季節の手しごと、梅しごと。
「梅しごと」とは、梅が旬を迎える季節に生梅で自家製の梅干しや梅酒、梅シロップなどを作る作業のことをいいます。
梅が収穫できるのは、ちょうど「梅雨」の季節にあたる6月頃。1年のなかでも、みずみずしく香りのよい青梅が店頭に並び始めるこの時期にしか梅しごとができません。
かつて梅仕事は、日本各地で見られる季節行事のひとつでした。今でも、梅しごとだけは毎年の季節行事にしている人も多いみたいで、この時期のスーパーには梅と一緒に氷砂糖や大きな瓶が並んでいますよね。
7月頃になると梅干しをザルに広げて天日干しするのですが、この光景に覚えがある方も多いのではないでしょうか。
私たちの暮らしに、長く寄り添ってきた梅しごと。当然、梅の歴史はもっともっと、長いです。
梅干しの歴史
梅干しの原型ともいえる梅の塩漬けが「梅干し」として初めて書物に出てくるのは、平安時代と言われています。900年代の村上天皇が疫病にかかった時に、梅干しと昆布を入れたお茶を飲んで回復した!という記録もあります。元旦に縁起物として飲まれる「大福茶」もここが起源だそう。
ちなみにこの年が申年だったので、申年の梅干しは特別なものとして珍重されるようになりました。これは我々つけもの業界、梅干し業界では今でも重要な年です。
話は戻りますが、その後、梅干しは鎌倉時代に武家の食膳に広がり、出陣の際には縁起をかついで必ず梅干しを食べたといいます。保存性が高く、殺菌効果のある梅干とおにぎりを幕府が兵士に配ったことが広まったきっかけのようです。そういえば、承久の乱って歴史の教科書で出てきましたよね。
戦国時代になると梅の効用がますます認められ、兵糧食としても採用されたとか。軽くてかさばらず、日もちもよいので、大変重宝されました。
江戸時代には加工品としての梅干しが売られるようになったり、梅干しの紫蘇漬けや甘露煮などが生まれました。町で梅干し売りが声をあげながら町を歩く姿は、当時の風物詩となっていたようです。
明治から大正にかけて起こった日清・日露戦争や第一次世界大戦では、梅干しが重要な兵糧食として採用され、増加する梅の需要に合わせて、和歌山県をはじめ、全国各地に梅林が広がりました。時代劇なんかでも食事に梅干しを見かけますよね。
ちなみに「7月30日」は梅干しの日です。
梅干は健康に良く、「梅干しを食べると難が去る」と昔から言われてきたことから「なん(7)がさ(3)る(0)」の語呂合わせからきています。
日本人の歴史とともにある、梅干しです。
さて、そんな梅ですが、梅といっても、収穫する時期や熟成具合によって「青梅」、「完熟梅」、「超完熟梅」の3つに分けられます。
それぞれ色や固さ、風味が異なるので、活用方法に合わせて使いわける必要がありますのでご紹介させていただきます。
青梅
6月上旬に出回る緑色の梅です。実がカリカリと固くフレッシュな風味なので、梅酒や梅シロップを爽やかな風味に仕上げたいときに。しょうゆ漬けやピクルス、甘露煮などにも活用することができます。
梅干しを作るには固すぎるので、もう少し熟したものが出回るのを待つか、おうちでゆっくり熟すのを待ちましょう。
ちなみに私は、この熟す間にただよう香りがたまらないので、わざと青梅を買ってきて、キッチンのかごに入れておいて熟させてます。
完熟梅
ちょうど今、6月中旬に出回る、少し黄色く色づいた梅です。
実がやわらかく甘い香りなので、梅酒や梅シロップ、梅ジャムなどにするのがおすすめです。黄色くなってしまうとピクルスや甘露煮には、実がやわらかいので不向きです。
超完熟梅
6月中旬〜下旬に出回る、黄色く熟した梅です。おいしい梅干しを漬けるには超完熟梅が最適です。芳醇な香りを活かして梅ジャムにするのもおすすめですよ。
梅の産地和歌山のメーカーさんでは、毎日梅をひっくり返しての作業が行われています。
ちょっと余談です。長―い歴史の中、愛されてきた梅ですが、「令和」の元号にも、実は梅が大きく関係しています。
「令和」の由来となったのは「万葉集」にある歌人・大伴旅人の
この歌の二文字を取り「令和」が生まれました。
歌の意味は、初春の素晴らしい月にして、風も春の陽気のように穏やかに、梅は鏡の前の美女が装う白粉のように開き、蘭は身を飾った香のように薫っている。
咲き誇る梅が告げる春の訪れのような、明るく期待に満ちた歌から誕生した「令和」には、一人ひとりの日本人が、明日への希望を胸に、それぞれの花を見事に咲かせることができる。そういう日本でありたいという願いが込められています。
梅しごと、おすすめです。
初夏を感じる爽やかなグリーンの青梅。ひと粒ずつ拭いてヘタを取り……。梅しごとは、ちょっと手間はかかりますが、甘い梅の香りに包まれて心がほっこりする時間です。
梅しごとが終わっても、少しずつ瓶の中で変化していくのを日々ながめて、シロップや梅酒のできあがりを待つ時間も、自家製ならではの楽しみですね。簡単なのでお子さんと一緒にもできちゃうのも嬉しいです。
それに、この時期だけ手間をかければ、1年中梅を楽しめるのも梅しごとのいいところ。
梅干し、梅酒、梅ジュース、梅シロップ、梅エキス、甘露煮、梅ジャム・・・などなど。
想像するだけで、梅の香りがただよってくるようです。それと、もちろん梅干しとして毎日の食卓に並べるのも忘れずに。とまりのつけものでも、いろいろと梅干しを揃えておりますよ。ぜひお好みの梅干しを選んでみてください。(5つ選べますので、梅干しだけでも、それ以外でも組み合わせ自由です)
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