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精神疾病労働災害の申請から認定前後の実際

はじめに

 本稿は、前稿『このうつ病、会社のせいじゃない?と思ったら』の続編であり、具体的には、事業場における過重労働やパワーハラスメント等を起因とした精神疾患について労災申請から認定とその後の流れについて解説する。
 労災申請の手続きについては厚生労働省のウェブサイト等で豊富な説明があるが、情報の参照箇所がバラバラで実務者や専門家でない限り有益な情報を集めるのが困難な状況である。したがって実際の手続きを進めていく場合に、申請者目線に立った情報が実質的に乏しいと感じるため実際にあったケースの取材に基づいて起稿したものである。
 ブラック企業からは最終的に離れるべきであり、読者には、そのような兆候を感じた時点で本稿を参考に入念な準備を整えていただきたい。

労災申請の手続き

 一般的に労災申請とは、厚生労働省が提供している様式8号を記入して労働基準監督署に提出することである。提出する労働基準監督署は、申請者の住所地域の労働基準監督署ではなく、事業場を管轄する労働基準監督署である。東京都内の場合、東京労働局のウェブサイトの『労働基準監督署の管轄地域と所在地一覧』に示されている。例えば、千代田区に所在の事業場の場合は中央労働基準監督署の管轄である。支店や営業所等がまたがるような事業者の場合には事前に労働基準監督署に確認した方が良いだろう。
 様式8号は、休業(補償)等給付の申請書であり、記入方法は、厚生労働省が提供する『休業(補償)等給付 傷病(補償)等年金の請求手続』と題したリーフレットで説明されている。上記リーフレットでは事業主証明が必要となっているが、事業主にとっては自ら労災を認めたものとされること、及び後に申請者から損害賠償請求の証拠として利用されることを恐れて様々な理由をつけて証明を拒否してくるケースが多い。そこで、労基署の実務としては労働者の権利を擁護するため事業主証明が無くても申請は受理される。事業主証明が得られなかった場合は様式8号の欄外にその旨を記載すれば良い。証拠としてメール等の記録があれば添付するのが望ましい。記入項目の労働保険番号は事業場から教えてもらうか、それも拒否された場合は労基署が調べてくれるので空欄のままで良い。当然、担当医による証明は必要である。

労災申請の覚悟

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