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トーキョー・アルテ・ポップ スペシャルトーク&ライブ(1)東京で交わる明確な線

2023年10月5日(木)にイタリア文化会館(東京・九段下)で行われた関連イベント「スペシャルトーク&ライブ」の記録です。
登壇者:江口寿史 ルカ・ティエリ 楠見清(本展キュレーター) 
スペシャルゲスト:曽我部恵一

文字起こし&編集:Yasuko Tieri ※省略・加筆・修正した箇所があります

楠見:みなさんこんばんは。ようこそいらっしゃいました。江口寿史さん!

江口:こんばんは。たくさん集まってますね。

楠見:そしてルカ・ティエリさん!

ティエリ:こんばんは。

楠見:私はこの展覧会のキュレーターで、司会を務めさせていただきます、楠見です。よろしくお願いいたします。今日はお二人とこの展覧会について話をするというのをすごく楽しみにしてきました。いろいろとお聞きしたいことがありますが、まず、この展覧会のタイトル「TOKYO ARTE POP トーキョー・アルテ・ポップ」の説明をさせていただきます。言葉としては「ARTE POP」というのはイタリア語で「ポップアート」のことですが、お二人の展覧会を企画するときに「TOKYO ARTE POP トーキョー・アルテ・ポップ」というあえてイタリア語で、東京なんだけど日本語じゃなくてイタリア語にしようと考えました。私がこの展覧会について書いた解説文がお手元にある方も多いと思いますが、そこでこう定義をしているんです。

トーキョー・アルテ・ポップは何かの芸術運動のような名称でありながら、特定の時代の芸術様式やムーヴメントを指すものではなく、ここでは二人のアーティストの間に流れる共感や共鳴といった感情や情感とそこから醸し出される雰囲気やムードを表している。

 要は、言葉にしがたいものを提示してみたいと思ったんです。ですが、今日はトークショーということでそれをあえて言葉にしなければいけない。ということで、お二人のアーティストのお力を借りたいと思っています。トークの前半はお二人の絵について、それぞれ影響を受けてきたコミックや、その他のカルチャーについてお話しいただけたらと思います。
 それから、この展覧会は江口さんが、「線」をテーマにしたいという風におっしゃられていて、その話をしながらルカさんからこの言葉をいただいたんです。
Linea chiara(リネア・キアラ)

Photo:Watanabe Testuya

 これはイタリア語ですけれども。フランスのBD(ベデ ※Bande Dessinée バンド・デシネ)など、フランス語ではリーニュ・クレールといって「明確な線」という意味です。19世紀のエッチングとかハッチングしたような線描画ではなくて、もっとくっきりとした、はっきりとした絵でコミックを描くという、印刷技術と関係があるんでしょうけれども、ヨーロッパのマンガの伝統、スタイルとしてあるわけです。お二人の絵に共通するものがこの「明確な線」(リネア・キアラ)であると思うんですね。で、せっかくなので今日はイタリア語をひとつ、この「Linea chiara(リネア・キアラ)」、覚えて帰ってください。
 絵の中のリネア・キアラと同時に、実は僕にはもう一つ明確な線が見えたんです。お二人が今ここ東京で2023年に交差している線。これまで日本で、あるいはイタリアでそれぞれ絵を描いてきて、ここ東京で出会い交差しているという。このお二人の絵のお仕事を通じた部分の交わりというのをこの展覧会で表現できたらいいなと思って。
 それで会場をご覧になられた方はイメージできると思うのですが、壁にかけられた作品とは別に、中央に展示台を置いて、そこにお二人が影響を受けてきた本をたくさん並べていただきました。でもあの展示台を見ただけでは置いてある本が一体何であるか、ひとつひとつ説明をしていないので、お分かりにならなかったこともあると思います。なので今日はそのことについてお話しいただけたらと思います。

 ということで二人の明確な線(リネア・キアラ)を辿っていきましょう。

資料展示:江口寿史が影響を受けたもの
資料展示:ルカ・ティエリが影響を受けたもの

資料展示

東京で交わる2人の線
「トーキョー・アルテ・ポップ」
さまざまな先人たちからの影響や同時代のクリエーターたちとの呼応によって、それぞれに作風を確立させた2人の仕事から浮かび上がるものは「トーキョー・アルテ・ポップ」とでもいうべき共感覚だ。江口寿史とルカ・ティエリが近年制作した書物、CD、Tシャツ、グッズから、東京の現在という時代の雰囲気が立ち上る。

文・楠見清
江口寿史 近年の仕事より
ルカ・ティエリ 近年の仕事より


トーキョー・アルテ・ポップ スペシャルトーク&ライブ(2)へ続く。

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