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意志の弱い我々人間よ、踏ん張れ。タブレットPCの中毒性・依存性に蝕まれてしまった上席の末路とは。『デタラメだもの』

中毒性・依存性というものは実に恐ろしいもので、一度ハマッてしまうとなかなか抜け出せなくなってしまうものだ。華々しい芸能界で活躍するタレントさんたちが、やっちゃいけない薬で退場を命じられ、復帰しても尚、同罪で退場を繰り返しているのを見ると、中毒性・依存性の恐ろしさを感じずにはいられない。

やっちゃいけない薬の場合、法律というものがその使用を咎めてくれるが、そういったストッパーが存在しない世界の場合、中毒性・依存性のあるものは留まることを知らず、永遠に我々を蝕む。例えば、無料で視聴できる動画サイトだ。

実際のところ、動画サイトもテレビも無料で視聴できるのが基本。が、お金の流れ的には無料じゃないんだぜ。動画や番組の合間に放映されるコマーシャルを見て、「おっ、新型のカラフルな軽自動車が発売されてるやん! 買いに行こ買いに行こ、早速今週末に買いに行こ!」といった具合に、多くの人はコマーシャルを見たその週末に軽自動車を買いに行く。

企業はコマーシャルを放映した週末に、視聴者が自社の軽自動車を買ってくれるであろうことを目論み、コマーシャルの放映に多額のお金を払っている。視聴者は軽自動車を購入するためにお金を支払う。無料で動画サイトやテレビを視聴しているものの、軽自動車の購入費としてお金を支払い、企業はそこでお金を回収し利益を得ている。結論から言うと、軽自動車の購入費で動画サイトやテレビを観ているという仕組みだ。

そんな説明はさておき、視聴者の感覚としては無料で動画やテレビを観ている。下品な言い方をするなら、タダで動画やテレビを観ている。この、タダという感覚が、中毒性に拍車をかける。仮に、一回視聴するごとに100円を支払わなければならない制約があれば、金銭面での事情により、心理的にどこかでストップがかかるだろう。しかしだ、タダという感覚を武器に、中毒性は牙を剥く。

そう。今の時代、無料の動画サイトの餌食になってしまう恐れが常にある。一度視聴を始めると、キリがない。寝る前にちょっと視聴しようと思い動画を再生すると、気づけば外は明るくなり朝。寝不足で目の下はクマで黒ずみ、目は真っ赤に充血している。

奴らは、関連動画やおすすめ動画といった体裁で、我々に寄り添うように迫ってくる。どうやら昨今では、視聴者各人の趣味趣向に合わせ、「どうせお前みたいなもんは、この手の動画が好きなんだろう?」と、精度の高い機械が顕在意識・潜在意識を見透かし、おすすめを提示してくる。

昔、こんなことを思ったことはないだろうか。催眠術師が登場して、タレントたちに催眠術をかける番組。目の前で次々に催眠術にかけられるタレントたち。ある程度、場が盛り上がれば、催眠術師が催眠術を解除する。タレントたちはそれをきっかけに素の自分に戻る。

そんな折り、仮に催眠術師が催眠術を解除しなかったとしたら、このタレントさんたちは、一生催眠術にかかったまんまなの? だとしたら、悲惨な人生を歩むことになるよね。可愛そう。催眠術師が催眠術を解除する前に、急に心臓麻痺で倒れちゃったりして、救急病院に搬送されちゃったとしたら、解除できる人がいなくなってしまうから、催眠術にかけられたタレントさんたちも病院に同行し、催眠術師の体調の回復を待って、催眠術の解除を依頼しなければならないよね。なんて危険な番組なんだろう。って。

関連動画やおすすめ動画提示の類は、解除のない催眠術に近しいと思っている。解除してくれる催眠術師不在のまま、催眠術にかけられ続ける状態。解除でき得る存在は、ただひとつ。自分の意志だけという危険な状態だ。

考えてもみて欲しい。一日のうちに動画サイト内に登場する新たな動画は、軽く24時間分を超えることだろう。ということはだ、人間という生き物は一日中新着動画を観続けたところで、全ての動画視聴を制覇することは不可能という計算になる。一日24時間ずっと無料の動画を観ていたとしても、永遠にネタが不足することはなく、気づけば寿命を終えてしまうということになるわけだ。

そこでふと考えた。我々人間は、無料の動画サイトに出会うまでは、どのように過ごしていたのか、と。

思えば、無料で視聴できる娯楽がテレビしかなかった頃、夜中以降、番組のプログラムが終わると、放送試験電波のカラーバーというカラフルな棒が幾本かで構成された画面が延々と流れ続けた。それを観ると強制的に一日の終わりを感じさせられた。その時間帯を乗り越えた猛者は、早朝から放映される、固定カメラが映し出す都会の道路の映像をぼんやりと眺め続けたりもした。

観るものがない状況で人は、観られるものなら何でもいい、という心理状態になっていたのだと思う。そこにも僅かではあるが、中毒性は存在していたのだろう。

ケーブルテレビを契約した暁には、視聴できるチャンネル数が飛躍的に増えたことで、「我、チャンネルの覇者なり」と言わんばかり、リモコンを捏ね繰り回した。やや、今の動画サイト中毒に近い症状は出ていたのかもしれない。が、まだ、観たいものがない場合は、観ろと言われれば観るけどね程度の番組を我慢して観続けていたものだ。そこが動画サイトとは決定的に違う。

じゃあ、民放テレビもケーブルテレビもない場合はどうしていたかと言うと、読み終えた新聞や週刊誌の類を読んだり、既に読んだ漫画をもう一度読み返したりして時間を過ごしていたんだと思う。何も読むものがないときには、複雑怪奇極まりない携帯電話の説明書を読んだりしていた記憶もある。

中毒症状に飢えていた我々を完全に満たしてくれたのが、無料の動画サイトというわけだ。人類はこれを手に入れたことによって、無敵になった。一日24時間且つ寿命が尽きるまでの間、退屈することなく常に新鮮な気持ちで触れられる娯楽を手に入れたわけだからだ。中毒性・依存性の強い動画サイトに加え、意志の弱い人間がタッグを組めば、制覇できない世界なんてないだろう。

さぁ、ここからが本題だ。いつもの如く、前置きがやたらめったら長い。読者の大半は離脱してしまっていることだろう。まぁ、仕方がない。この際、細かいことは言うまい。

会社の上席、所謂、会社の中でも「偉いサン」と呼ばれる人間が、タブレットPCの中毒にヤラれてしまったのだ。会社が彼にその機械(オモチャ)を与えてからと言うもの、彼は一日中、タブレットPCを眺めている。来る日も来る日も、延々とタブレットPCを眺めている。従業員に画面を見られぬよう、角度に配慮しながらタブレットPCを構え、眺めているため、彼が何を観ているのか、何をやっているのか知る人間は一人もいない。しかし、一日中、何もせず、ずっとタブレットPCを眺めているのは事実だ。

無料動画の牙に食い殺されてしまったのか、動画同様、次々と新たなものがリリースされる無料のゲームという毒に侵されてしまったのか、とにかく彼は、会社からタブレットPCを支給されてからというもの、仕事への情熱を失い、外出先から帰社しても即座にタブレットPC。昼飯に出る前もタブレットPC。昼飯から帰ってきてもすぐにタブレットPC。仕事熱心で有名だった上席だけに、中毒性・依存性の恐ろしさを思い知らされた。

とある機会に、彼のタブレットPCを覗いてやろうと画策したことがある。時間帯は夜だったため、「彼の背後の窓ガラスにモニタが反射してるんじゃね?」と考えた。しかし、彼の防衛本能は凄まじく、自然を装って盗み見しようとしても、体制を変えディフェンスしてくる。

ただ、彼が見つめる画面の反射映像を、一瞬だけ拝むことができた。そこには、戦を行い領土を奪い合ったりする類の、戦国ゲームが映し出されていたように思う。どうやら彼は、タブレットPCの中毒性に侵された結果、現実世界で数字を追うのではなく、バーチャルの世界で得られる領土を追い始めたようだ。どこかに彼の催眠術を解除してくれる催眠術師はいないだろうか。

デタラメだもの。

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