斉藤友秋 Tomoaki Saito

1978年埼玉生まれ。長野県上田市在住。ギター、歌唱、作詞、作曲、編曲、料理など。真田…

斉藤友秋 Tomoaki Saito

1978年埼玉生まれ。長野県上田市在住。ギター、歌唱、作詞、作曲、編曲、料理など。真田町のカレー「と」店主。https://tomoakisaito.bandcamp.com/

最近の記事

色々とお世話になっているご夫婦から引越し祝いに胡瓜の苗をいただいた。「バテシラズ」という品種だ。他の品種の胡瓜が終わってもバテずに実を付けるらしい。5枚目の本葉が出たところで指示通りポットから畑に植え替えた。 一緒にいただいたエンドウ豆(?)の苗も同じくらいに植え替えて、こちらはすくすく育っている。ところが「バテシラズ」の方がなかなか大きくならず、見に行く度に心配になる。自然と様子を見に行くのが日課となり、そこまで関心のなかった畑のことを頻繁に考えるようになった。 失敗の

    • わたしの氷の国

      去年の初め、映像作家の和久井幸一さんが真冬の真田町に僕の演奏を撮りに来てくれた。ここ数年恒例になっていたが、引越し先にまで足を運んでくれるとは嬉しい限りである。 年末に見つかった店舗物件の内装工事中で、まだざっと片付けた程度の、厨房になる予定の場所で撮影することになった。隣のコーヒー屋の老店主が所有しているフェンダーのビンテージアンプ(昔、ハワイアンのバンドでコントラバスを弾いていたらしい)を貸してもらえることになり、エレキギターでの弾き語りも組み込んだ。妻にも急遽オーボエ

      • ピンクのウクレレ

        友人の子が持ってきていたピンクのウクレレを渡されたので、ポロンと鳴らした。メジャーセブンのようなコードの響きがした。続けて手前の弦から一本ずつ鳴らすと、一番初めの弦だけがズレている。しかし、和音としては成立しているようだ。でも、無意識に直してしまった。そして無意識になにかコードを弾いた。なんてつまらないことをしてしまったんだろうと思った。なんとなく、つまらないフレーズをしばらく弾いた。

        • 命名

          子の名前は初めに音が決まった。誕生日に因んでいる。次に、平仮名か漢字か、後者ならどのような漢字を当てるか、妻と考えた。平仮名は、日本特有の文字だし、画数も少なく、尚且つ読み間違えられることもないだろうから色々と良いのではという結論に至り、その気になった。妻が平仮名で姓名判断をしてみると、全体的に良いのだが、人格だけが最大凶だった。大凶の先があるのを初めて知った。一番大事な部分が極端に欠損しているサイコパスにはなってほしくないので、結局漢字を当てることにした。

          糸を垂らす

          作曲したいと漠然と思うが、目的がないというか、気持ちが盛り上がるものを掴めないでいる。このまま掴むものがないまま生きていくのかと悲観したりもするが、次の日にはケロッと忘れていて、ギターを抱えたときに再びその気持ちが戻ってくる。作曲以外でギターを弾く分にはそんなに悩むことはなく、今は演奏の時なのかもしれない。空気が抜けないように、ギターを無理なく欠かさず弾き続けよう。でも、なにか作りたくてうずうずするのだ。来月ライブがある。

          京料理

          料理を作るときは、食べ終わるときの状態を想像する。始めのインパクトは強くなくて良い。じわじわと全貌が明らかになる。自ら少し探さないと見つからない要素。掴みかけると離れていくなにか。いつの間にか食べ終わっている。 音楽でも同じようなことをしている。 夢で食べたのかもと思うくらい、内容は全く覚えていないが、驚きだけは覚えている食事の体験があって、それは京都に住んでいたころに働いていた京料理の店で、忘年会かなにかで研修を兼ねて食べに行った老舗の京料理のコースだった。出だしは探さな

          生活

          店を始めてもうすぐ4ヶ月になる。開店当初の来客の勢いは落ち着き、少し時間に余裕が出てきた。先月は東京から、今月は大阪から友人が録音をしに真田町に来てくれた。どちらも刺激的で、元気をもらった。 自分は飽き性なので、ただ店だけやっていたらそのうち投げ出してしまうだろう。ひとつの道を極めたい気持ちはなく、色々なことに手を出して、それぞれが混ざり合って面白いものになれば良いなくらいに思っている。ただ、そのやり方で生活出来なければ話にならないので、そこはちゃんとしたい。秋には子供が生

          アントニオルイスピポ

          別府の喫茶店で3人でコーヒーを飲んでいた。冷房の鋭い冷気が夏を実感させる。Lしかないスピーカーからは、さっきからクラシックが流れている。曲が終わるとフランス語の解説が入る。フランスのラジオのクラシックチャンネルだろうか。 少しするとクラシックギターの独奏が流れ始めた。初めて聴く曲で、録音は古く、セゴビアの録音に似たような質感の作品があったが、彼の演奏ではなさそうだ。曲調はゆったりしていて和音が独特である。旋律は民謡のようだ。曲が終われば解説が入るはずなので、スピーカーから流

          アントニオルイスピポ

          夢の中で

          最近、仕事をしている夢ばかり見る。目が覚めると一仕事終えていて、それから仕事に行く。寝ている間も仕事をするのは疲れる。起きている間は追われているような実感はないが、無自覚に仕事に追われているのかも知れない。しかし、寝ている間に腕を磨けるのはありがたい。

          カレーのこと

          カレーを作るようになったのは、高円寺のコクテイル書房でランチ営業をすることになった時、店主が「カレーとラーメンは駅から遠くても人が来るから、どっちかやったら?」と提案したことがきっかけだった。設備のハードルが低そうだったので、カレーを選んだ。先ずは色々なカレーを食べに行って好みのものを探すことにした。 南インドカレーとスリランカカレーが気に入った。特に前者のミールス(定食みたいなもの)が面白いと思ったので、それを意識してカレーを開発することにした。カレーが2種類に副菜が2種

          多分

          昨日は休みだったが、作業をしに店に行って、空いた時間で前に書いた詩に旋律と伴奏を付けた。採譜する物も時間がなかったので、特徴をなんとか頭に残した。夕方、帰宅して直ぐに譜面に落とす。旋律と伴奏は覚えていたが、歌詞が思い出せない。歌詞を書き留めたスマホのメモを見ようとしたら、車に置き忘れてきたことに気付く。帰ったら直ぐ温泉に行く約束だったので、歌詞の言葉のイントネーションに合わせた旋律の採譜は諦めて、温泉に向かう。露天風呂に浸かりながら歌詞を思い出す。他に誰もいなかったので旋律を

          合奏

          合奏のための曲を数曲書いた。弾き語りを念頭に置いた曲に楽器を加えても大体馴染まない。 弾き語りに単旋律を加えることを前提にした。間奏部分に器楽的で大袈裟な旋律を入れた。少しして、単旋律の楽器じゃなくても良い気がしてきた。合奏を前提に書いているから、他の要素でも大丈夫だろう。弾き語りの曲に楽器を加えても問題ない気もしてきた。違和感があるのも面白いし、試してみたら全く違和感がないかもしれない。以前試したら、馴染まないことに気づいたが、その時の気分だったかもしれない。

          再会

          たまたま通りがかったレコード屋で数枚買った。特別欲しかったレコードでもないが、想像より安かったので、安易な気持ちで買った。 その数日前、店で使うオーディオ機器一式が届いた。頼んでいた友人が、旅行の道中に届けてくれたのだ。設置してみたところ、スピーカーはしっくりきたのだが、アンプは能力を持て余しそうだったので、家のものと交換することにした。 家のスピーカーに新しいアンプを繋げてみると、音の解像度の違いがはっきりと分かる。ぼんやりした印象のレコードもくっきり聴こえる。アンプで

          店を始めた。名前は「と」という。人から名前の由来を聞かれたら、なにか「と」なにか、andの意味だと答えている。実際そういった意味もあるが、元々は将棋の歩が成った「と金」からアイデアを得た。金(きん)に成るけど金じゃない、金目当てじゃないけど金も得られるといった意味が込められている。掴みどころのない感じが自分の性分に合っている。 自分が料理をし、妻が服や雑貨を売る。一応、カレーが看板メニューだ。カレーほど色んな顔のある食べ物はなく、これまた掴みどころがないので作っていて気楽だ

          ギター

          正月に実家に帰ると、父が突然「まわりにギターが欲しい人はいないか?」と聞いてきた。まさか長年愛用したクラシックギターを手放すのかと動揺したが、話には先があり、友人の別荘に置きっぱなしにしていたケースもない安物のクラシックギターが帰ってきたので、それを手放したいとのことだった。持ってきて弾いてみるとなかなか表情のある音がする。家にあってもしょうがないというので、我が家に連れて帰ることにした。 思いもよらず楽器が増えた。急に猫がやってきたみたいだ。ほったらかしにするのも可哀想な

          ノイズ

          小学生低学年の頃、兄と二人で両親の部屋にあるレコードを聴いて遊んでいた。ある日、テンションの上がった兄が突然アンプのボリュームを一気にマックスまで上げた。聴いたことのないノイズが頭の中を通り過ぎ、耳に痛みを感じ、黒い影のようなイメージが現れた瞬間、その場にぶっ倒れた。びっくりして泣き喚いたら、兄にゲンコツを食らって余計に泣いた記憶がある。聴いていたのは子門真人のホネホネロックの7インチだった。