とくり

好きなことを好きなように書いています。 厚底は履いてません。

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ミッドナイト流星群

ネオンの眩しさで目がチカチカする 夜の渋谷駅は怪獣のようにその大きな口をぽっかりと空け乗客を飲み込んでは消化し、すれ違う人は皆行く先を急ぐようにせかせかと足を動かして誰も顔を上げようともしない ブランドの鞄も、お揃いのアクセサリーも、誕生日に貰った合鍵も 全部、全部、置いてきた あるのは充電の切れたスマホと170円しか入ってない財布 あ、さっきコンビニでコーヒー買ったから残り70円 「私ってスタバにすら行けないんだ…」 つぶやいてみたら無性に虚しくて悲しくて、じ

    • バースデーカード

      ■わたしのすきなひと わたしのすきなひと その名も直帰さん このnoteを書くにあたって、どれくらい直帰さんのことを知ってるんだろうって考えてみた 喋り方と笑い方がかわいいこと ギターが上手でビートルズが好きなこと 少し鼻にかかる歌声が心地いいこと 本は積んで置くタイプなこと ナム丈の靴下を履いていること ミンユンギという人をこよなく愛していること 私が持ちうる語彙では表しきれないほど たくさんの魅力があるすてきな人 そんな人のお話をしたいと思います ■起:ミンユ

      • この世に天使がいた話

        大福さんは天使みたいです ほわほわした雲を美味しそうだと思う気持ちのような それでいて自分が天使だと気づいてなさそうなところがすごく天使みたいです 大福さん 大福さんはどうしてそんなに愛らしいのですか 初めて大福さんの声を聴いたとき 自然と『天使みたいだ』って思いました おだやかでまろっとしてるのに 綺麗に聞き取れる凛とした声 ツイキャスでおしゃべりする大福さんの こんばんは、を聴くだけで どこかほっとする私がいます 間違いなく人の声なのに その領域の外にあるみ

        • 7つの物語

          きみは月 暗闇の中でひとり迷う時、そっと静かに佇んで 確かに足元を照らし導いてくれる人 きみは森 広く豊かな心と、限りない慈悲で包み込み 安心して帰れる家になってくれる人 きみは星 輝きのひとつひとつが全部きみで 点と点を繋いで大きな地図を描いてくれる人 きみは太陽 その明るく、強く、まぶしい笑顔で 大丈夫だよって優しく背中を押してくれる人 きみは雨 誰かが涙を流す時、必ず隣にしゃがみこみ 温かく穏やかな雨で涙を隠し寄り添ってくれる人 きみは泉 限りなく透明な、純度

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        ミッドナイト流星群

          雨が降ったら、君と

          シトシトと降り続く雨のなか、思い出した古傷が少しだけ痛む 雨は嫌い 濡れて冷える肩が重く濁った空が人を不快にさせることはあっても、愉快な気持ちにさせることはないような気がする 現にさっき駅を出たところで傘がぶつかった誰かには「チッ」っと舌打ちをされた 子どもの頃は背負ったランドセルがびしょびしょになっても傘すらささず笑いながら帰ってたのに いつからかそれは『悪いこと』なのだという認識になって、雨に濡れるのが怖くなった だから雨が嫌い でも同時にどこかで安心してる私もい

          雨が降ったら、君と

          ハルノヒ

          開けた窓から散り残った桜の花びらが風にのってひらひらと舞い込み あたたかく心地よい空気はまぶたを重くする 目を閉じればいつも浮かんでくる君のこと それからあの日のこと 4年前のあの日、君は大学進学と同時に上京するため東京行きのバスに乗った 別れの日だというのにぼくも君もいつもと変わらない雰囲気で 君は笑って『ばいばい』とだけ手を振った 明日からはもう簡単には会えないんだ そう思うけれど不思議と寂しさはなくて、ポケットに手を突っ込んだまま「いってらっしゃい」とだけ声

          ハルノヒ

          自給自足の脳内

          食べるのが好きな君のことだから寒い時期にはコンビニで絶対に焼き芋を買うし、熱いって分かってるのに思いきり齧りついて『あっふぁ!ぁふい!』って言いながら咳き込むのを隣で笑いながら見ていたい 『ヤ〜!笑うなよ〜!』ってちょっと涙目で怒ってるのはとりあえず聞いてないふりしようかな どんな反応するんだろう いつものノリで肩を叩くかな、それとも拗ねてそっぽを向いちゃう? どちらにせよ愛しくて、やっぱり笑うのは止められないんだろうな 君と出会うのは大学の映像研究サークルがいいし、好き

          自給自足の脳内

          横顔と夢

          『今日は楽しかったね』 そう言って笑う君を一秒たりとも忘れないように脳裏に焼き付けながら「そうだね」って物分りよく答えるp.m.7:30 好きな人との最初で最後のデートはいつもと変わらない雰囲気のまま、もうすぐ終わりを迎えようとしている 君には彼女がいて、私には彼氏がいて 運命なんてそんな他力本願信じてないけれど もし出会った時から結ばれないことが決まっていたのだとしたらこれはそういう運命なのかもしれない 『もうすぐパレードだって』 「パレード楽しみなんだよね〜!ど

          横顔と夢

          冬の花火

          「寒い〜!」『え、寒すぎ意味わかんない』 そんな風に文句を言いながら、何の面白いこともないのにお腹を抱えるほど笑いながら帰ったのはいつだっただろう あの日帰りに寄ったコンビニで、どこにあったのか半額になった花火を見つけてしまった君が なにか企むみたいににこにこしながらそれを買う姿がとても愛おしかった 「なんで寒いのに花火なの〜!」と怒ったふりをする私に『ごめんごめん』そう笑いながら花火と自分の使っていたカイロを渡してくれる君の横顔は 冷えた空気に晒されて、どこか、切ない

          冬の花火

          かわいいの妖怪

          きみはかわいい 怒っている時も 泣いている時も ばかみたいに笑っている時も きみはかわいい 毎朝早起きをして くるくると弾む黒髪を 無理矢理アイロンで伸ばすのが とてもかわいい すれ違った人も 毎日会う僕でさえ もしかしたら気づかないのに ちょっとでもかわいく見られたくて 無駄な努力をする きみはかわいい 殴られて痣をつくっても 必死に隠して 見えないようにして 誤魔化そうとする きみはかわいい これだけ見つめているのに そのことにちっとも気づかず のうのうと

          かわいいの妖怪

          ファンレター

          先生様 こんにちは。 はじめてファンレターというものを書きます。 生まれてはじめてです。 読みにくいとは思いますが、どうぞご容赦ください。 あなたの作品はないないづくしです。 共感できないし、感動もない。 もちろん驚きや悲しみも、読了したことの達成感や爽快感さえない。 共感できたためしがない。 だからぼくはいつも、離れたところから見ているのです。 あなたの作品に登場する人間たちを。 離れたところから、人形劇でも見るように、或いはもっと冷めた気持ちで眺めているのです。

          ファンレター

          ワスレナの朝に

          目が覚めて、ベッドの隣を確認する 不自然な空白 冷たいシーツ 触れたところからジワジワと広がっていく行き場のない悲しさが君のいない事実を教える 独りになってどれくらい経ったのだろう 未だぼんやりしている頭を起こすため洗面所に向かう 顔を洗って、焦げたトーストとつぶれた目玉焼きを食べ、スーツに着替えて家を出る なにも変わらない 君がいなくなっても僕の生活は変わったりしなかった 決まった時間に会社へ行き、決まった時間に帰宅する 日々等しく夜は訪れるし、夜を越せ

          ワスレナの朝に

          不埒な熱帯魚

          殴った自分に愉悦を感じている 涙を流す私に悦びを感じている そうすることでしか、力でねじふせることでしか快感を得られない むしゃくしゃする度に、つらいことがやってくる度に、そうやって殴る それから決まってちいさく「ごめん。」と呟いて、強く、強く、抱きしめる 壊れやすいものに触れるように、そっと撫でる 独占欲と愛は同じ味がするとでも言うかのように 可哀想な人だと思ったらひどく愛おしく感じるようになってしまった たぶん、きっと、今日私は殺される いままでにない程

          不埒な熱帯魚

          紅差し指

          ぼくは知っている 母がときどき寂しそうに笑うのを ぼくは知っている 母が飾らない人だということを ぼくは知っている 土曜日だけは少しお洒落をして買い物にでかけることを ぼくは知っている その横顔が美しく艶やかなことを ぼくは知っている 本当はなにをしているのかを ぼくは知っている 母の薬指と頬が朱色に染まっていることを

          紅差し指

          東京フィルター

          はじめての東京は甘い甘い香りがした この街のどこかに好きな人がいて、同じ空気を吸っている いまこの瞬間にも、どこかで出会ってしまうのではないかという焦りと緊張と、そして少しの高揚感 すべてのものがキラキラと眩しかった 幼かった私の小さな小さな大冒険 p.m. 11:45 ひさしぶりの彼からのLINEで、そんな昔のことを思い出した 上京してきた私を迎えてくれたのは、あの眩しいくらいに輝いていた街ではなかった 好きだったあの人も、会ってみればなんてことはなくて

          東京フィルター

          拝啓、さよなら夜の君

          「サボテンが似合いそうですね」 それが初めての会話だった 正直意味不明すぎる 突如現れて「サボテンが似合いそう」などと抜かすような男など怪しい以外のなにものでもない 現に彼女は僕の発言に対してひどく不快そうな表情を浮かべて 「は?」 とだけつぶやいた 例えばどうだろう 歩道橋の手すりに手をかけて下を覗き込んでいる人がいたとしたら、見なかったフリをして素通りできるだろうか 結論から言えばできなかった  

          拝啓、さよなら夜の君