見出し画像

底が見えないお酢の深み。

世間でSDGsが謳われて久しいもので、今やありとあらゆる企業がSDGsを標榜しているわけなのですが、私たちつけもの屋は、わざわざそんなことも言わずとも、ずっと持続可能性のある食に取り組んできております。

そう、お漬けものです。

余ったお野菜やお魚、お肉に至るまで色んなものを「生食から保存食に変える」。いわばお漬けものとは、日本のモッタイナイ精神が宿る、世界に誇るべきSDGs的な食べものと言えるのではないでしょうか!!

捨ててしまうような野菜の切れ端も、ぬか床に漬けるだけで、『ぬか漬け』の出来上がり。

季節の野菜だけでなく色んな食材を味わえるのが、ぬか漬けの良いところ

漬物の代表選手とも言える『梅干し』は塩漬け。青梅をしっかりと塩で漬けて、いい塩梅に仕上げます。

しょっぱいものから、甘酸っぱいものまで色んな味が楽しめるのが梅干しの魅力

その中で、我らがらっきょうはいわゆる『酢漬け』と呼ばれる漬けものです。

生らっきょうをお酢で漬ける。それだけでご家庭で漬けたものでも一般的には1か月~1年は持ちます。さらに防腐効果や強い抗酸性のある酢を使ったらっきょう漬けは、冷蔵保存で約3年、冷凍保存なら約5年くらい長期間保存が可能になるという、実に優秀な保存食でもあるのです。

漬物としても、トップクラスに日持ちする「酢漬け」。
今回はこの最強な抗菌作用を持った「酢」について少し語りたいと思います。

そういえば、酢っていったいなんでしょう?

一般にお酢と呼ばれているものは、糖質を含む食材を原料として、それをアルコール発酵させた後、酢酸発酵させた液体調味料です。

と書くと、なんだか難しい表現になるけど、簡単に言えば糖分を持つ原料をもとにいったん「酒」にして、それらを「酢酸菌」で発酵させたもの。

つまりお酢は、もともとお酒なんですね。
「酢」の漢字をみても、「酉(さけ)」で「乍(つくる・作る)」と書きます。

お酢の種類は原料別にたくさんあって、穀物酢、米酢、米黒酢、りんご酢など。それぞれに味や香りも異なります。

ひと口にお酢と言っても種類は多岐にわたります  

米や小麦などの穀物を原料としてつくられるお酢を「穀物酢」といって、アジア地域でよく作られています。私たち日本人に一番馴染みがあるのは、米食中心の日本ならでは「米酢」。
その名の通りお米で作られているので、お寿司などに使われ、私たちに最も馴染み深~いお酢です。

よく健康食品で耳にするのは「黒酢」でしょうか。

これはただの色の種類ではなくて、米酢の一種で玄米が原料となっているもの。壺の中でじっくり発酵されるので、壺酢とも呼ばれています。
コクや風味が豊かで人気があり、色が黒いのは長期間熟成させて発酵することで独特の色がついています。とまりのつけもののボリュームパックでは、この色のついた黒酢が使われています。

熟成された黒酢はきれいな琥珀色。味もまろやかな味わいで、香り高いお酢です


続いて、うちの甘酢漬けの一部商品でも使用しているのが「りんご酢」。

りんご果汁を使ったお酢で、アメリカではポピュラーなお酢として知られています。りんごの香り漂うフルーティーなお酢。風味がまろやかで、野菜との相性が抜群です。

リンゴ酢を使用することですっきりと仕上がっています


ちょっと余談になりますが、世界には日本の米酢と同じように、その土地の風土や気候にあった農作物を原料とする伝統的なお酢がたくさんあります。

ワインの産地ではワインビネガー、りんごが原料のシードルからアップルビネガー。麦が原料のモルトビネガー(麦芽酢)は、ビールがよく飲まれるイギリスやドイツなど。

ちょっと乱暴かもしれませんが、お酒の種類と同じ数だけ酢があるともいえるかもしれません。

なにせ、酢の起源はお酒と一緒でとても古く、紀元前5000年頃のバビロニアでつくられたと言われます。
この時代、人々は干しぶどうやナツメヤシなどからお酒をつくっていたという記録があり、同じ頃にお酢も誕生したと言われています。ちなみにらっきょうは紀元前3世紀以前から栽培されていたとも。

ところで日本で酢が調味料として使われるようになったのは、奈良時代。中国から酒を造る技術とともに米酢の醸造技術が伝えられたのがはじまりだとか。『万葉集』にも「酢」という言葉が登場する和歌があるんですって!!お酢が貴族の生活に使われていたんですね。

お酢が庶民にもに広まったのは江戸時代になってから。酒粕を原料にした粕酢ができて、酒粕が原料なので安価なこともあって各地で醸造されるようになったようです。

歴史の古いお酢屋さんって1700年代創業とかありますが、本当に日本の歴史に脈々と流れてきたことがわかります。江戸時代にお酢の製法が全国各地に広まり、それとともにお酢を使った料理がたくさん生まれました。代表的な料理は「お寿司」。押しずしや握りずしに使われ、庶民の口にも入るようになったんですね。

ちなみに、うちのらっきょう商品に使われる「らっきょう酢」は甘酢の一種。

らっきょう酢は、らっきょうや野菜をそのまま漬け込んでも味が整うように、独自に配合されているので、残り野菜など使ってピクルスなどがつくれます。うちでもこんな一品をサクッと作ります。

余った野菜を入れるだけで素敵な逸品ができますよね


らっきょう酢については、実は語りたいことがたくさんあるので、また別の機会にゆっくりと。

さてさて。冒頭にお伝えした通り、漬けものは保存食です。でも、野菜の旬の味覚を楽しむには、その季節の野菜を自分で漬けるのが一番。

6月頃のらっきょうはもちろん、秋には新しょうが、冬の寒い時期はかぶらで千枚漬もいいですね。これからの時期は新玉ねぎやタケノコといった春野菜もぴったりです。自家製らっきょうや漬けもの、自家製ピクルスは格別ですよ。

生らっきょうを漬けるのは、初夏までのおたのしみにお待ちください。

もちろん、とまりのつけものでも、色んなお酢でらっきょうを漬けています。普段は甘酢らっきょうだけという方も、是非色んなお酢の世界を試してみて下さいね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?