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自分のnoteをGoogle広告に出稿したら、東京23区をジャックした気分になった

 人はなにかをつくると、他人にその成果物を見せたくなるのだと思う。

 たとえば私の亡き祖父。彼は俳句を趣味として生きていた。近所の友達とサークルをつくって互いに句を詠みあったり、晩年には数百の句を書き留めた本を自費出版した。何部刷ったのかは知らないが、おそらく知り合い全員に配っていたのではないだろうか。とうぜん孫の私にも手渡された。当時はそのよさがわからなかったが、いまでは彼の句を読むのが面白かったりもする。

 また、もうひとりの祖父も似たようなものだ。現在83歳の彼は、若いころから数年前まで建築士として働いていた。彼は去年あたりから、過去に自分が手掛けた建造物の写真を撮りに行き、それを分厚い本にまとめる作業を行っている。1見開きごとに写真を並べ、建設中や完成当時の建物、現在の姿、そして図面や解説などを細かくレイアウトしているのだ。「我が建築人生雑誌」みたいな感じである。これがなかなか興味深く、その雑誌をパラパラとめくっていたところ、私が勤めていた会社の真横のビルが、彼が設計した建物だったということもあった。それを伝えると普段は無口な九州男児が顔を赤らめてよろこび、「じゃあこのビルは……」などと歴代の建物を7時間かけて説明されたのだが、それは別の話なので割愛する。

 要するに私が言いたいのは、多くの人間はたぶん、「せっかくつくったもの」に関して、他人に見てもらわずにはいられないのではないだろうか、という話だ。私ももちろんそうである。noteに投稿する文章がまさにそれ。まあ、これに関してはライターという職業柄、ある種のポートフォリオ機能(果たしていない)があるのだが、それは抜きにしても、私はこの「せっかく書いたnote」があまり読んでもらえないとテンションが下がるのである。まずはこちらを見てほしい。

note公式とTwitterが頼り

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 これは私が書いた記事のうち、すべての「ビュー」の合計と、上位3つがわかる表である。

 1番上の記事は、1週間前にnote公式「今日の注目記事」に入った。そのためダントツで数が多い。2番目の記事はTwitterでフォロワー500~1000人くらいの方々がリツイートしてくれたので、これくらいの数字となっている。YouTubeの100万回再生などに比べれば無いに等しい閲覧数だが、上位2つはまだマシだ。自分的に、開始1か月にしては満足できる数字である。問題はそれ以降の記事。3番目以降は、もちろん上位2つ以下の数字なので、このままだとnoteやTwitterで「たまたま」「偶然」「運がよく」誰かにピックアップしてもらわない限り、私の記事は書いても書いても250回程度しか読んでもらうことができない。ポートフォリオとしても弱小媒体になってしまう。これではやはり悲しいし、仕事にも支障が出てくる。もうちょっと多くの人に見てもらう方法はないだろうか…。なんとか改善したいと思った。

謎のクーポン

 ぼんやりと上記のようなことを考えていたところ、私のスマホに不思議な通知が表示された。以下の画像である。

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 最初にこれが表示されたとき、「なにこれ、よくある詐欺?」と私は画面をにらんだ。なんだかデザインが安っぽく、いかにもフィッシング詐欺チックである。しかし興味本位でクリックしてみた。すると本当に、Googleが運営している広告サービスだったのだ。

ビジネスを拡大しましょう

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 サービスの説明を読み込んでいく。システムとしては、私が指定したワードで検索をかけた利用者の画面に対し、自分の広告が出せるサービスだということがわかった。ふむ、なかなか面白そうである。私はまっさきにnoteのことを思い浮かべた。なるほど…じゃあ自分のnoteを広告として出稿すれば、たくさんの人に読んでもらうことが可能なのではないだろうか。気分がアガッた。それに、7500円ぶんのクーポンがついてくるのだ。これを使わない手はないと思った。

アプリをゲット

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 早速行動に移す。アプリをインストールし、広告の内容を決めていく。タイトルやキャプションを書き込み、バナーのサンプル画面が作成された。

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 うーむ、はたしてこんな広告をクリックする人がいるのだろうか…。怪しい匂いのする広告である。だが何事もやってみないとわからない。続いて広告が表示される条件のキーワードを決めていく。

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 自分のnoteを読んでくれそうなのは一体誰なのか。考えてみたときに浮かんだのが、上記キーワードに引っかかるような人々だった。ブログや小説、エッセイなどが好きで、文章を読むことに抵抗がない人。また、同業者のライター。文庫本の新刊などに興味のある人。おジャ魔女。これらのキーワードを軸に、まず広告を運用してみようと思った。

表示する範囲

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 その次は、広告を表示する範囲の指定を求められた。ここでも私は考えを巡らせた。私のnoteは、どの地域に住んでいる人が興味を持つものなのだろう。

 別に「東京の街さんぽ」みたいな記事を書いているわけじゃないから、沖縄や北海道まで範囲を広げてもよかったのだが、なんとなく普段接する距離感の人たちに読んでもらいたいと思い、自宅のある渋谷区から半径24kmを指定した。

 これ以上範囲を広げると、実家のある横浜が含まれてしまう。親族に読まれるのはちょっと照れくさいので、川崎あたりでブレーキをかけておいた。北は越谷、東は船橋、西は府中、南は川崎まで。これで東京23区がすっぽりと収まる範囲である。ちょうどいいくらいかな、と思った。

予算はいかに

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 最後に広告運用の予算を求められた。しかし相場感がまったくわからない。とりあえず1か月1万円程度にしておいた。別に本気で運用するわけではない。ただ単に広告を出稿して、東京23区じゅうの誰のスマホにも自分の広告が表示されるという「可能性」にかけたいだけなのだ。クーポンを使ってひと月5000円くらいの出費で収まる額にしてみた。これで1日あたり、約400円の計算となる。

数日使ってみて

 で、5日前にはじめた広告運用の結果が以下である。

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広告が表示された回数☝

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広告がクリックされた回数☝

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ユーザーの属性☝

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かかった費用☝

 この結果を見たとき、私は軽くずっこけそうになった。表示回数は1日あたり約1000回と悪くないが、クリック数は約2回。たったの2回である。これではまったく意味がないのでは、不安になった。

だけどもだけど、

 悔しいのでいろいろと調べてみる。すると、そもそも広告が効果的に運用されるまでに、2~3週間程度の期間が必要ということがわかった。なんでもGoogleが複雑なアルゴリズムを駆使するため、ある程度データがそろった段階で一気に表示回数がハネ上がるのだという。ただし、個人のウェブページなどでも最低1日1万円くらいはつぎ込まなければならず、私の400円などはハナからフザけた予算だということも勉強した。それもそのはずだと思った。私が以前働いていた雑誌でも、広告の定価は1ページ100万円くらいだった。渋谷のスクランブル交差点、TSUTAYA上のビジョンはひと月で約300万円だという。多くの人の目に留まるためには、それなりに予算がないといけないのだと改めて実感した。

宝クジみたいなもの

 しかしそうは言っても、この広告の効果は、「実際に何回クリックされたのか」だけでは計り知れない。すなわち可能性である。広告を運用している限り、東京23区内にいる全ての人間のスマホに、私の広告が表示されてもおかしくない状況となるのだ。極端な例を挙げれば、叶姉妹のスマホに私の広告が出現することもあるだろう。そうなったらラッキーパンチである。たとえば、

「ねえ美香さん、この方のnoteっていうのがおかしくて笑っちゃうのよ」

と、姉・恭子氏が妹・美香氏に私のnoteをオススメする可能性だってある。そのほか、フォロワー数の多いインフルエンサーが超絶ヒマな時間に私の広告を見つけ、記事を読んで拡散してくれる未来も0%とは言い切れない。これは精神衛生上かなり有意義である。なぜならYouTubeでもnoteでもブログでも、投稿してからイチバンしんどいのは「誰かの目に留まる可能性が感じられない」という状態のときだ。平たく言えば、「スベってる」という心境になる。これはなかなか赤面もので、気合を入れてつくればつくるほど、反応が薄かったときのむなしさが増幅される。精神的に大分こたえるのだ。

サンキューGoogle

 だがこの広告のおかげで、その状態がすこしだけ和らいだ。なにせ私はいま、東京23区すべてのスマホに出現してもおかしくない広告を運用しているのだから。しかも1日約400円で。鬼のコスパである。電車で目の前に立っている人も、工事現場のそばで休憩中の作業員も、国会中に机の下でスマホをいじる議員も、私のnoteにアクセスしている可能性があるのだ。すばらしい思い込みである。今後、いくら記事がスベり続けても、Google広告があれば、全然へっちゃらなのである。

……それは嘘かも。。。


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