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2023年11月の記事一覧

ライトノベル『死亡遊戯で飯を食う。』の感想

ライトノベル『死亡遊戯で飯を食う。』の感想

※『死亡遊戯で飯を食う。』1巻のネタバレがあるので注意!

元々タイトルすら聞いたことがなかったが『このライトノベルがすごい 2024』の総合ランキングで2位だったということで知った『死亡遊戯で飯を食う。』という作品を読んでみた。今回はその感想を書いていこうと思う。

まずは本書の内容について話すと、この作品は端的に言えばデスゲームである。ただし普通のデスゲームものとは少し違う斬新な設定もある。デ

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倉橋由美子『パルタイ』の感想

倉橋由美子『パルタイ』の感想

倉橋由美子の『パルタイ』を含む短編集がブラックフライデーで割引だったので買って読んでみた。今回はその感想を書いていこうと思う。

この作品では直接具体的にどこの組織かは明言されないが「パルタイ(党)」での活動の様子と、そこに入党するために履歴書を書くという一幕が描かれる。

手法的にはカフカの『変身』っぽい感じはするけど『変身』ほど抽象的ではない感じ。パルタイという若干間接的な言葉を使ってはいるも

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『三体』の作者の短編を読んで感じたバカSFの良さについて

『三体』の作者の短編を読んで感じたバカSFの良さについて

※劉慈欣『円』に収録されている短編『郷村教師』のネタバレがあるので注意

『三体』自体は途中自体で読むのを断念してしまったが、短編なら読めるだろうということで『円』という『三体』作者の短編集を読んでみた。今回はその感想を書いていこうと思う。

感想を書くと言っても全ての短編について言及するわけではなく、今回は短編集の中でもひときわ印象に残った『郷村教師』という作品にフォーカスして感想を書こうと思う

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ライトノベル『週に一度クラスメイトを買う話』1巻の感想

ライトノベル『週に一度クラスメイトを買う話』1巻の感想

「kindle unlimited」で何か良い本はないかと探していたら『週に一度クラスメイトを買う話』というキャッチーなタイトルの本を見つけた。読んでみたらあまりにもディープな作風で面白かったので今回はその感想を書いていこうと思う。

本作はタイトルにもある通り定期的にクラスメイトに5000円を払って時間を買うという話になっている。途中から3年生に進級しクラスが別れクラスメイトではなくなるのでタイ

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卯月コウにおける「別棟」とドストエフスキーの「地下室」は似ているのかもしれない

卯月コウにおける「別棟」とドストエフスキーの「地下室」は似ているのかもしれない

ドストエフスキーの『地下室の手記』という小説を読んだ。

この作品は本心では仲間と混じりたいのに冷たくしてしまったり喧嘩をしてしまったりするという面倒くささが凝縮されたメンヘラのおじさんが主人公の作品となっている。面倒くささや他人に対する他罰的かつ嫉妬的な目線がリアルで、おじさんに不快感を抱くレベルの作品だけど、若干なりとも「自分にもこういう要素あるかもなぁ」と共感ポイントもあるので少なからず刺さ

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