[暮らしっ句]麦 秋2[俳句鑑賞]
麦秋や 人呼ぶ声の一度きり 木下野生
こちらはファンタジーというよりオカルト的。
「声の一度きり」というのは、返事をしなかったけれども、しばらくは耳をそば立てていたということでしょう。しかし、次はなかった。
軽く云えばアテが外れた。でも、大袈裟に言えば、瞬間「闇」が覗いた。
「ご飯よぉ!」 お母さんが二度も三度も大声を張り上げる。うるさいなあ、わかってるわよ…… でも、これが一度きりなら……。
要介護者がまた大事なことを思い出したかのように呼びつける。日に何度