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わたしの氷の国

去年の初め、映像作家の和久井幸一さんが真冬の真田町に僕の演奏を撮りに来てくれた。ここ数年恒例になっていたが、引越し先にまで足を運んでくれるとは嬉しい限りである。

年末に見つかった店舗物件の内装工事中で、まだざっと片付けた程度の、厨房になる予定の場所で撮影することになった。隣のコーヒー屋の老店主が所有しているフェンダーのビンテージアンプ(昔、ハワイアンのバンドでコントラバスを弾いていたらしい)を貸してもらえることになり、エレキギターでの弾き語りも組み込んだ。妻にも急遽オーボエで参加してもらう。背景には解体した古い業務用ショーケースの窓や、使い古されたステンレスの作業台などが雑多に置かれている。部屋には冷たい空気か充満している。

翌日は、雪がうっすら残っている自宅の庭で撮影することになった。とにかく一発で演奏を決めたい。寒さのせいか、思考のスピードが若干速く、余計なことを考える。

近所に住む、共通の友人は出かけていて会えなかった。温泉を巡り、帰り際に寄った酒屋で自家製の味噌を買う。彼はこれが甚く気に入ったようだ。

先日、氷の国(IceLand)の友人から連絡が来た。メールのやりとりの中で、真田町に引っ越したことを伝え、(わたしの氷の国)と加えた。


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