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#018 魯迅先生、ありがとう!

魯迅の授業「中国小説の歴史的変遷」も、今日でいよいよ最後です!

魯迅は、清代(1616-1912)の小説に関して授業を始めます。

清代の小説の種類およびその変化は、明代より比較的多いのですが、時間の関係で、ここでは四派に分けて大体の流れをお話しするにとどめさせていただきます。四派というのは、

一、擬古派 二、諷刺派 三、人情派 四、侠義派

ということになります。

「擬古」というのは、六朝志怪を模倣したもの、あるいは唐代伝奇を模倣したものです。魯迅は、その特徴として、1.描写が詳細で委曲をつくし、筆致が変幻自在で練達していること。2.妖怪の物語でありながら、よく人情をそなえ、世情に通じて、おのずから親しみを与え、恐怖を感じさせないことが特徴だと言っています。その代表として、魯迅は『聊斎志異』を挙げています。

「諷刺」は、その名の通り、小説の中に風刺や誹謗をこめたものです。晋や唐にもすでにあったことですが、明代でとりわけ多くなり、清代では逆に少なくなるようです。魯迅は、諷刺小説の生命は主題をむき出しにせず、言葉を腕曲にするところにあり、言葉が誇張に過ぎると、文学的価値は失われてしまう、と言っています。諷刺小説の末流はいずれもこの点を顧みず、そのため、以後絶えてしまうことになります。代表として、魯迅は『儒林外史』を挙げています。

「人情」に関して魯迅は、その代表として『紅楼夢』を取り上げ、しかも、絶賛しています!

『紅楼夢』の価値という点になりますと、中国の小説の中では、まことに得がたいものであります。その主要な価値はあえて虚飾を捨て、リアルな描写を行なっている点にあります。それまでの小説が善人を描けばすべてによく、悪人を描けばすべてにわるいのとは、大きなちがいです。そのため描かれている人物は、みな真実の人聞になっています。いずれにせよ、『紅楼夢』が出現してより、伝統的な思想と表現方法はすべて打破されました。その文章の優美と纏綿は主要なことではありません。

「侠義」は、もともと茶館で語られていた説書で、のちに筆の立つ文人がこれを書写し、世間に読まれるようになったものです。この小説は、たいてい義侠の士が盗賊を駆除し、反乱を平定することを述べ、その中にはすべてを宰領する名臣や高官が存在するものです。魯迅は、代表作として『三侠五義』を取り上げます。

というところで、それぞれの作品の内容に関しては、触れないでおくことにします!w

魯迅は、授業の最後をこのように締めくくります。

私のお話しします『中国小説の歴史的変遷』は、今日これにて終りとさせていただきます。この二週間あわただしく大略のみをお話ししました。もとより漏れた点もたくさんあります。加えて私の知識はかくも乏しく、話はかくもつたなく、天気はかくも暑いにもかかわらず、多くの方々が最後まで私の話を聴いてくださいました。たいへん申訳なくまたありがたく存ずるしだいであります。

ということで…

魯迅先生、貴重な授業ありがとうございました!

では、96年前の中国から現在に戻り、再び、135年前の日本に戻ることにしましょう!

では、また明日、近代でお会いしましょう!


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