![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70911088/rectangle_large_type_2_9157793814dcc197907749b66a438472.jpg?width=800)
猫カフェ、これはもうキャバクラである
きのう、猫カフェを訪れた。
場所は池袋。きのうは東京芸術劇場にて、『だからビリーは東京で』という演劇の18:30~の回を観る予定があった。しかし、私が池袋駅で電車をおりたのは17:20ごろ。ちょっと早めに着いてしまった。
うーむ、喫茶店でも行って、コーヒー飲むか。
グーグルマップで、辺りを検索する。
すると地図上に、「猫cafe」なる文字を見つけた。むむ。猫カフェですか……。以前から興味はあった。なにせ私は、実家で猫を飼っている。なかなか彼に会えないフラストレーションを、ずっと募らせていた。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70928038/picture_pc_f1fb493fbac4de58a275fd391cb306b8.png?width=800)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70928008/picture_pc_3122c08df7d7d87078e592dd00868690.jpg?width=800)
よし。いっちょ猫カフェ、行ってみるか。そんな気持ちが沸き起こる。グーグルマップによれば、そのカフェはすぐ近くにあるらしい。辺りを見回すと、看板を見つけた。ビルの3階で、ガラス張りになっている。
ちょっと緊張しながら、階段をあがっていく。店のドアを開けると、大きなガラスで仕切られた向こうに、大量の猫を発見した。
ん猫ォォォォォォォ!
ブチあがる感情をなんとか抑え、スリッパに履き替える。店員が近寄ってきて、店のルールをいろいろと説明してくれた。
店員はかなりの猫好きらしく、「店内の猫チャンが…」と言うたび、目尻にシワをつくっていた。
ひととおり説明を受け、ガラスで仕切られた猫ゾーンに入室する。ちなみに料金は、10分で220円だった。それプラス、ドリンクバー代が385円。まあ、猫好きのまえでは、金の話など意味を成さないのである。なぜならわれわれ猫好きにとって、「猫と同じ空間にいさせていただける」ということは、どんな体験にも勝る至福のひとときだからだ。
いざ、夢のような部屋へ
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70927705/picture_pc_2b17e798e90f771fcdaedc6cee4f58ab.jpg?width=800)
受付との仕切り扉を抜けると、まず飛び込んでくるのがこの光景。おわかりだろうか。ツリーの上の方に、数匹の猫が寝転んでいる。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70927709/picture_pc_b19d03ff4f3410642fe54ee3ec7728b6.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70927703/picture_pc_99416215a78f610e4054b7930c075513.jpg?width=800)
ツリーの土台部分に寝そべる猫。これはなんという種類の猫だろうか。外国のアニメに登場するような顔をしている。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70927724/picture_pc_6ce97347a78b49c4c631d5d23adfe4cf.jpg?width=800)
私はまず、端っこのソファに陣取ることにした。猫という生き物は、なれなれしく近寄る人間をあまり好いてはくれない。我慢づよく、彼らのほうから歩み寄ってきてもらうのを、じっと待つのが最善策なのだ。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70927704/picture_pc_36e7f7f1c65ff06e7308f5453891099a.jpg?width=800)
すると早速、茶色の猫が。よし……。こっちに来い!ヒザの上に乗ってくれ!
願いを込めて凝視するが、この猫はすぐにどこかへ行ってしまった。
それから5分待っても、猫が私のもとに寄ってくる気配はない。実家で猫を飼っている身としては忸怩たる思いであったが、仕方がない。飛び道具を使うことにした。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70927732/picture_pc_d23b3294cb7e93cc2c77d93e5f1ed5b5.jpg?width=800)
そう、カリカリである。
これは入店時、LINEで猫カフェを友達登録するともらえる、ちょっとしたアイテムだ。これを使って、猫をおびき寄せようと思った。
まあ、こんなものは最初の「セット料金」に含まれているので、キャバクラでいえば、「いいちこのボトルセット」に該当する安物なのだろう。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70927733/picture_pc_4a66f4eb4a1898993fc0621b60e8162f.jpg?width=800)
カリカリの袋を開けると、1匹の猫が私のそばへ来てくれた。かわいすぎる。至福の時間を1秒でも長引かせるべく、ひと粒ひと粒、手の上に載せて差しだしていく。
が、幸福は長く続かないものだ。カリカリが終わったとたん、この猫はプイとどこかへ去ってしまった。まったく、猫とはゲンキンな生き物である。そんな部分も愛おしいので、全然かまわないのだが。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70927707/picture_pc_37007d8a23dad380bff42ae9bd1d608f.jpg?width=800)
はあ、待っていても仕方ないか……。ソファから立ち上がり、自分から猫に近づいていく。しかしどの猫も、タワーの上から降りてくれる気配はない。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70927718/picture_pc_a7b4e4e5bac8d350b19511ed9b117683.jpg?width=800)
「チッ、うっせーな」
スノーボード元日本代表・国母選手のようなささやきが聞こえる猫を見つけた。触ったら怒られそうなので、眺めるだけにする。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70927744/picture_pc_a5288fe47ba50a61a1dea9de2edcc0ee.jpg?width=800)
あきらかに格下を見る目つきの猫。気品がありすぎて怖かったので、彼にも触れないことにする。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70927716/picture_pc_3374fb1a4f591ec8ad8c52f62badb33b.jpg?width=800)
ああ、待って! 背中を撫でさせて! 子猫にすら無視され続け、だんだん悲しくなってきた。ここまで10数分、まだいちども猫に触っていない。このままでは……マズイ。どうにかしなければ。そんなことを考えていたら、なにやら私の視界に「アイテム」らしきものが飛び込んできた。
背に腹はかえられぬ、か……?
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70927713/picture_pc_9ac02c54fb4da630060ccee5889b7229.jpg?width=800)
それがこちらだ。なんだか、おわかりだろうか。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70927715/picture_pc_e07cd6ab6887587307cca1d638b98a05.jpg?width=800)
そう、猫耳カチューシャである。
さすがにぶっきらぼうな猫といえど、これを着ければ相手にしてくれるんじゃないだろうか…。
しかし店員は、女子大生っぽい3人組。もちろんガラスの向こうから、こちらの猫ゾーンは見えている。ひとりで来店した183cmのスキンヘッドが猫耳カチューシャを着け出したら、笑われないだろうか……。不安が脳裏をよぎる。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70927710/picture_pc_676daa3c850ea0905360363855a7d2a9.jpg?width=800)
猫耳さえ着ければ、あのシッポだって触らせてもらえるかも。しかし私は、それを着けることはしなかった。
なぜなら私が猫耳を着けたところで、猫にとってメリットがないからである。
私の猫耳など、キャバクラのカラオケで、唾を飛ばしながら熱唱するおじさんのようなものだ。嬢たちにとって「いい客」とは、金を落としてくれる客だけ。この店でいえば、「おやつを与えてくれる客」のみが、猫たちにとっての太客になれる。うーむ。どうすればいいんだ。私が頭を抱えていると、大学生のカップルらしき客が来店した。
ピンドン入ります!
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70927726/picture_pc_e2c9bc46fc74f2310176b755f15e464f.jpg?width=800)
大学生カップルは仲むつまじく、猫を眺めたり、微笑みかけたりしている。しかし彼らも、猫に触ることはできないようだ。やっぱり猫とは、生粋のキャバクラ嬢である。「おやつ」という名の「売上」を与えてくれない客には、見向きもしない。
なるほど……。これが猫カフェか。私はいささかガッカリした気分で、ソファ席の背もたれに身体をあずけた。と、いきなりカップルの男が、ノリノリな声で女にこう言った。
「おやつアイスいっとく!?」
私は身を起こし、彼の声に耳を傾けた。するとなにやら、追加で500円支払うことで、猫たちの大好きな「おやつアイス」なるものをゲットできるらしい。なにそれ、超ほしいと、私は思った。
カップルを観察する。しばらくすると男が受付へ行き、店員になにかを告げ、謎のカクテルグラスを手に戻って来た。
その様子を見た部屋中の猫たちが、男に近寄っていく。
男はカクテルグラスに並々と盛られた「おやつアイス」なる飛び道具で、猫たちを好き放題している。背中を撫で、頭を撫で、アゴを撫でる。終いには、私が目をつけていた茶トラの猫を、抱っこしやがったのだ。
くそっ…。向こうがドン・ペリニヨン・ロゼなら、こっちはヴーヴ・クリコだ!
私はソファ席から立ち上がり、店員のもとへ走った。場合によっては、シャンパンタワーの注文も辞さない構えだった。
「あの……」
女子大生っぽい店員が振り向く。
「あの……、猫がいちばん寄って来るおやつください!」
私は恥ずかしげもなく、そう言い放った。
女子大生っぽい店員が、「あーあ、イタ客来ちゃったよ」という顔で、仲間と目くばせする。
「どれが寄って来るっていうのはないんですけど、3種類の中から選べます」
私はいちばん高額なおやつを買うつもりでいた。しかし、3種類のおやつはすべて500円らしい。クソッ…。これじゃ、猫の売上に貢献できない!
拳を握りしめたが、どうしようもない。とりあえず1種類のおやつを選んだ。それがこちらである。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70927722/picture_pc_b477a3d016adbe6732309af442f0d744.jpg?width=800)
そう、「猫まんま」だ。
3種類のなかで名前がいちばんかわいかったので、これを選んだ。
「ではお席に持っていくので、お待ちくださーい」
店員がイタ客を見る目で言う。お気に入りの嬢が他の客に取られているのに嫉妬し、あわててシャンパンを入れる客などダサくて当然だ。しかし、猫と触れあいたい気持ちは強まるばかり。私はドキドキしながら、席で店員を待った。
2~3分で店員がやって来る。
「じゃあエプロン着けてください」
なにやらビニール製のエプロンを手渡された。これってもしかして、このエプロンの上におやつを載せていいってコト!? そしたら猫が、膝の上に乗ってくれるじゃん……。私はあまりのうれしさに身震いした。そして店員にうながされるまま、店内中央のキャットタワーの前に行く。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70927735/picture_pc_782df840424cf7b25659f1fd3f36b86a.jpg?width=800)
するとそこには、ワクワク顔の猫たちがすでにスタンバっていた。店員から「猫まんま」を手渡される。
![](https://assets.st-note.com/img/1643385084544-WX9tNjdWzz.jpg?width=800)
これが猫まんま。なんだか、お洒落な入れ物に入っている。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70927736/picture_pc_96a59fc90d1de864478f664698cecd40.jpg?width=800)
キャットタワーの前には、「猫まんま」待ちの猫たちが。これで私もやっと、太客だと認定してもらえたのだろうか。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70927738/picture_pc_4136087660307df86cad62f3a14a0f1a.jpg?width=800)
イヤァァァァァ!見てる!私の猫まんまを猫が見てる!
うれしくて膝から崩れ落ちそうだった。
![](https://assets.st-note.com/img/1643385220673-JJ7IYfp0pF.jpg?width=800)
そして私は無事、猫に触ることができた。それも、店内にいるほぼすべての猫だ。やっぱり飛び道具があれば、猫などチョロイものである。
今後は来店前に、池袋の西武前で待ち合わせて、ディオールの化粧品でも買ってやることにしよう。その後、ちょっと高い寿司屋で握りを食べさせ、事前に買っておいたロクシタンのボディクリームでもプレゼントすることにする。
はあ、やれやれ。今後は池袋に行く機会が、増えそうである。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?