因が支えになっている可能性も高いです。

他方、以前の記事でも述べたように、IESE卒業時37歳(海外MBA前職歴13年)で、誰もが知るトップグローバルコンサルティングファームの東京オフィスに入社している例もあるので、勝手に海外MBA受験の全てを諦められませんように。

海外MBA入学審査のみ、つまり入口のみに責任を持つ担当者、更にはマーケティングのみ、つまり入口の半分のみに責任を持つ担当者は必ずしもこういったことを指摘しないかもしれません。

しかし、私はキャリアサービス、つまり出口にも責任を持つ立場ですので、該当し得る受験生とこの点を更に掘り下げた会話をすることに躊躇いがありません。

これは出口の話なので、受験とは直接関係しないと言えばそうなのですが、受験時から特に認識しておくべきことの1つでしょう。

この感覚を持たない受験生が昨今増えていることに若干の危機感があるため、あえて記述しました。

なお、派遣元に戻る社費生にとって本件は直接関係する話ではありませんし、インターンシップについて言及しているものではありません。


エッセイカウンセラーは全てを精査してくれる

今年、多数の出願書類で「DX」という単語を目にしてきました。

しかし、これらは全て日本人のもので、他国のものを幅広く見る中で「DX」という単語を見ることはなく、代わりに「Digital Transformation」という表記が出てきます。

私は普段あまり日本のニュースを日本語で収集しないので、「DX」という言葉の意味を理解するのがおそらく日本人のビジネスパーソンとしてはやや遅かった方だと思います。

「DX」には、「SNS」ほどではないかもしれないながらそれに近い和製英語のニュアンスが含まれ得るはずです(英語では「SNS」ではなく通常「Social Media」と呼称します)。

したがって、出願書類の文脈以外においても、通常日本が話に絡まない状況でこの仕事をしていて「DX」と耳にしたことがありません。

書類の完成度から察するに十中八九エッセイカウンセラーの手が入っているはずながら、「DX」のまま完成物となっている事例が多数ありました。

「DX」がいかなる場合でも間違いとまでは思いませんし、私はそれを断言できるような英語ネイティブではありません。

「DX」で大丈夫だよと言う英語ネイティブの方もおそらく一定数いるでしょうし、実際大丈夫なものなのかもしれません。

しかし、「DX」に違和感を持つ人間が別途一定数いることはおよそ自明なのにその記載が残っていることから想像できることは、やはりエッセイカウンセラーの仕事を100%信じていいかは疑問の余地が残るところということです。

無難に捌くなら、「Digital Transformation」の方が適切なのは明らかだからです。

その背景には、英語のそのあたりの感覚が弱い方がエッセイカウンセラーである、英語ネイティブだけれど注意力がやや散漫なエッセイカウンセラーであるなど、いくつか考えられますが、想像の域を出ないところです。

いずれにせよ、これはあくまで一例ですが、エッセイカウンセラーへ頼りすぎるのは危険であり、頼る必要があるならば頼り方にも注意・工夫が必要(また、英語ネイティブが非ネイティブよりエッセイカウンセラーとして常に信頼が置けるとは限らない)というのが教訓ではないでしょうか。


おわりに

他にも思いつく内容はいくつかあるのですが、主語を大きくしてしまったので、反論の余地がある内容については極力控えることにしました。

受験生にとって大きな関心の1つであろうランキングについても思うところがありましたが、以下の過去記事との重複が多くなりそうだったので、控えることとしました。

励みになる内容と人によってはそうではないかもしれない内容と両方含んでいるかと思いますが、是非、なるべく正確な情報に触れて、海外MBA受験に役立てて頂けることを願います。


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