TOKYO町工場HUB 古川 拓

TOKYO町工場HUBを2017年に創業。大学を卒業後、銀行員を15年間勤めたのち、2…

TOKYO町工場HUB 古川 拓

TOKYO町工場HUBを2017年に創業。大学を卒業後、銀行員を15年間勤めたのち、2004年から独立し、アントレプレナーの道を歩む。現在、東京の100社以上の町工場と新時代の「ものづくりエコシステム」構築に注力中。 ホームページ:https://tokyo-fabhub.com

最近の記事

現代「モノづくり」考(5):課題

現代「モノづくり」の課題現代の「モノづくり」を考える最終回は、対処すべき実現について語りたい。 これまで語ってきたように、現代の「モノづくり」は製造業の枠内に止まらない。製造を超えて、多種多様な主体が参加する「価値創造」のプロセスとなっている。新しいシステム、今までにない体験、画期的な方法論などを生み出し、人々をエンパワーし、諸々の課題を解決する総合的な取り組みである。 しかし、その動きは端緒についたばかりである。特に日本社会への定着はこれからである。定着へ向けて課題とな

    • 現代「モノづくり」考(4):創造力

      「創造力」とは何か前回は、「モノづくり」の3つの原動力について説明した。「創造力」、「技術力」、「応用力」の3つである。それぞれは独立した原動力であり、しかも一体となって現代の「モノづくり」を実現するものである。 中でも日本社会に足りないと感じるのは「創造力」である。「創造力」こそが、新たな価値創造の契機を生み出し、新たな「モノづくり」の機会と市場を広げていく可能性を持つ。「創造力」を育てることは、喫緊の課題である。 創造力とは何か。 日本の辞書で引くと「新しいものをつ

      • 現代「モノづくり」考(3):3つの原動力

        「モノづくり」は「希望」と繋がっている人間にとって、「モノづくり」は常に「希望」と結びついていた。日々の暮らしを便利にするため、家族の生活を豊かにするため、企業の成長のため、国や地域の発展のため、社会のインフラを支えるため、子供達により良い未来を残すため。そうした「希望」をもって私たちは、太古の昔よりものづくりに勤しんできた。 現代の「モノづくり」は、現代の「希望」に繋がるものでなくてはいけない。希望は、困難や苦痛と表裏一体である。私たちが希望を語る時、それは私たちの困難や

        • 現代「モノづくり」 考 (2):価値創造

          「モノづくり」の歴史的転換前回の最後に、 と書いた。このことについて、もう少し考えてみたい。 「モノづくり」を「物をつくること」ではなく「価値創造」をプロデュースする総合的な取り組みと定義するのは、現代社会においてデザインが「物」としての製品意匠を超えて、社会や人々の暮らしのあり方に関わるものとして認識されてきたことと同じ足場に立つ。現代においては「物」だけを取り上げて価値を測ることができない。 例えば、自動車は電動化へ向けて世界が動いている。ガソリン車そのものに性能上

        現代「モノづくり」考(5):課題

          現代「モノづくり」 考 (1):主体の転換

          現代の「モノづくり」を考える現代における「モノづくり」とは何かについて、ずっと考えている。人間は太古からモノを作ってきたが、その意味や態様は、時代とともに変化してきた。では、21世紀に入った今、モノを作るとはどういう意味を持つのか。それは社会の中で、どういう役割を果たすのか。「モノづくり」を担う主体や、それを動かす原動力は、どう変化してきて、現代に繋がってきているのか。 これからの5回に渡って、現代における「モノづくり」について語りたい。「モノづくり」を考えることで、わた

          現代「モノづくり」 考 (1):主体の転換

          小を選択する時代:The Rise of Small(2)

          「小」を選択するということ「個」の時代は、「小」を選択できる時代である。「組織」の時代では規模の大きさで序列が決まり、「小」であることは弱さの象徴であった。しかし、「個」の時代にあっては、規模の大小は戦略的な選択肢に過ぎない。「大」ではなく、戦略的に「小」を選択することも有効な方法になりうるのである。 「個」の時代とは、「個」の立場で考える時代である。 例えば、1000人の事業規模で10億円の利益を上げる企業と、5人で500万円を稼ぐ企業とは、「個」の立場からは対等なので

          小を選択する時代:The Rise of Small(2)

          小を選択する時代/The Rise of Small (1)

          人類が経験したことのない新しい時代異次元の世界 「個」の時代を特徴づけるものとして、生きるためのスペックが飛躍的に増強されていることがある。それらは技術革新に支えられ、社会的・経済的なインフラによって成り立っている。機能面で言えば、100年前のどんな大企業が持つキャパシティより大きな力を現代の個人は持っているに違いない。ある計算によれば、スマホと同じ計算能力を40年前に手にするには数十億円が必要だったともいう。人類の歴史の中で、私たちは今、異次元の中に生きている。 まず、

          小を選択する時代/The Rise of Small (1)

          東京の町工場に何が起きているのか

          消えゆく東京のものづくりTOKYO町工場HUBの事業を理解いただくためには、東京の町工場に何が起きているのかを伝える必要がある。それは過去40年間に渡って東京の製造業を揺るがしてきた地殻変動である。その変化の力は圧倒的で嵐のようにあらゆる物を破壊しながら、しかも静かに、何もなかったように進んできた。 あれほど沢山いた雀がある日見えなくなったように、静かに町工場は消えていった。東京の町工場の数は40年前に比べて10分の1まで減った。10万社近くあった東京の工場は、2020年の

          東京の町工場に何が起きているのか

          今、起きている変化を考える

          TOKYO町工場HUBとは何かTOKYO町工場HUBとは何かを説明するのは少し難しい。「◯◯屋」であると表現がしにくいのだ。それはやっていることが複雑であるということではない。時代認識の共有が前提になるからである。「組織」の時代の「間尺」では測ることができない。存在の仕方そのものが、「個」の時代に特有のものだという理解がないと、全くつかみどころがない。 まず、株式会社という法人ではあるものの、組織を持たない。たくさんの職人や技術者、クリエイター達と仕事をしているが、組織的な

          今、起きている変化を考える

          TOKYOでモノをつくる

          はじめに この5年間、東京、隅田川の東側をずっと眺めてきた。かつて職人や技術者で賑わい、日本のものづくりを支えた工房や工場が集積する街や通り。この場を拠点に、5年前、TOKYO町工場HUBという事業を始めた。 「個」の時代の到来を予感していた。小さい存在が大きな力を持ち得る可能性について考えていた。小さくあることが戦うための有力な選択肢となる時代。世界は、すでにそのようになっていたし、その兆候はあちこちで観察された。 しかし、その具体的な仕組みや実践に必要な諸要素や要素

          TOKYOでモノをつくる