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海外MBAランキングを信じて良いのか

私の元上司(当時アドミッションディレクター)で現在はIESE(イエセ)を離れて、現在はMenlo ConsultingのMBA入学審査コンサルタントとして活躍するPascal Michels(IESE MBA Class of 2010) がおそらく書いたと思われるMBAランキングに関しての記事、”MBA Rankings – Useful Tools or Hot Garbage?”に感化されての寄稿です。

本記事が暗示する通り、彼は在任中から職掌に囚われることなく非常に率直で、上司に歯向かいつつ部下を庇うタイプだったので、中間管理職としては適任ではなかったかもしれません。

但し、私もそういったタイプですし、今でも特に尊敬しています。

二人で渋谷のロフトでお土産を大量買いしたり、労いの趣旨で人生一の高級寿司を銀座にて彼に奢ってもらったこと等、色々思い出が 笑

海外MBAランキングに関わる本記事内のいくつかのポイントを掘り下げてみたいと思います。


ランキングの操り方

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学校としてランキングを上げる最も簡単な方法として、MBA前のキャリアが弱いけれどもGMATやGRAが優れた方々を合格させることで平均値を上げる(そしてそれによってランキングが高まった後、キャリア面も兼ね備えた人を入学させるだけの体力を持つ)ことが、本記事で指摘されています。

但し、Financial Timesのランキングのように、GMATやGPA等、関連する構成要素がないあるいは限定的なものも存在します。

次に、米国のプライベート・エクイティ勤務といった給与水準が著しく高いMBA前の職歴を持つ方に対して本来不要であろう財政支援パッケージを提供して手厚く迎え入れることで、結果、卒業後の給与水準も一層高い人を続々と輩出していくという手法も、本記事で指摘されています。

MBA前の給与水準にある程度MBA後の給与水準が引きずられるという前提があるものと見受けられます。


フィットを考慮しないランキング

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海外MBA期間の経験自体が残念なものである場合、学位の利点を最大限享受することにはならず、尊敬する人や一緒に過ごしたい人とネットワークを築けるかどうかが海外MBAの価値の一部であるものの、この点はランキングに反映されていない、と本記事で指摘されています。

この点は、若干舌足らずかと思いますが、例えば、2年制と1年制のプログラムでは上下の学年との繋がりの築きやすさという意味で言えば前者に軍配が上がります。

また、日本人私費生が自分1人しかいない学校に行きつつも日本で就職することを念頭に置くならば切磋琢磨する仲間がおらず判断を見誤る恐れがある他MBA採用企業にも見向きしてもらい辛くなる、などそういった例がわかりやすいでしょう。



ランキングは広告収入源

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ランキングは、究極的には公開主体のためにあり、ページビューに伴う彼らの広告収入源のためにあるため、年単位でランキングの上下による悲喜こもごもといった話題が組み込まれているほど一層の収入増に繋がっていくといった実態があるが、MBAプログラムの価値に影響をもたらす要素(教授の採用、MBA採用企業との関係構築など)は非常に低速で変化していくものである、と本記事で指摘されています。

補足すると、国の経済状況はもう少し速い速度で変化し、それが給与水準という形でランキングに影響をもたらすことがありますが、これにより昨今ランキングで急浮上している学校がいくつかあります。

前述のメッセージとの整合性を模索するのであれば、ランキングが急浮上したからといってMBA採用企業との関係構築も相関する、例えば同校卒業生のグローバルなコンサルティングファームでの採用実績が比例する形で急拡大する、といったことはさほどない、といったところでしょうか。

これが主因かは断言できかねるところもありますが、今年1月に全世界MBAランキングを公表した直後、Financial Timesは、その算出基準の40%が給与関連に寄った現行のランキングの算出方法を見直すことを考えており、その具体的なアイデアを募集したいという旨の記事を出しました。

その後本件についてのアップデートは私が知る限り特になく、新型コロナウィルスの影響等もあり、関連する議論は停滞しているのかもしれませんが、ランキングと学校に関わる特定の実態の間に乖離があることを彼ら自身自覚してきている証拠かと思います。



最良のプログラムを探す方法

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前項の内容を踏まえると、ランキング自体については、過去1-2年のランキングを見るのではなく、5-10年程度のランキングを見る心持ちが良いのではないでしょうか。

また、本記事では、以下の項目に着目すべきと指摘されています。

・「自分の狙う企業と学校との間に、関係が存在するか」

・「卒業生のネットワークは、場所の要素も含めて、自分にとって魅力的なものか」

・「教室内外でのカリキュラムが、スキルと経験のギャップを埋めることに寄与し得るものか」

・「カルチャーという意味で、自分が学校にフィットするか」

これ以外にも考えるべき要素としては、以下を一例として、色々あろうかと思います。

・「職歴・国籍等の観点からどのような学生が集まっていて、それが自分にどんな意味を持つか」

・「どこに住みたいか(住む場所によってどんな違いが生まれるか)」

・「2年制プログラムと1年制MBAプログラムの利点と欠点を比較して、どちらが適しそうか」(*)

・「新型コロナウィルスの影響が学校の各側面に対してどのように出ているか」

*参考記事:



その他

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ここからは、本記事の内容を離れます。

この業界の脆さは、規制当局が存在しないことであり、それがランキングにも悪い意味で影響を与えている側面があると時折感じます。

かつて金融庁で国際金融規制改革の国際交渉に従事していて、格付規制等色々見てきたこともあり、規制の良し悪しには何かと敏感です 笑

例えば、最近一部の学校についてニュースになりましたが、新型コロナウィルスの影響が云々で今年はランキングから離脱する、といった特殊判断を学校側で出来てしまうことに違和感を感じたのは私だけではないでしょう。

また、卒業数年後に受け取る、ランキングに関係する給与水準その他の調査票は、記載内容について、いくらでも加工可能で、特に証憑を必要としないものです。

そもそも海外MBAランキングというのは、海外MBA界隈の人が勝手に盛り上がるための飯の種と言う側面が小さくなく、一般のビジネスパーソンの方々にとって直接強い関心の対象となるものではありません。

東京大学卒の人がその学歴を誇示しても、実際に仕事ができなかったら社会人としては殆ど価値を認めてもらえません。

海外MBAの学歴はこれまでの職歴も反映された結果であるから、大学(学部)の学歴とは意味合いが異なるという反論は確かに成り立ち得ますが、所詮、海外MBAの学位自体は、学歴の一構成要素に過ぎません。

逆に一般のビジネスパーソンの方々にとっては、偏差値で測られる日本の大学の序列の方が海外MBAのランキングよりも、俄然わかりやすいものです。

そもそも海外MBAを通じて誰に評価されたいのかという全く別の論点も存在します。

それはさておき上記のような海外MBAのランキングに対しての一般的な認知度を踏まえても、高いランキングの学校に入れること以上に本質的に重要なのは、その海外MBA期間を通じて得たものにより、海外MBAがなかったとした場合の自分を凌駕する価値を卒業後に世の中に提供できるかどうかだと思います。

したがって、表面的なランキングではなく、海外MBAの期間中に何を得ることができるかに着目し、それを卒業後に目に見える形で発揮することの方がはるかに大事ではないでしょうか。

とはいえ、世界ランキング20位以内に入っているかどうかで卒業直後のキャリア機会がそれなりに変わってくるというのは、これまでのnoteの記事でも何度か指摘しているところです。

そして、もう1つ大事なことは、各ランキングの算定方法を正確に理解し、それが自分自身に対しどんなインパクトを持つかについて考えることではないでしょうか。

例えば、米国で卒業後就職するわけでもないのに、あるいは自らが社費生で卒業後のキャリアチェンジを見込んでいるわけでもないのに、米国人によって大半が構成されている学校の給与水準を当てにすることに何の意味があるでしょうか。

自分のものさしで人生を歩むのか、他人のものさしで人生を歩むのか、という問いとも言えるかもしれませんね。

ランキングに関わる話題はもっと掘り下げることが可能ですが、今回はこのあたりで自重させて頂きます。



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