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#282 第十九回は、久々の二人から…

今日も坪内逍遥の『当世書生気質』を読んでいきたいと思います。

今日から第十九回を読んでいきたいと思います。『当世書生気質』は第二十回で終わるので、いよいよ終わりが見えてきました。第十九回のタイトルは、「全篇総て二十回脚色[シクミ]もやうやうに 塾部屋へ倉瀬の急報」です。

静寂[ヒッソリ]とせし塾部屋の、廊下伝ひに入来[イリク]る少年、けふ出来たての洋服姿。とある一間[マ]の障子を開きて、内を覗[ノゾ]きて会釈をなし、
少年「小町田君、どうだネ、御病気は。」机によりかかりて、書を読ゐたりし小町田は、ふりかへりて、
小「オヤ宮賀君か、這入[ハイリ]たまへ。もう全然癒[スッカリイイ]のさ。」

小町田くんも、宮賀くんも、久しぶりの登場ですね!w

宮「そりゃアいいネ。」トいひつつ窮屈さうに片膝たてて坐りながら、
宮「君の脳[ブレイン]が平癒[ヨクナ]つたと聞いちゃア、此間[コナイダ]の復讐[カタキウチ]をしなくちゃアならん。」
小「オヤ復讐[フクシュウ]とは何[ナ]んだ。」
宮「ソラ、干渉論の続きさ。」
小「ヘン。もうあの議論は廃止[ヨシ]たまへ。コントの糟粕[ソウハク]を荷[カツ]ぎだしたッて画餅[ダメ]だヨ。」
宮「イイヤ今日は決してまけない。此間[コナイダ]は君が病気だと思ふから、負けておいてやつたんだ。……それはさうと、昨日任那から手紙が着[ツイ]たが、君と連名だから持つて来た。相替[アイカワ]らず中々interesting[インテレスチング](おもしろい)だヨ。マア読んでみたまへ。」トいひつつかくし[ポツケツト]をかきさぐりて、西洋紙のletter[レター](てがみ)を取りいだす。

当時は、ズボンのポケットを「かくし」と言っていたんですね。

小「此間寄送[ヨコ]してから間がないやうだに、どうも筆まめな男だネエ。今度は何を書いてよこしたかネ。先達[センダツ]ては大変な慷慨[コウガイ]だッけが。」
宮「さうさ、此間のletter[レター]には、頻[シキリ]にOxford[オックスホード](大学の名。)の整頓してるのを称[ホ]めて、日本の学校の悪口をいつたッけが、今度は少しその反動の気味と見えて、多少悪口がまざつてるやうだ。始[ハジメ]の処[トコ]は廃止[ヨシ]て、マアこの辺から読んでみたまへ。」

イギリスで学ぶといったら、維新以前は、ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジでしたが、維新以後は、ケンブリッジやオックスフォードが中心となります。任那くん、無事に着いて学問できてるようで良かったですね!

小「ヘヘイ。イヤ書いた書いた。相変らず長いぞ長いぞ。」ト。(いひつつ手紙をよむとしるべし。)

ということで、長い手紙が始まりそうなので…w

また明日、近代でお会いしましょう!


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